終結プログレス 作:カモカモ
◆雨天ランドリー
「丹月」
「はい」
「臭うぞ、お前」
軽く、普通に心が折れそうな指摘が同居人から飛んできた。
「百さん、いくら俺が相手でも、言ったらいけない冗談はあるんですよ」
「単純な事実を指摘しただけだが」
そんなはずはない。丹月の自認では、まだまだいける年齢のはずだ。
「臭くない!」
「臭い」
「臭くねえって!」
百は、話にならんと首を横に振って、そして丹月の上体を強引に折り曲げた。
「へぶえ!?」
普段全く伸ばされていない筋やら骨やらが、悲鳴をあげる。
「におえ」
「むり…………」
残念ながら、丹月の柔軟性ではそんな余裕などない。百は、今度こそ大きなため息を吐いた。
「じゃあ、脱げ」
「え?」
「お前の、ズボンが、臭うんだ。さっさと、替えてこい」
「臭うってそういう方!?」
「どういう方があるというんだ、アホ」
ここ連日の天気で、洗濯物が生乾きになっていたらしい。丹月にその自覚はなく、そして百には被害を及ぼしていたらしい。
「加齢臭じゃなくてよかったあ……」
思わず漏れた、丹月のつぶやきを聞いた百はそっと目を逸らした。そして、小声で。
「言葉にしない優しさ」
「言ってるじゃん!え、というか、それも冗談だよね……?」
百は、丹月に一歩近づいて、鼻をすんすんと鳴らす。そして、丹月から静かに一歩離れた。
「百さん!?」
「うるさいぞ、くさ……にお……久佐持丹月め」
「冗談だって言って!?!?」
◆快晴スタイル
一度見して。
二度見して。
三度見して。
きた奴がいた。
「何がおかしい」
「おかしくないから、びっくりしてる」
「失礼すぎないか」
百が珍しく、1年に1回あるかないかの、仕事以外でまともに服を選んだというのに。
「なんでまた急にバッチバチのデート服を」
「さあ?」
久々の三連休だ。今日は天気が良かった。睡眠がかなり取れて身体が軽かった。メンテ中だからゲームに入り浸れない。
外に出かけてやってもいいかと思わなくもなかった。
まあ、つまるところ。
「服を着るのに理由なんていらないだろう」
失礼な丹月は、自身のこめかみを揉みはじめる。何か言いたいことがありそうだった。
「草餅め……。それで、なにかいう事は?」
「大変とても、お似合いです。はい」
まどろっこしい奴だ。素直に最初からそう言えばいいのに。
「で?」
「え」
「で?」
「……………、………………、…………!どこ、いく」
忙しない奴だ。正解を出すまでに、相当に悩んだらしいことが全て顔に表れていた。
まあ、正解をなんとか出せはしたので、及第点をやってもいいかもしれない。
「任せる」
「困るやつだ…………」
「何か言ったか?」
「どうぞ、お任せください」
手が差し伸べられる。
家の扉を、丹月が開けた。
百はその手を握る。
「いい天気だね」
「そうだな」