終結プログレス 作:カモカモ
◆危険回避バレンタイン
紙袋を抱えて出社し、帰宅時は紙袋をもう一つばかり抱えてくる。
丹月の同居人にとって、バレンタインという日はそういう日であり、今年もその例に漏れなかった。
「なんというか、百さんって相変わらず、おモテになるんだなあって」
「他人事のように語るな」
「他人事じゃなけりゃ、なんだって言うんですか」
苦楽を共にすると誓っただろうと言われた。丹月は逃げようとした。
逃げられなかった。
「選別作業を、するぞ」
「今年もやるんですね……」
「当たり前だ」
選別作業──すなわち市販品と手作りの分別である。
百は習慣的に、手作りは食べないそうだ。
「さすがに、百さんが勤めてるレベルの企業に、そんなにやばそうな人混じらないと思うんですけど」
「そうだな──例えばだが、丹月」
百は、丹月の方を見もせずに、彼のちょうど左手近くのチョコを、指し示した。パッケージの感じからして、間違いなく手作りだろう。
「開けてみろ」
「はあ」
袋を開けた。
丹月はすぐに投げ捨てた。
「ええ…………」
まあ、手作りではあった。あったから、問題でもあった。
「分かったか」
「わかったけど、それを見もせずに当てる百さんが怖い」
丹月は詳しくないが、供養とかが必要なのではないだろうか。
「それはそれとして、お誕生日おめでとうございます」
「ついで扱いか、草餅め」
「そんなに俺から祝われたかったの?」
「草餅め!」
◆レディネスホワイトデー
バレンタインが終われば、当然のごとくそのお返しというものが必要になる。バレンタインデーからちょうど一ヶ月後の、その日がホワイトデーだ。
だが、経験則からして、この日はバレンタイン以上に──もちろん比べるものではないのだろうが──ハードルが高いと、丹月は思う。というか、思っている。
そもそもの話、単純にホワイトデーはバレンタインよりも、全くと言っていいほど盛り上がらない。バレンタインともなれば、百貨店やそれこそコンビニなんかでも、わざわざ特設コーナーが作られたりするというのに、ホワイトデーはそうではない。コーナーがあっても、その規模が極めて小さくなってしまう。
ゆえにこそ、何をどう返せばいいのかを悩まざるを得なくなり、おそらくこれは永遠の悩みではある。
と、丹月は、思っていたり、いなかったりもする。
まあ、だから、ここに悩みを抱いているという気持ちには共感が出来るし、その悩みがあるのなら、参考になるかは別として相談にのることもやぶさかではないのだが。
『気合』
「よし」
なんか、勝手に元も子もない結論を、丹月の端末でもって返されてしまった。
「百さん……」
丹月の背中に、だらんと覆いかぶさりながら、勝手にメッセージを送信した百は、丹月の責めるような眼差しも──体制的には向けられていないのだが──どこ吹く風だ。
「大体の話だが。フェアではないだろう、バレンタインの時に散々悩んで見せていたのだから」
そのことを把握してる時点で、若干たりともバレンタインについての話題が、そこで出ていたりしていたんじゃないかと丹月は、思わなくはないのだが。こういうことに下手に返すとややこしいことになりそうな気もするので。
代わりに違うことを指摘することにした。
「百さんって、普通に妹さんと仲良しですよね」
「曲がりなりにも、一緒のゲームで、一緒にクランに所属していたんだぞ?」
「阿修羅会って」
「あれと、一緒にするな、草餅め」