終結プログレス 作:カモカモ
◆試着ティーンズ
「水着なら、持っているが」
「そうなんですか?!」
一緒に生活しているとは言え、すべてを把握できているわけではなく、ときおり増えたり減ったりする衣服なんかは、所持の有無も分からなかったりする。最も、丹月の同居人の場合は普段着を全て一着で補っている節があるので、そこそこ把握できていたりもするが、それゆえにかなり驚きだった。
「水着を?百さんが?」
「あるぞ」
「スクール水着?」
「捕まるぞお前」
さすがにこの程度では捕まらないはずだ。何も問題発言はしていないし。
「何年か前に、トワの奴に連れ回されてな」
「あー、海とか?」
「ナイトプールだ」
「……」
丹月の脳裏に、ナンパを手刀で千人斬り(物理)している姿がよぎった。
「よくついていきましたね、そんなとこに」
「選択肢が無かった」
当時を思い出したのか、げっそりした表情でため息を吐く。
「権謀術数も使いこなせなければならないと、あの時思ったものだ」
「なにをどうされて、そんなことになったんですか」
「古来より、毒殺は呪術と同等に」
「あ、いいっす」
宮廷闘争とかやっていたのか。
「それが、これ、だが」
しばらく自室でごそごそしてるなと思っていた百は、引っ張り出してきた水着を手にしていた。
「……………」
「あれ以来着用していないから、それほど傷んでいない。おそらくまだ使えるはずだ」
「………………」
丹月の頭が痛み始める。
「百さん…………何年か前って、正確に、いつのこと、ですか?」
百は首を傾げながら、しばらく虚空を見つめてから。
「あれは──大学に入学した年の夏休みだったか」
つまり、ギリ十代。
「……………一回、試着したほうが、いいんじゃないっすかね」
「必要ないだろ」
「悪いことは言わないから、そのほうが安全ですって」
「草餅め」
「言わんこっちゃない」
◆日差しハード
どうやら日差しは人間のHPを確定で減らせるらしい。
夏の真昼は、外に出るもんじゃない、と丹月は思いながら何度目になるかもはやわからないレベルで同じ単語を吐いていた。
「暑い」
「やかましいぞ、草餅。私はいま、機嫌が悪いんだ。なぜなら、暑いからだ」
「俺と一緒のこと言ってんじゃん」
たかが、徒歩十分程度。
そう思って、不要不急にコンビニに向かおうとしたのが、悪かった。
「装備が……足りない…………」
日傘や、サングラス、そして水分。それら最低限の物資すら二人は持ち合わせていない。舐めていたのだ。
そのせいで。
「百さん」
「チッ」
「触れるものを全部傷つけないと収まらない歳頃?」
丹月の隣の女性は、なんかこう。
「ジャージ被って意味あります?」
民族衣装っぽくなっていた。砂漠地帯とかその辺の。
「多少、遮れるはずだろう、陽光を」
「効果なさそう」
「口を閉じろ」
チリチリと肌が焦がされていく。やけどしているのではないかと感じられるほどだった。
「ねえ、百さん」
「あ?」
「コンビニって、冷たいビール売ってるよね」
「お前、それは」
「外で飲むと美味しいと思うんだ」
「キンキンに冷えてる!」
「冷蔵庫にな入っていたんだから当然だろう」
「アイスボックスなんていつのまに買って…………まさか」
「大人になって、良かったと思う」
「アイスボックススト◯ングで実感するのは、さすがに危なすぎると思いますけど」
「お前がいうな草餅め」