終結プログレス   作:カモカモ

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自転車クリーチャー/フールオンメイド服

◆自転車クリーチャー

「合理的って、ズボラの言い換えだったんだなって、最近よく実感するんですよね」

「私の顔を見るな。減る」

 

 とある噂があった。

 怪音を鳴らしながら、朝と夕方に自転車を漕ぐ、存在がいるというものだ。

 朝のゴミ出しで、近所の人と挨拶を交わす程度の社交性は一応持ち合わせている丹月は、そんな噂をおばちゃんやらおっちゃんやらから聞いて、まあ色々と察してしまったのだった。

 

「なんかこの世のものと思えないほどの美形でスーツ姿の怪異が、特定の周波数の音を出してこのあたりを調査してる、らしいですよ。自転車みたいな形の機械で」

「そんな化け物がいるわけないだろう」

 

 仕事から帰宅し、部屋着というにはあまりにもオールマイティーの活躍をしているジャージを今日も今日とて着こなしている百は、自身の端末から顔すら上げない。

 

「そうですよねえ、そんな化け物」

「誰が化け物だ草餅め」

 

 化け物は自白をした。

 

「大体、なんだその噂は。そんな化け物が、存在するはずないだろう、馬鹿馬鹿しい」

「この期に及んで、まだ誤魔化せると思ってます?」

 

 化け物こと百は、最近というには半年ほど前のことではあるが、移動手段に自転車を導入し始めたのだ。

 

「あと、もう一つ噂があるんですけど」

「本当にこの地域には暇人しかいないのか、お前を含めて」

「そんだけ人目を引くんですよ、百さんは」

 

 もちろん多少はさすがに贔屓目はあるだろうが、そんなものはなくとも、同居人はその顔立ちも、スタイルも、立ち居振る舞いも、周囲と一線を画す、と丹月は思う。

 

「だから、私はそんな化け物じゃない」

「そのもう一つの噂は、土日限定のジャージ姿で怪音を鳴らす、平日出現怪物のライバル都市伝説らしいんですけど」

「草餅め!」

「俺が言い始めた訳じゃないんですよ」

「なぜこうなっている……」

「自転車屋さんに行けば、解決するんじゃない?」

 

◆フールオンメイド服

 

 帰宅したらメイド服姿の同居人が佇んでいた。

 

「おかえりなさいませ、奥様」

「…………」

 

 連休前の金曜日。だからといって、何かあるわけでもなくいつも通りに帰宅した百にこの仕打ちはないのではないだろうか。

 

「110番をしてくれ」

「端末に指示出すのやめて?」

「とてつもない身の危険を感じる」

 

 これだけで、通報するには充分すぎるのではないだろうか。

 

「何もしてないじゃないですか!」

「木の芽時の変質者はみんなそう言うんだ」

 

 視覚の暴力。そういうものもあるのだ。

 

「こんなにも服を着てるのに露出狂と同じ扱いされてない?」

「そんなにも服を着てるから狂人の類と同じ扱いになる」

 

 というか。そもそもの話。

 

「何をやってるんだ、丹月」

 

 お前は。

 あと、百はそろそろ玄関よりも奥に進みたい。

 

 こめかみ辺りに皺がよってきた気がする。勝手に丹月に揉みほぐされた百は、その腕を軽くはたいた。

 

「つまり、お前の言い訳を整理すると、だ」

 

 出来心らしい。

 

「それを説明するだけに、私に貴重な時間を使わせたのか」

「結論から話したら、引き伸ばしてきたのそっちじゃないですか」

「結論だけで納得できるか」

 

 こんな馬鹿げた格好をしてる奴に、納得を求めた百のほうが悪いのだろうか。

 

「それで、百さん」

「なんだ」

「そろそろ寒くなってきた」

「アホ」

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