終結プログレス 作:カモカモ
「結局のところ、桜味って何味なんですかね」
「…………桜だろう」
新年度という単語も、4月になって2,3週間も経過すれば徐々に重みも薄れていく今日このごろ。どちらかといえば、木の芽時という時節を表す言葉の方が時期的には近いせいか、百の同居人は変なことを例のごとくいい始める。
「いや、でもですね」
丹月は、ピンク色の餅をみょーんと引き伸ばして、ある程度のながさまで伸びたところで、ぷちんと引きちぎる。
「同族食い…………?」
「人間なんですよね、俺って実は」
軽口を飛ばしながら、丹月がテーブルの上にトレーをスライドさせてきた。何の変哲もない、スーパーで買った桜もちが一つ残っている。
「いちご味って、いちごじゃん」
「それは、そうに決まっているだろう」
「味とかも想像できるじゃないですか」
なんか冷蔵庫をごそごそしてるなと思ったら、いちごのパックを取り出してきた。いつの間にそんなもんを買ってたんだこいつは。
「でも、桜味って言われても、桜を想像できるほど食べたことないじゃないですか」
「そうか?」
桜の塩漬けやら、それこそ桜が用いられた菓子の類は、実家にいた頃に毎年なんらかの形で食していた百としては、あまりピンとこない話だった。
いちごを差し出される。手がふさがっていたので、口で受け取った。まだあまり熟していないのが、すこし酸っぱくて硬い。
「まあでも確かに、あまり印象に残る味わいではないのは確かかもしれんな」
「だから、あんまりピンとこないんですよね、桜味。でさ、百さん」
「ん?」
「途中で何回も食べ物わたしてる俺が聞くことじゃないんですけど、そのカップラーメンなに?麺がピンク色なんですけど」
「桜味、だが?」
麺がピンクで、ちょっと正直食欲増進にはあんまり寄与していない気がする。
というか、正直なところ。
「なあ、丹月。桜味って、何味なのだろうか」
「…………桜じゃないですかね」
普通に合わなかった。
◆膝枕クレイム
かっくんかっくんと、舟を漕いでいた同居人がいよいよもたれかかってきやがった。煩わしかったので、普通に反対側に押し返す。
ただ、同居人はなんか意図があるのかを疑いたくなるくらいに、何度も百にもたれようとしてくる。
「寝るなら、自分の部屋で寝ろ」
「う……ん…………」
一応返事はあるが、多分何を言われたかも理解してないらしく、丹月は当然のごとくその場を動こうとはしない。なんなら、余計にもたれかかってくる。
まあ、半分以上寝てるからそこになんらかの意志は混ざってないだろうとは思うけれど。シンプルに、邪魔でしかない。
だから、百は、はあと溜め息を一つ。
そして、身体の位置を少しずらして、重みの元凶たる丹月の頭を、自分の太ももの上へ。要するに、膝枕だ。
これならば、何回ももたれかかってくる煩わしさやら、百の腕周りの可動域を狭められることがなくなる。
「丹月め」
「かた……い…………」
しばいてやろうか。
膝を勝手に枕にしていた同居人の目が開いてきた。なんやかんや、15分くらいだろうか。
しばらく、ぼんやりした表情だったが、徐々に状況を把握できたのか。
「うえげあ?」
なんと言ったのか。そこまで驚くのは、それはそれでどうかと思わなくもないのだが。
「あと、目が覚めたなら早くどけ」
「え、もったいない」
「草餅め」