終結プログレス 作:カモカモ
◆入れ替えコーデ
殺しつけるような夏の暑さもようやく和らぎつつあって、丹月もさすがに衣替えに着手せざるを得なくなった。
棚から昨年着用していただろう衣服類を引っ張り出して、逆に夏物を来年に向けて棚の中に戻す作業に勤しむ。
「大変だな」
「いや、本来は百さんにも発生してしかるべき作業なんですよ」
今日も今日とて私服が赤ジャージの女は無敵だった。
「服の枚数が少ないと、衣服の入れ替えなんていう作業も発生しない。合理的だろう」
つまり、私はミニマリストだ、なんてことをほざく同居人。丹月が鼻で笑ったから、服を投げつけられた。
「ものぐさ」
「やかましい。だいたい、だが」
百が自身の棚を開けた。タンスにゴンゴンが何個か設置されていて、そこに意外なほど大量の衣類が詰め込まれていた。
「"秋の昼間、カフェテラスコーデ"」
「"初夏水族館お出かけコーデ"」
「"クリスマスヤケのみコーデ"」
「"新しい出会いにときめき春コーデ"」
「"ナンパ男撃退コーデ"」
「"ゲームの新ハード購入時待機列用コーデ"」
「さっきから何を言ってるの」
「こっちは"実家帰省時にお見合いを勧められた際に断れるコー「すみません、衣装持ちなのは十二分に伝わってきたので、話を聞いてください…………」
「わかればいい」
つまるところ、ファッションに一家言持っている知人から、ことあるごとに渡されたセット達なのだろう。
「ゆえに、ジャージは無敵」
「あ、はい」
◆草餅ダミー
「草餅め」
すっかり、軽くなってしまったなと、百は思う。手のひらに収まるサイズになってしまったなと思う。
からからと容器が揺れた。
そのことに、悲しみを覚えて──もう一度、名前を呟いた。
「草餅め……」
返事はなかった。
「草餅が入ってたトレー持ちながら何を呟いているんですか」
「草餅め……」
「まだいうか」
丹月の同居人は、からからとプラスチック容器を弄んでいる。
「もう……あの重みもない」
「食べたからだよ」
スーパーのレジ前に、4つ入り250円。まあ、買っても買わなくてもいいが、なんとなく買ってみて、数日冷蔵庫で眠っていたものが、今日ようやく百の手で空になったのがつい先ほど。
「なぜだ……草餅…………」
「当然のことですよ」
食べたものは、無くなるのだ。そこに何の不思議もない。
「草餅め」
「今、よく分かったんですけど」
丹月は、ビシッと人差し指を百に突きつける。百に掴まれて、掌を開けさせられる。
「指をさすな」
「それはすみません」
もう一度、指さす形にした。先ほどよりも、はるかに強い力で指先を伸ばされる。いたかった。
「百さん、今めっちゃ暇でしょ」
「そんなことはないが──たまには、お前と会話をしてやってもいいかとは思っている」
「つまり、構ってほしいの?」
「違うに決まっているだろ」
そうだったらしい。