終結プログレス   作:カモカモ

65 / 82
雨天ランドリー/快晴スタイル

◆雨天ランドリー

 

「丹月」

「はい」

「臭うぞ、お前」

 

 軽く、普通に心が折れそうな指摘が同居人から飛んできた。

 

「百さん、いくら俺が相手でも、言ったらいけない冗談はあるんですよ」

「単純な事実を指摘しただけだが」

 

 そんなはずはない。丹月の自認では、まだまだいける年齢のはずだ。

 

「臭くない!」

「臭い」

「臭くねえって!」

 

 百は、話にならんと首を横に振って、そして丹月の上体を強引に折り曲げた。

 

「へぶえ!?」

 

 普段全く伸ばされていない筋やら骨やらが、悲鳴をあげる。

 

「におえ」

「むり…………」

 

 残念ながら、丹月の柔軟性ではそんな余裕などない。百は、今度こそ大きなため息を吐いた。

 

「じゃあ、脱げ」

「え?」

「お前の、ズボンが、臭うんだ。さっさと、替えてこい」

「臭うってそういう方!?」

「どういう方があるというんだ、アホ」

 

 

 

 ここ連日の天気で、洗濯物が生乾きになっていたらしい。丹月にその自覚はなく、そして百には被害を及ぼしていたらしい。

 

「加齢臭じゃなくてよかったあ……」

 

 思わず漏れた、丹月のつぶやきを聞いた百はそっと目を逸らした。そして、小声で。

 

「言葉にしない優しさ」

「言ってるじゃん!え、というか、それも冗談だよね……?」

 

 百は、丹月に一歩近づいて、鼻をすんすんと鳴らす。そして、丹月から静かに一歩離れた。

 

「百さん!?」

「うるさいぞ、くさ……にお……久佐持丹月め」

「冗談だって言って!?!?」

 

◆快晴スタイル

 

 一度見して。

 二度見して。

 三度見して。

 きた奴がいた。

 

「何がおかしい」

「おかしくないから、びっくりしてる」

「失礼すぎないか」

 

 百が珍しく、1年に1回あるかないかの、仕事以外でまともに服を選んだというのに。

 

「なんでまた急にバッチバチのデート服を」

「さあ?」

 

 久々の三連休だ。今日は天気が良かった。睡眠がかなり取れて身体が軽かった。メンテ中だからゲームに入り浸れない。

 外に出かけてやってもいいかと思わなくもなかった。

 まあ、つまるところ。

 

「服を着るのに理由なんていらないだろう」

 

 失礼な丹月は、自身のこめかみを揉みはじめる。何か言いたいことがありそうだった。

 

「草餅め……。それで、なにかいう事は?」

「大変とても、お似合いです。はい」

 

 まどろっこしい奴だ。素直に最初からそう言えばいいのに。

 

「で?」

「え」

「で?」

「……………、………………、…………!どこ、いく」

 

 忙しない奴だ。正解を出すまでに、相当に悩んだらしいことが全て顔に表れていた。

 まあ、正解をなんとか出せはしたので、及第点をやってもいいかもしれない。

 

「任せる」

「困るやつだ…………」

「何か言ったか?」

「どうぞ、お任せください」

 

 手が差し伸べられる。

 家の扉を、丹月が開けた。

 百はその手を握る。

 

「いい天気だね」

「そうだな」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。