終結プログレス 作:カモカモ
◆衣替えタイジャージ
「うーん…………」
季節の変わり目で、いっときの猛暑に比べれば、暑さもすっかり和らいでいるとは言えるかもしれないが、それでもまだ気温が夏日のままな日々が続いていた。
衣替えをするか否かで、丹月は悩んでいた。
「先ほどから、棚の前で何をうんうん言っているんだお前は」
「適切な温度調整が困難な日々への、問題提起をしてまして」
同居人が、謎に唸り声をあげていれば、当然疑問も浮かぶ。そんな背中越しな百からの呆れ混じりの問いかけに、丹月は適当に返した。
「暑ければ脱げばいいし、寒ければ着込めばいいだけの話だろう」
「そうだけど、着込むためにも、衣服の整理は必要になるじゃないですか」
「適宜、棚から出していけばすむ話だろう」
ぺたぺたと、裸足だからこその足音をさせながら、百が丹月に近づいてくる。丹月は、その足音の主の方に視線を向け。
「中学生以外にそんな格好する人いるんだ」
「は?」
本日の百の装い。
体操服(半そで)に、ジャージ(ズボン)。そして、腰にはジャージ(上着)をくくりつけている。
「ドッジボールとかしてます?」
「してるように見えるか?」
「家の中でそんな格好になることある?」
休み時間の小学生なら、ともかく。百は小学生時代から、少なくとも干支一回りして、なんなら半周もしている、年頃なわけで。
「いいか、丹月」
「はい」
「今の気温はどうだ?」
「まあ、ジャージがいるほどではないですね」
昼間と言うこともあり、半袖が快適ではあった。
「となれば、当然脱ぐしかない」
「はあ……」
「では、脱いだ服は邪魔になる。邪魔になったのならば──腰に括り付けるのが一番動きやすさを保てるだろう」
「小学生の論理だ!」
そして、丹月はふと思う。
「床に置いとけばいい話なんじゃないですか」
「草餅め」
◆接近オータム
寝起きの同居人の頭が爆発していた。もちろんのこと、あくまでそれは比喩で実際は髪の毛が寝癖ではねてるだけではあるのだけれど。
ただ、それが半ば芸術的な域に到達しているように、久佐持丹月には感じられたので、あまりためらうこと無く頭に触れる。
「やめろ」
「つい……」
意外と、というのは失礼だけど、掌に返ってくる感触は、ふわふわと柔らかい。
「ああ……そろそろ、冬毛に生え変わる時期ですもんね」
「バカか。お前は私をなんだと思っている」
普通に手を払いのけられた。すこし、残念。
「いいか、丹月。知らないかもしれないが、普通の人間は毛が生え変わることはない。お前の頭髪は近いうちに無くな…………いや、これはまだ言うべきではなかったな」
「俺、はげんの!?」
思わず、丹月は自分の頭に手をやる。百は、その丹月の手を引き剥がして、彼女自らの手で額にかかる髪をかきあげた。
そして。
「ふっ」
「鼻で笑うのはさすがにひどすぎませんか!?」
まだ、毛髪が薄くなったり、生え際が後退したりなんて、してないはずだ。だから、これはきっと、仕返し交じりの冗談なはずだ。多分、おそらく。そうであって欲しい。
百はふっと微笑んだ──丹月の生え際を哀れみ混じりに見ているなんていうのはきっと被害妄想だ。
「ただ、まあ。お前の言う冬毛なはずはないが、そろそろ冬が近づいているのは確かだな」
「寒いですもんね、今日とか」
「そうだな。そろそろ、自然乾燥だと、乾かなくなりつつあるから、この頭になっている」
「ドライヤーは普通に毎日使おうよ」