終結プログレス 作:カモカモ
◆寒空クロックス
冴え冴えと光を放つ月が空に浮かんでいた。すっかり空気
がきりりと冷えて、冬の近づきを丹月に確信させた。
「……」
「寒いですね」
「…………」
「あー、百さんは別に寒くないんでしたよね」
「………………」
「子どもレベルで代謝いいですね」
「草餅め…………!」
「ジャージ+裸足クロックスを選んだのは百さんじゃん」
太陽が出ている時間はぽかぽかと暖かく、確かに夕方頃もまだぎりぎり薄着でも過ごせなくはなかった。ただ、すこしばかり屋内で用事をしている間にすっかり太陽は沈み込んでしまって、その結果が今である。
「裸足はそれでも止めといたほうがよかったと思うけど」
「靴下を探す労力は無駄だ」
「その結果が、今、ですけど」
「……………」
「冷たっ!?」
無言で、丹月の上着と肌着の間に手を突っ込む裸足女。暖の取り方がいささかダイナミックだった。
「場合によっては罪に問われますよ」
「お前が捕まっていないのだから、私が捕まる道理はない」
「俺のことなんだと思ってる?」
「丹月だと思っているが?」
さすがに歩きづらく、交渉の末に百は丹月の上着のポケットに手を突っ込むことになった。めっちゃくちゃ嫌そうな表情で。
「その顔は俺がすべき」
「丹月の分際で?」
丹月はポケットから手を追い出した。
気合でポケットに手が戻された。
「今の私は──コンビニのおでんが怖い」
「そっかあ……」
◆あとのハロウィン
職場から自宅へ。とっくに日常になっているとは言え、やはりそれでも勤務時間ともなれば気を張り詰めているらしく、じんわりと緊張が解けていく感覚を抱きつつ、百はリビングへと向かう。
「クリスマス、か……」
立ち寄ったコンビニで入手した、当面の食料達を仕事用バッグから取り出しつつ、つい先ほどの光景を思い返して思わず口からこぼれ出た。
百の記憶が確かならば、ハロウィンが終わったのはつい先週。しかし、コンビニの季節モノラインナップはすでに赤と緑に染まっていた。
例年通り、ここから年末にはあっという間なのだろうな、となんとなくため息も吐き出しつつ。テーブルにカップラーメン類をひとまず置いておこうとして。
百は気付いた。やたらカボチャが描かれたパッケージの菓子類が充実していることに。
つまり。
「ハロウィンに囚われた丹月がいる……!」
「囚わてないんですよ別に。あと、おかえりなさい」
「草餅め……ただいま」
曰く。
「安くなるじゃないですか、かなり」
「そうかもしれんが」
イベント系の商品は、当日を終えると半額までいかなくともだいぶんとお安くなる。そして、同居人はそれに、かこつけて普段なら買わないタイプのちょっと高めの菓子類をがっさりゲットしたらしい。
「ある意味で、商業戦略にやられてないか?」
「気のせいですよ、気のせい。あとこういう系は楽しまないと損じゃないですか」
「ハロウィンはとっくに終わっているが」
今年は普通に平日すぎたので、気づけば終わっていた。
「まだ、間に合います。ということで、トリックオアトリート」
「トリックをお前が選択することはやぶさかではないが、その場合、どうなるかわかるな?懇意の弁護士はちゃんといるのか?」
「法的対応されるのやだなあ……」
とかいいつつ。
なんか当たり前のように、百の前髪がかき上げられたので。
百はため息を再度はいて、目を閉じて、トリックを甘んじて受け入れてやった。