終結プログレス 作:カモカモ
◆しぶしぶチョコレート
2月14日という日は、世に言うところのバレンタインにあたるが、久佐持丹月のここ数年は少々事情がことなっていた。
人が一つ歳をとる日、要するに誕生日でそれは丹月自身のものではなく、同居人よりかは些か他の関係性の名称が最近はぴったりはまるようになってしまった百のものに他ならなかった。
丹月は、仮にもぼちぼち同じ名を名乗ることになろうかという人物のお祝いを欠かすなんて不義理な人間ではなく、だからなんかしらの贈り物をすることは確定事項であった。
あったのだが。
「今年はどうなるんだろう……」
チョコレートという物品が欲しいかと問われると、男心としてはビミョウに欲しかったりするのだが、そこを汲み取られるのはそれはそれで恥ずかしかったり。
まあ、要するに。素直に、あなたからのチョコレートが欲しいです、とは言い出しずらいおとしごろ(アラサー)。
「残り物くらい、あるかなあ」
会社でばらまくらしいお高いチョコレートは、荷持ち要員としてフェアに駆り出されたのでかなりぎりぎりの個数しか確保されていないことは既に把握していた。
などなど、諸々理論武装していたがゆえに。
「ん」
「………………は?」
予想外の百からの攻撃──なんかチョコレートを咥えたままの体勢で、死んだ目で見つめられること──をまったく予測しておらず普通に度肝を抜かれまくった。
まあ、そういうことだよな、と取りあえずチョコレートを食べつつ唇が触れあう。
「ありがとうございます????」
「混乱してるなお前」
「しますよ、そりゃ。あと、混乱してるせいでチョコレートの味がよく分からなかった」
「貧乏舌め」
誰のせいだ、誰の。
あと、味に関しては。
「あと、何個か食べたら分かるようになると思う」
「しょうがないな。なら、場所を変える方がいいかもしれないな」
「そうですね、なぜか分からないけど、そんな気がします。それと、百さんが次も食べさせてくれるの?」
「草餅め」
◆草餅デイズ
定位置というほど厳密に定めている訳ではないけど、二人で暮らすうちに自然と決まってきた丹月のいつもの位置に、なんか草餅が置いてあった。
「なにこれえ?」
何かというと、緑色のお餅でそれはいかにも草餅としか呼べ無いのだが、それがここにあることが不可解である。
ただ、丹月のいつもの位置にこれがあると言うことは、十中八九は同居人たる百の仕業であることには間違いなく。
「食べろってことか……?」
ならまあ、貰えるもんはありがたく貰っておくことにする。幸いというべきか、折よく小腹も空いていることだし。
微妙に剥がしにくいフィルムをやっつけて、かじりつく。口に広がるあんこの味と、わずかに鼻腔をくすぐるような青っぽい匂い。要するに、何てことはない草餅であった。
「草餅が共食いしている」
「あんた、それ言うためだけに、ここにおいたんすか」
同居人は暇なのだろうか。俺が食べる様子多分ずっと見てたんだろうし。
「何を言っているんだ、そんな訳ないだろう草餅。私は、偶然草餅を購入してきて、それをテーブルに置いておいたところ、卑しい草餅が勝手に草餅を食べただけだ」
「…………」
丹月は、手の上の草餅をちぎって、百の口元まで持っていく。百はためらうことなく、それを口に入れた。
「うわー!百さんが、草餅食べてる!」
百はため息混じりに、やれやれと首を横に振って、軽蔑した目で丹月を睥睨し。
「小学生か貴様」
「先にやってきたのそっちじゃん!」
「覚えておけ草餅。こういう時は、先に精神的優位に立たれたと相手に思わせた方が勝つ」
「クズのテクニックかな?」