終結プログレス 作:カモカモ
◆朝焼けコーヒー
ふくよかな香りが丹月の鼻腔をくすぐる。自宅でわざわざコーヒーを挽く、淹れるというほど、やる気はないがそれはそれとして美味しいコーヒーは飲みたいという気持ちもあって、だから今日も朝早くから近くのコンビニへと向かい、持ち帰ってきた。といっても、そこまで味の違いが分かるということもなく、ひょっとしたら自己満足以上のものではないのかもしれないと思わなくもない。
コトンと、丹月の向かいでも紙コップが音を立てて机の上に置かれる。一人分だけ買って帰るのもおかしな話、ということで同居人の分も買って帰ってきたのだ。
「さて、丹月」
「百さん、コーヒー美味しい?」
「さほど嗜まないから、良し悪しはいまいち分からないが、悪くはない」
そう言いつつ、百はにっこり笑ったままでずっと丹月を見つめてきていた。
「それでだ、草餅」
美人の笑顔は怖い。己にやましいことがあるのならなおさらであると、丹月は実感した。
「目立つところに、つけるのは止めろと、私は再三静止したと思うのだが」
百はとんとんと、彼女自身の首筋を叩く。そして、にいっと口角をつり上げた。
「どうしてくれるんだ」
めちゃくちゃ土下座した。
◆散漫ポッキー
同居人がリビングでチョコレート菓子を齧っていた。別段それがどうというわけでもないのだけれど。
「珍しいな」
「百さんも食います?」
チョコレートをコーティングしたクッキー菓子を差し出されたので、百は口で受けとる。さくさくと食べ進めて、残りわずかになったので一息に全て口のなかに吸い込んだ。
「……まあ、久々に食べると美味しいことは美味しいな」
「なんで微妙に納得してない感じなの」
「お前手ずから食わされたのが気に食わん」
「勝手に食い始めたのそっちじゃん」
「草餅め」
なんでだよ、と同居人は返してきつつ、もう一本咥えた。ん、と咥えながら百の方にも差し出してきたのでありがたく頂くことにする。
「なぜ、こんなものを?」
「なんでって、ポッキーの日だかで、スーパーで安くなってて、つい」
「ああ……」
そんな日もあったな、と百はぽりぽり齧りながら思い出した。学生時代に、どこぞの腐れ縁がポッキーゲームやらなんやらと言い出して、互いに引かずそしてそのまま──
「腐ったポッキーでも食べてる?」
そんなんわけあるか。単に。
「古い記憶を引っ張りだしてしまっただけだ。 あれだ、世の中には忘れておいた方がいい記憶もあるということだ」
「なんのことかはわからないですけど、言いたいことはわかります」
さくさくと二人がポッキーを齧る音が部屋に響く。
「にしても、百さん」
「なんだ」
「今日、スーパー行ってましたよね。入り口すぐのところに、めちゃくちゃ大々的に宣伝されてたと思うんですけど」
そうだったろうか。
丹月に言われて、百は改めて己の脳内を精査してみる。
が。
「…………カップラーメンが全品108円セールをしていたことしか、思い出せない、な」
「カップラーメンに対する集中力どうなってんの?」