終結プログレス 作:カモカモ
「ひっく」
「………………」
丹月がリビングに向かうと、お手本のような酔っ払いジャージ女が落ちていた。後退りをしたら、業務用ウィスキーの空容器がカラカラ音を立てながら転がっていく。
丹月は、回れ右をして自室に戻ろうとした。
ガシッ(脚を掴まれる)
ベタン(コケた)
「につきぃ!そこにすわれ!」
「最っ悪だっっっっっっっっ!」
めっちゃ絡まれた。
とりあえず、水を飲ませてみた。特に抵抗を示すこともなく、百は一息に飲み干した。
「薄くないか?」
「舌がバカになってるだけだよ」
「バカ…………草餅のくせに、私をバカ呼ばわりだと」
「バーカ、バーカ」
いつもなら、手が出ても文句は言えない返し方をしたが、今の百はふにゃふにゃになっているので、突然謎の笑みを浮かべるだけだ。
「バカ……バーカ……………ふふふふふ…………バカってお前……ふふふふふ………草餅………くさもちって…………ふくくふくくくくく」
「あ、これ、何言っても笑い始めるやつだ」
この状況の酔っ払いの相手をせざるを得ない現状。丹月は思った。
めんどくせえ、と。
「そもそもだぁ!」
「なんか言い始めた」
「お前に十五年追いかけているシリーズの、7年ぶりの新作がぁ……義弟の主食になりそうだった私の気持ちがわかるかあ?」
「あー」
丹月はもとより、当然ながら百もゲーマーと呼ばれる人種である。それなりに年季も入っているのだから、長年の思い入れがあるタイトルもいくつかあった。
百が思い入れのあるゲームタイトルの新作が、昨夜からDLが開始されたのだった。
そして、これである。
丹月は両手を合わせた。その手をはがされて、百に掴まれる。
これくらいは、仕方ないかと思い、左手を好きにさせてやっていたら。
「おぇぇ………」
「最悪だ!」
結局、声だけだったようで、内容物を受け止める羽目にはならなかった。穏やかはともかく、規則正しくはある寝息が聞こえる。
丹月は、首を横に振りつつため息も吐きつつ、とりあえずクッションだけは頭に差し込んでやった。
◇
半年後
「ひっく」
「………………」
百がリビングに向かうと、お手本のような酔っ払いが落ちていた。後退りをしたら、酎ハイのロング缶がカラカラ音を立てながら転がっていく。
百は、見なかったことにした。
ガシッ(脚を掴まれる)
ベタン(振りほどかれた酔っ払いが床に突っ伏す)
「ももさあああああん!俺はプロデューサーを許さない変な信念で意欲作と言うには普通にしょうもないゲームを作りやがったあいつしかも不倫までして変な方向で炎上させやがってっっっっっっ!」
「くそっっっっっっっ!最っ悪だっっっっっっっっ!」
めっちゃ絡まれた。