終結プログレス 作:カモカモ
◆ちょうはつポッキーゲーム
お菓子メーカーの企業戦略もいいところではあるが、それでもスーパーやコンビニで特設コーナーまで設置されているのだから、まあ今日くらいはいいか、程度のノリで久佐持丹月は大きな区分ではチョコレート菓子となる棒状のあれを購入し、そして今ぽりぽり音を立てながらかじっていた。
「流行に左右されすぎだろう」
「でもなんかもう、流行って言うにはずっとありますよね、ポッキーの日って」
直にフローリングにあぐらをかいて座ると、冷たさが感じられる今日このごろ。ぼちぼち何か敷く必要があるか、とは思いつつすぐに実行に移すわけもなく、丹月は2本目に手を伸ばした。
記憶にあるチョコレートよりも、いささか苦味が強いようには思えるのだが、それこそ丹月も毎年この日くらいしかポッキーを食べないので、この記憶が正しいか否かも曖昧だった。
「子どもの頃、チョコレート部分だけを先に歯でこそげ取ったりしなかった?」
「そんな特殊性癖を、一般化しようとするな」
「別にそこまで特殊じゃないとは思いますけど」
三本目に手を伸ばそうとして、視線に気づいた。だから、行儀は悪いが咎める者も誰もいないので、チョコレート部分を咥えたままで、手の箱を百に差し出す。
「ん?」
「そうだな、少しもらおうか」
百が近づく。
膝に、一人分の重み。
吐息がかかる。
さくさくと相手が食べ進めていく度に、アメジストの虹彩が彼の視界を埋め尽くしていく。
触れる寸前で、ぽきんと音が鳴った。
もたれかかってくる重み。
「珍しい」
腰に腕を回す。
「そういう日だろう?」
「そうかも」
今度は、百が咥えた。まるで、という不確実さはなく、間違いなくチョコレートがコーティングされていない方が、彼に向けて差し出される。
ちょうはつてきな瞳。
丹月は、チョコレート菓子にかじりついた。
◆カップ麺フィニエスタ
カップラーメン。
丹月の今の日常を表すならば、カップラーメンであった。
「ねえ、百さん…………」
「なんだ?」
すそぞぞ音を立てて麺を啜っている同居人。
「いつもに増して…………カップヌードル食べてませんか」
「?」
百は心底何を言われているか分からないようで、首を傾けながら麺をすすり続ける。その首を傾けた際に起きた僅かな風圧で、カランと倒れていく空容器達。
「丹月。お前は、今週食べたカップラーメンの個数を数えるのか?」
「2個」
「草餅め」
非難される謂れはないと、丹月は思う。
そもそもの話。丹月からして、百がカップラーメンを常食しているのは今更なことであり、言及すべきことでもないのたが、今回は言及せざるを得なかった。
「なんで、そんな狂ったように、同じメーカーのやつだけ食い続けてんの?」
おはようでカップラーメン(醤油)。
おかえりと同時にカバンから覗くカップラーメン(スパイシートマト)。
夜ご飯のいただきますで、薫るカップラーメン(シーフード)。
そこそこの付き合いであると自負のある丹月からして、否、故に強く感じる異常さである。
「なんだ、そんなことすら、お前はわからんのか」
やれやれ、と今度は首を横に振る百。口はしっかりと、汁をすすっていた。
「カップラーメン・カーニバル・フェスタ・祭りが開催されているからに決まっているだろう」
「何がなんて?」
「皿がもらえる」
「とてもわかりやすい答え」