終結プログレス 作:カモカモ
◆ネギ付きリップ
唇にネギがついていた。
といっても、丹月の頬ではなく、同居人の唇にである。おおむね、例のごとく昼食に食べていたカップラーメンの残骸だろうなと、思う。
「百さん」
丹月は、同居人に呼びかけてから、自分の唇を指した。
「うわ」
「え、なんでそんなにも俺のことをゴミを見る目でみてくんの?」
「草餅め」
カランと、箸を空いた容器に差し入れた同居人は立ち上がりがてら、丹月に接近してくる。
そして、あっと思うまもなく、丹月の唇に、柔らかいものが押し当てられた。
ちょっと、しょっぱい。
ああ、と得心がいきつつ。丹月は目を閉じる。
ついでに、二度、三度、お互いの唇に柔らかいものを押しつけあって。
「満足か?」
これ、指摘するとややこしくなるなとも思いつつ。
「唇にネギついてたよ」
「…………」
ようやく、百は自身の唇に指をあてた。ぽろりと、ネギが落ちた。
沈黙。
「しね」
赤面をしている同居人。
「ストレートな暴言」
「最大限譲歩してやったとしてだ。一度目は、譲歩したとしてだ。否、譲歩する必要はないな。そのうえで、二回目、三回目は!必要なかっただろう!」
まあ、それは全くもってその通りではあったのだけれど。
「せっかくの機会だったし?」
「死ね…………否、私の手でお前をこの世から抹殺する」
丹月の急所に、伸ばされる手。
「躊躇なさすごぇ」
◆例のジェスチャー
「お前、次やったら、本当に、コレ、だからな?」
両手を胸の前に掲げながらのジェスチャー。
丹月は最初、なんのことか分からなかった。
そのジェスチャーをした主の視線をたどる。そこには、なぜかいびつな形をしたメンシングボール(百が職場の忘年会のビンゴ大会で獲得してきた)が転がっており──。
「凹ましたのあれ!?」
「さて」
凹むようなものではないということは、それを百が持ち帰ってきてすぐにちょっとだけ持ち上げてみたり筋トレまがいのことをしてみた丹月にはよくわかってしまう。
「え?」
「不良品だったのだろう」
「そんなことなかったんじゃないですかね……」
そもそも、あれは凹ませることが可能なのだろうか、と丹月は思うのだが、そこに現に転がっているから問題なのだ。
「──身体の動かし方、まあようするに技術が加われば、これくらいは容易い」
「嘘つけ!」
「さて、丹月」
ニィと口角が三日月につり上がった。
「果たして、頭蓋骨は、あれよりも硬いのだろうか」
丹月は、粛々と謝罪した。というか、そうするしか無かった。まだ、頭蓋骨には、脳みそを守ってもらう必要があるのだ。
後日。
丹月の鼓膜が破られた。
※ゲームの話です。