終結プログレス   作:カモカモ

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隠匿ハブアコールド

『立ち入り禁止。特に草餅』

 

「そりゃ、俺以外入ることないし……」

 

法律的には家族として認められた同居人の部屋にでかでかと張り紙がされていた。互いにゲーマーという人種で、しかも双方ともにVRゲームを好んでいる、こういう張り紙をするタイミングというのは丹月には覚えがあった。

要するにそのゲームの中でも、重要な局面に差し掛かっている時だ。丹月も時たま、すげえ長時間かかるタイプの死に覚えボスに挑戦するときは、張り紙まではしなくともメッセージを残すことはする。だから、百も今そういう状況にあるとは考えられないことはない。

ないのだが。

 

「なんか怪しい……」

 

丹月はゲーマーで、百もゲーマーである。そして、ゲーマーであるからこそ、重要な局面でふらっと部屋に入ってきた家族にコンセントをぶっちぎられるような事故が万が一にも起こりえないようにするほどのゲームをプレイしているのならば、その痕跡がなんかしら残っていたりするのだ。それが、ここ最近の百からは欠片も感じなかったのである。

なんて、非科学的にも程がある根拠をあげているけど、もっとわかりやすい怪しさとして。

 

「風邪薬の……空箱。スポドリのペットボトル…………」がテーブルに散らばっていた。

 

ガチャンと音を立てて、百の部屋の扉が開き。

 

「コンビニへ、行ってくる」

 

そそくさと、百が玄関へと向かう。まるで、丹月からなにかを隠したいかのようなやましさすら感じられるようだった。しかしながら、その足取りはゆっくりというか、ふらふらしていた。

「ストップ」

 

丹月は、百を呼び止めるために肩に手を置いて。

それだけだったのに、百の体がふらりと傾いた。

丹月は慌てて、自身の腕の中に百をおさめる。

 

「何度?」

「身に覚えがないが、なんのことだ」

 

この期に及んで惚けようとする百だが、どう見ても通常ましにダルそうで、目もとろんと垂れていた。

丹月は病人の言葉を無視して、額に自らの手のひらをあてがう。

 

「そこそこ熱いじゃないですか…………」

「草餅め……」

「自分の足で部屋に戻るのと、俺にお姫様抱っこされるのどっちがいい?」

 

舌打ちくらいされるかなとも思っていたのだが、存外素直に百は丹月の腕から抜け出して自らの足で部屋へと戻り始めた。

 

 

37.8℃と表示される体温計。平熱にもよるのだが、微熱と呼ぶにはいささか高めの数値だ。

 

「いつからなんです?」

「金曜日の夜に突然」

「じゃあ、ちょうど半日くらいか。教えてくれればよかったのに」

「寝ていれば下がる気配があった。現に、昨晩は39度出ていた」

 

百のその言葉は嘘ではないようで、お粥ですらない白米を余裕で完食している。食欲がしっかりあるのは確かだ。

もしこのまま、熱が下がるのならば病院へ行く必要もないだろう。丹月は部屋へと運び込んでいた食器を回収する。

 

「なにかいるものあります?」

「特には、ないな」

「まあ、今日明日は確実にうちにいることにするので、なにかあったら声かけてください」

 

もとから、出る予定もなかったが。

 

「すまない」

 

珍しくしおらしい返事が返ってきて、丹月は思わず食器を落としかける。ガチャンと音が響いた。

 

「何をやっとるんだお前は」

「ほんとうにねえ……」

 

丹月が掌を、病の同居人へと近づける。百は少しも動かない。頭に手を置いて、ぽんぽんと軽く叩く。

 

「草餅め……治ったら覚えていろ…………」

「え、これ嫌な感じの流れ!?」

 

 

 

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