終結プログレス   作:カモカモ

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アフターホワイトデー

 バレンタインのお返しに、結局は指輪を贈ったらしい。左手薬指用の。

 丹月の端末に表示されたメッセージを、持ち主より先に確認しやがった同居人は喜怒哀楽のよく分からない表情で停止した。

 取り敢えず、丹月は停止中の背後に回り込んで、背中を人差し指でなぞってみようとしたが、その企みは百から阻止される。

 

「ノールックで…………!」

「気配がダダ漏れだ」

 

 掴まれた手は、そのまま百の腹部に添えるような位置まで運ばれていってしまった。

 丹月はもう片方の手で、端末を取り返しつつ、ピッタリと背中を覆うような体勢になった。

 だが、停止から復活した百には、その体勢が不満だったようで、結局隣り合って座る形に落ち着く。

 

「望み通りの展開になったんじゃないですか?」

「過程が気に入らん」

 

 指輪を贈られた人物の姉は、なんかふつうに不機嫌そうだ。

 

「大方のところ──なんか勢いで渡した、とかそんなんだろう。もっと、過程を重視すべきであり」

 

 一つの端末を覗き込む形での会話なためか、必然的に顔を寄せ合うことになる。

 

「百さんって、そんなところにこだわるタイプじゃないよね」

「一般論だ」

 

 今の百には、むくれてるという表現がぴったりなのだろうなと、丹月は思いつつ。

 

「でもこれ、多分勢いになったのって、誰かさんが求められたアドバイスを切り捨てたからじゃないですか」

「つまりお前のせいだな、丹月」

「あんただよ」

 

 複雑に揺れ動く男心を無碍にしたのは、間違いなく責任転嫁に勤しむ百だ。

 というか、そもそもの話になるが。どうせ、遅かれ早かれではあったはずなので。

 つまるところこれは、単にさみしいだけであって。

 

「拗ねてますね」

「うるさい、草餅め!」

 

 

 そんなやり取りを当然見ていたわけではないだろうが、今度は百の端末が震えた。

 

「もしもし」

『姉さ──。───────、─────!────……』

「うん、知ってる」

『────』

「ああ、おめでとうというべきだな。おめでとう、玲」

 

 

 

 切電。

 

「知ってるか、丹月。姉は──妹を泣かす男を、殴る権利が与えられていると」

 

拳を握りしめて高らかに宣言する。

 

「これから、行こうと思うんだ」

「そういう涙じゃないよね確実に。あと、今行ったらさすがに馬に蹴り回されるよ」

 

 そもそも、プロポーズ後の男を殴ってよいという権利はない。おそらく。

 多分、無意識だろうが、百の頬が膨らみ始める。効果音をつけるなら、むっすぅぅぅぅぅ!とかいう感じだろう。

 

「お姉ちゃんは、寂しいんだね」

「本当に、うるさいぞ、草餅!」

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