終結プログレス 作:カモカモ
◆昼食ムーンウォッチ
「世間は月見を、目玉焼き消費期間と勘違いしているのか?」
「美味しいからいいんじゃないですか?あと、それ、俺のポテトなんだけど……」
休日の午後。
そういえば、期間限定商品が始まったなと思い出し、えっちらおっちらと近くのファストフードの代表的ハンバーガーショップから、テイクアウトしてきた丹月のお昼ご飯は、数%を百にかっぱらわれてしまっていた。
「百さんは既にお昼ご飯食べてたじゃん」
カップラーメンの空容器が一つ増えていたことは、すでに確認済みだ。
「返してほしくば──」
「既に胃袋に入ってるものは、返さなくていいです」
「カエルのへその緒、ネズミの卵との交換なら考えてやらんこともない」
「絶妙にランクダウンしてるかぐや姫みたいなことを言い始めた」
丹月は、チキンナゲットの箱を開ける。BBQソースとマスタード。
百は黄色い方のソースにナゲットをつける。
「求婚を断ってきた数では、負けていないと思う」
「つまり、百さんは『地球で類を見ない美貌の持ち主……それって、私のことだ』って思ってるってこと?」
「ちっ」
「待ってその量のマスタードを一気に口に突っ込まれたらさすがに辛い!!!」
口の中が若干ばかりヒリヒリする。辛さが抑えめで助かった。
「その理屈で言うなら、お前は燕の子安貝を持ち帰ってきたということになるじゃないか」
「百さんが本物のかぐや姫じゃなくて良かった……」
「草餅め」
◆追及ネーミング
百が渋い顔をしながら、リビングへとやってきた。
丹月は、おや?と思う。
「どうでした」
「あと2週間ほど借りる」
「りょーかいです」
世にゲームは数多くあり。しかし、一般的なゲーマーの時間と資金は有限だ。
特に、後者の問題はそれなりに大きかった。ちゃんと社会人として稼いでいるといっても、社会に生きている限り、あくまでも趣味に割けるお金には、限界があった。
だが、そうは言っても、名作や神ゲーと呼ばれる類のやつは、プレイできるならしてみたい。
そこで、同居人がゲーマーなのだから、互いにゲームを融通することになったのも、自然な流れだった。
「どこまですすんだの」
「ウッド・キーパーとかいうクソボ「あ、もういいです」
あと、そいつはボスではなく、やたらと強いエネミーだよ。
百は、目を剥いて、そして罵詈雑言を吐いた。
丹月はほっこりした。クソ強エネミーで苦しんでいる新規プレイヤーは健康にいいので。
にやにやしていたのがバレたようで、鼻をつままれる。
「ところで、草餅」
「ひゃい?」
「なんだその返事は」
「鼻のせい」
声がおかしくなるのも、仕方がないことである。
「お前には──がっかりした。つまらない男だ」
「なんか普通に罵倒されてるんですけど」
「胸に手を当てて考えてみろ」
自分の胸に手をあててみたが、なにも思い当たるふしはない。潔白を証明するために、百の手をとって、己の胸に当てさせてみる。
思いっきり押された。
バランスを崩した。
百の手を掴んだ。
一緒に床にこけた。
百は丹月にのしかかりながら。
「なぜお前はプレイヤーネームに──元カノの名前をつけていないんだ」
「何を期待して俺のセーブデータ覗いたんですか!?」
「草餅め」