終結プログレス 作:カモカモ
◆不機嫌エモーション
どっからどうみても非常に不機嫌だったのが、サイガ-100であった。どれくらいかと言うと、感情表現がかなり高精度なシャンフロにおいて、背後に『むっすぅぅぅぅぅぅ』という効果音が浮かぶレベルかつ、普通に額に浮き出た血管がピクピク動いている感じだった。
なので、草餅は、クランハウスに入った瞬間にくるりと回れ右をして、事なきを得ようとした。
が。
「げえ!マッシブダイナマイトさんと、サイガ-0!?」
STRには勝てなかった。
「なんだ?」
鋭利な刃物かと思った。それくらいの声音であった。やっぱりこうなるよなあと思って回れ右して。
「フレに呼ばれたので帰りますね^^」
「あ?」
やはり死ぬほど機嫌が悪かった。死ぬのはもちろん草餅である。
「キレる10代……」
「とっくのとうにそんな時代は終わっているが?」
余計に険しくなるサイガ-100の目つき。草餅は余計なことを言ってはならないとようやく理解する。
「着席」
「はい?」
「正座(そこにすわれ)」
有無をいえなかった。言おうとしたらたぶんキルされる。そこまで理性がない人ではないと知っているけど。
仕方がないので椅子の上で正座をする。従うしか選択肢がないのだ。
「なぜ、せっかくの椅子の上で正座をしているんだ草餅め」
「理不尽の具現化?」
座らされたのは、サイガ-100の椅子である。比喩ではなく文字通り、ここのクランハウスで過ごす時にいつも黒剣の団長が腰掛けている椅子だった。
そして、草餅が椅子に座ったのを確認するやいなや、100は自らの体重を草餅に預ける。
「座り心地が悪いな」
「勝手に座られたのに、ケチつけられた……」
「草餅め」
「入れねえ……」
「なにやってんだよ」
「邪魔だぞ」
「覗いてみろよ」
「だから、何があ………………ちょっと適当なクエスト回すかぁ……」
「あー…………、目に毒?」
「入れないだろ?」
◆にわか雨あいあいがさ
いけるいける、と慢心して街に出たせいか、普通に雨がぱらついて来てしまった。仕方がないことなので、諦めて傘を取り出そうと自らのバッグを漁ってみたのだが、今日に限ってそれらしい感触が返ってくることが無かった。
「あー」
「どうした」
「折りたたみを今日にかぎって忘れたっぽいです」
そうこうしているうちに、雨脚が強まってきた。こうなったら、覚悟を決めて濡れるしかないか。
「入るか」
「え、どこに」
「傘に」
「え?」
そこでようやく丹月は、気づいた。
「百さんが傘を持ってる!?」
「私をなんだと思ってるんだ草餅め」
コンパクトが強みであるがゆえに、大人二人が入るにはかなり狭いので、必然的に肩を寄せ合う形になる。
「知ってるか丹月。折りたたみ傘は携帯しなければ何の意味もないんだ」
「知ってますよ、そんなこと」
チリンチリンと、ベルの音がした。
百の肩を抱き抱えるような形で、道路の隅へと一時的に避難。
「百さんが、まっとうに備えるタイプに思えないから」
「出るか?」
傘が傾く。丹月はごめんなさいをした。
「まあ、この傘自体、いったいいつ購入したものかすら、定かではないし、陰干しすらした記憶もないのだが」
「だよねえ。安心しました」
「なんの安心をしてるんだ草餅め」
「下駄箱で何をしているんだ」
「んー、片付け」
「ああ、なるほど」
「ところで百さん」
「ん?」
「折りたたみ傘が六本くらい出てきたんですけど、これって」
「梅雨から夏にかけて、増殖するんだ」
「カビじゃないんだから……」