終結プログレス   作:カモカモ

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在宅ファッション

 いわゆるリモートワークとは、シンクロナイズドスイミングに似ているのかもしれない。

 水の上では笑顔で、その実水の下は何度も何度も脚で水をかき分けている。

 何が言いたいかというと。

 

「めっちゃジャージ」

「何をいう。しっかり、上は着替えているだろう」

 

 在宅での仕事に励む百の服装がなかなかに面白いことになっていた。下半分はジャージで上半分はかっちりブラウス。

 時刻は12時を過ぎていた。

 

 

 丹月の同居人は、社会人TPOは弁えているが、私人TPOについては、万物をジャージで解決できると捉えている節がある。そして、この社会人と私人の狭間たる在宅ワークだと、上は社会人・下は万能ジャージになるようだ。

 

「だいたいだ。これほどVR技術が進歩しているのに関わらず、未だに一世代前の通信技術を使ってミーティングをさせる弊社が悪い」 

「なんでなんですかね?」

 

 丹月は首をかしげる。百も同じ方向に首を傾けた。

 

「我々が思っている以上に、VRで顔を合わせるということは、忌避されている」

「そんなもん?」

「そんなもんだ」

 

 あと、本人確認も不十分なことが多い、と百は続ける。

 

「これは都市伝説と思ってほしいのだが」

 

 かつて、VRミーティングツールのみを用いて打ち合わせをしていた取引相手がいたそうだ。そして、ある日リアルで顔を合わせたところ。

 

「どう考えても、スジものが現れたそうだ」

「うわ」

「その相手は一週間後に銃撃戦に巻き込まれて逮捕されたらしい」

「ええ……?」

 

 さすがに話が嘘くさすぎやしないだろうか。

 

「だから都市伝説と言っているだろう」

 

 信じるか信じないかは、あなた次第らしい。

 

「そういうわけで、結局一応は本人と顔を合わせられる一世代前の通信技術が、現役というわけだ」

「へー」

「ユートピア社がこっちの業界に参入してくれば話は変わるのだろうが」

 

 百は軽く肩をすくめて、ちらっと時計を確認して、立ち上がった。

 

「いずこへ」

「昼食を買いにコンビニまで」

「その格好で外出んの?」

「何が悪い、言ってみろ、草餅め」

「まあ、だいたいぜんぶかなあ」

「草餅め」

 

「在宅ワークの時のお昼ご飯ってなんかめんどくさくないですか」

「わかるー。そういえば、斎賀さんってそういう時どうしてるんですか?旦那さんも、在宅多いんでしたっけ」

「(なんかぐちゃぐちゃいわれてなし崩し的に)一緒に(コンビニまで)買いに行ったりすることが多いかな」

「えー、ラブラブじゃないですか!」

「そうか?」

 

 そうか????

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