終結プログレス 作:カモカモ
◆入浴アフター
「ひゅっ」
「変な声を出すな。ただでさえ、狭いというのに」
「いや、天井から水滴がぴちょんって落ちてきて、背中が冷たかったんですよ」
「歌詞になってる」
「ばばんばばんばんばんあーびばびばびば」
「ちっ」
「ちょっと理不尽じゃない?」
「誰も歌えとは言ってはいないだろう」
「おっしゃる通りで」
「分かればいい」
「ところで、なんだけど、浮く、んですね」
「ちっ!」
「あ、こっちは本気の舌打ちだ!」
「誰のせいだと思っているんだ」
「誰かのせいってこと、ある?」
「一説によると、刺激を受けることで、サイズに影響をおよぼすという。好き好んで刺激を与えるような奴は私が許す限り、一人しかいないと思うが?」
「ところで、話を変えようと思うんですけど」
「草餅め」
「なんか、俺の腕に、内出血がいくつか残ってるんだけど、なにかしました?」
「……………。そろそろ、湯中りする可能性が高まりそうだから、先に上がっていいか」
「あ、じゃあ、上がったら先に洗濯機回しといてくれる?」
「お前に先に風呂から出る権利を譲ってやろう」
「その権利は、俺の質問に答える義務と抱き合わせなんだけど」
「その前の、私の質問への回答が先だろう」
「俺しかいませんね。で?」
「くさもちめ!」
◆こたつポジション
間接的ではあるが、思えば怪しい点はいくつもあった。
数日前に、同居人の部屋から何か家具を引き摺るような音がしていてたこと。
もともと、互いの趣味が趣味なのだからそうなるのも当然ではあるが、同居人がやたらと部屋に引きこもっていたこと。
そして。
「──みかん、か」
百はゴミ袋からたまたま覗き見えた、橙色の皮から何が起きているかを、推理する。
そして。
「草餅め………………!」
答えに至った百は獰猛に笑う。
ノックなしで同居人の部屋の扉を開けた。
「ひー、寒っ」
今日の気温が例年通り、とはお天気キャスターの言であるが、例年通りであろうと今の寒さがなくなるわけではない。ということで、丹月は屋外で冷えた身体を、そのまま自宅へと持ち帰ってきた。さっさと、手を洗ったりという所用をすませて、愛しき彼の自室へと向かい、すぐにダイブするつもりで扉を開け。
「──ふむ。さんざん読み込んだつもりだった真理書から、新たな事実が分かったのか。さすが、ライブラ………いや、真理書をひっくり返しながら指を六回擦りあわせて、逆立ちすると新しい文字が浮かび上がってきた?どんな検証をしたらそうなるんだ……。ああ、帰ってきたのか丹月」
「なんで、思いっきり入ってるんですか」
「まあ、落ち着け。とりあえず、ミカンの皮いるか?」
「中身以外に需要はないんですよ、それ」
なにが起きているかといえば、まあ丹月が自室にセットしたこたつに、百が座っていた。同居している時点で遅かれ早かれではあったから、別段驚きはない。
ただ、問題点としては。
「俺が入るところある?」
「無いな」
百は、こたつを堪能しきっている。具体的に言うと、脚どころかかろうじて肩が見えているだけ、というレベルでこたつに半身を突っ込んでいる。そして、頭はクッション代わりの座椅子に置いている。
丹月のこたつは、決して大きなものでないから、女性の中でも高身長側の百がそんな入り方をしていたら、二人目のスペースなんてものはないに等しい。
ので。
百の背後というか、上半身をすこし浮かせる。その隙に、腰を滑り込ませ、百の上半身は丹月自身にもたれさせた。
「狭い」
「ここの所有権は俺にあるはずなんだよ」
「先住権は私だろう」
「共同所有でいいじゃん」
「その場合は、もっと大きいやつを買うに決まっているだろう」
「買う?」
「必要ないと思わないか?」
「そうかな……そうかも……」