終結プログレス 作:カモカモ
何もかもが完璧に気が合う人間というのは、相当に得難いものであって、久佐持丹月と斎賀百の場合は、どちらかといえば合わない部類だ。
ただ、だからといって、全てが全く合わないということでもなく、その数少ない共通点は妙に噛み合ってしまい、故に今に至ってしまう。
じゃあ、それは何か、といえば、もちろん生活の中で細々した部分でも、合致する部分はあるのだが、とりわけもっとも大きいのはとあるVRMMOに関するものだろう。
つまるところ。
「シャンフロって、こういうイベントやるんだ……」
「だが、私もあまり詳しくないが、これだけのゲームなのだから、グッズがでることは不思議ではないだろう」
「それはそうなんだけど……」
百の言うことには一理あるが、丹月は何となくシャンフロの運営はこういうリアルの方でこういうショップを出したりしないと思っていた。
さすがというべきか、かなりの賑わいで、とあるデパートのワンフロアとまではいかないが、催事場スペースを貸しきっての開催となっている。
「普通、こういうのって、何個か別のイベントと同時開催するもんだと思うんだけど」
「そうなのか」
「いや、大体北海道展があったら同時開催で世界のパン展とかもやるもんじゃないですか」
「小さい頃はこういう所に来るとなると、大体裏から通して貰っていた」
「あっ外事!」
実在するのか。
「そして、最近になると、特段こういうフロアに用が無くてだな」
この百貨店の駅直結のフロアにある、百円均一ショップで用事が事足りているらしい。
「百貨店のこと、なんだと思ってます?」
「駅チカ総合商店」
「否定しきれない……」
閑話休題。
「それで、一人あたり五千円でしたっけ」
「ああ。 それで、シリアルナンバー付きのレシートが発券されるそうだ」
「資本主義ぃ……」
最も、ある意味で五千円が上限でそれ以上払ったとしても特典の中身は変わらない辺りは、良心的とも、言えるが。
「今まで、こういう特典的なものやったことありましたっけ」
「ゲーム内でなら、何度か。 しかし、こういうリアル絡みとなると、少なくとも私はイマイチ印象には残っていないな。 だが、噂というか玲によれば、JGEの際に似たことがあったようだが」
「うーん」
まあ、丹月が気にすることでも無いか。パッケージ版購入者特典なんかも、有りがたく利用した記憶もあるので。
とにもかくにも。
「貰えるものは貰う方が賢いですもんね」
「貰うというべきか、買うというべきか……」
「ユニークぬいぐるみかあ……」
お一人様一点限り、との表記もユニークということをアピールしているのだろうか。
すべての最強種の討伐が済み、ワールドストーリー進行のアナウンスが全プレイヤーに流れたのも、つい先頃のことだ。
ある意味で、シャングリラ・フロンティアの全プレイヤーがその存在を知るモンスターなので、グッズ化することは不思議ではないのだけれど。
「めっちゃ人気じゃん」
間違いなく、この周りだけ人口密度が高い。ついでに、熱気も高い。
そして、意外なことなのだが。
「………………」
熱気を高めるのに、百も一役を買っているのである。
「……………やはり、右側の方が顔がしゅっとしている」
両手に、別々のリュカオーンぬいぐるみ。真剣な面持ちで、顔を見比べている。そして、意を決したようで片方のリュカオーンを棚へと戻し──そして新たなぬいぐるみを取り出す。
今度は、毛並みを確かめて。ついでに、抱きごこちまで試し始める。
真剣さの中に、なんらかのほの暗い感情が籠る笑みを浮かべる百。
「こわ……」
丹月の声は、百には聞こえていないようで、またもや棚に一体戻して、新たにもう一体のぬいぐるみを取り出す。重さを測るのか、鉄アレイを持つようにして、二体のリュカオーンを新たに比べ始めた。
「これ、まだまだかかるな……」
「おい、丹月」
「百さん、ちょっと待ってください。 いま、こっちのマッドフロッグぬいと目が合ってしまったけど、俺が今抱いてるマッドフロッグ君は、俺のもとを離れたくないそうだから」
「何を言ってるんだ草餅め」