終結プログレス   作:カモカモ

57 / 82
入浴アフター/こたつポジション

◆入浴アフター

 

「ひゅっ」

「変な声を出すな。ただでさえ、狭いというのに」

「いや、天井から水滴がぴちょんって落ちてきて、背中が冷たかったんですよ」

「歌詞になってる」

「ばばんばばんばんばんあーびばびばびば」

「ちっ」

「ちょっと理不尽じゃない?」

「誰も歌えとは言ってはいないだろう」

「おっしゃる通りで」

「分かればいい」

「ところで、なんだけど、浮く、んですね」

「ちっ!」

「あ、こっちは本気の舌打ちだ!」

「誰のせいだと思っているんだ」

「誰かのせいってこと、ある?」

「一説によると、刺激を受けることで、サイズに影響をおよぼすという。好き好んで刺激を与えるような奴は私が許す限り、一人しかいないと思うが?」

「ところで、話を変えようと思うんですけど」

「草餅め」

「なんか、俺の腕に、内出血がいくつか残ってるんだけど、なにかしました?」

「……………。そろそろ、湯中りする可能性が高まりそうだから、先に上がっていいか」

「あ、じゃあ、上がったら先に洗濯機回しといてくれる?」

「お前に先に風呂から出る権利を譲ってやろう」

「その権利は、俺の質問に答える義務と抱き合わせなんだけど」

「その前の、私の質問への回答が先だろう」

「俺しかいませんね。で?」

「くさもちめ!」

 

◆こたつポジション

 間接的ではあるが、思えば怪しい点はいくつもあった。

 数日前に、同居人の部屋から何か家具を引き摺るような音がしていてたこと。

 もともと、互いの趣味が趣味なのだからそうなるのも当然ではあるが、同居人がやたらと部屋に引きこもっていたこと。

 そして。

 

「──みかん、か」

 

 百はゴミ袋からたまたま覗き見えた、橙色の皮から何が起きているかを、推理する。

 そして。

 

「草餅め………………!」

 

 答えに至った百は獰猛に笑う。

 ノックなしで同居人の部屋の扉を開けた。

 

 

「ひー、寒っ」

 

 今日の気温が例年通り、とはお天気キャスターの言であるが、例年通りであろうと今の寒さがなくなるわけではない。ということで、丹月は屋外で冷えた身体を、そのまま自宅へと持ち帰ってきた。さっさと、手を洗ったりという所用をすませて、愛しき彼の自室へと向かい、すぐにダイブするつもりで扉を開け。

 

「──ふむ。さんざん読み込んだつもりだった真理書から、新たな事実が分かったのか。さすが、ライブラ………いや、真理書をひっくり返しながら指を六回擦りあわせて、逆立ちすると新しい文字が浮かび上がってきた?どんな検証をしたらそうなるんだ……。ああ、帰ってきたのか丹月」

「なんで、思いっきり入ってるんですか」

「まあ、落ち着け。とりあえず、ミカンの皮いるか?」

「中身以外に需要はないんですよ、それ」

 

 なにが起きているかといえば、まあ丹月が自室にセットしたこたつに、百が座っていた。同居している時点で遅かれ早かれではあったから、別段驚きはない。

 ただ、問題点としては。

 

「俺が入るところある?」

「無いな」

 

 百は、こたつを堪能しきっている。具体的に言うと、脚どころかかろうじて肩が見えているだけ、というレベルでこたつに半身を突っ込んでいる。そして、頭はクッション代わりの座椅子に置いている。 

 丹月のこたつは、決して大きなものでないから、女性の中でも高身長側の百がそんな入り方をしていたら、二人目のスペースなんてものはないに等しい。

 ので。

 百の背後というか、上半身をすこし浮かせる。その隙に、腰を滑り込ませ、百の上半身は丹月自身にもたれさせた。

 

「狭い」

「ここの所有権は俺にあるはずなんだよ」

「先住権は私だろう」

「共同所有でいいじゃん」

「その場合は、もっと大きいやつを買うに決まっているだろう」

「買う?」

「必要ないと思わないか?」

「そうかな……そうかも……」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。