終結プログレス 作:カモカモ
◆濃厚アレンジ
丹月が湯切りをしていたら、音を聞きつけたのか百がぬっ
と現れた。
「カップ焼きそばか?」
「カップうどんですね」
「は?」
百はキレた。
湯切りして、ごま油を少々たらして、スープの素で味をつけて、うどん付属のあげを砕いて散らして。
「いいか、丹月。カップラーメン──否、インスタントラーメンの利点は何だ。早くて、おいしくて、そして手軽という点だ。私は、この食品に出会った時、確実に運命を感じた。これでいい、違う、これがいい、と。そうであるから私は、今日も明日も、そして死ぬその時まで、きっとこれを食べ続けるだろう。ならば、なぜ、このような食品が生まれたか考えたことがあるか。ないか。ないだろう。少しでも、考えたことがあるのなら、このような浅薄なアレンジなぞするはずがない。この商品は、食品会社による努力の末に生まれている。少しでもおいしいものを、消費者に届けようという熱意。きっと眠れぬ夜だってあったはずだ。いわば、努力の結晶なんだ。お前が、無下にしているうどんの出汁だって、麺と具材と出汁が絶妙なバランスになるように、幾度も調整して、ようやく完成したのだ。それを。それを、お前は捨てた。捨て去った。親御さんから大事に育て上げられて、ようやく成人を迎えた大事なお子さんを、社会に出た途端に命を削らせて馬車馬のように働かせるような所業だ。何も感じないのか、お前は。アレンジレシピは確かに、世の中に溢れている。しかし、そのアレンジレシピは本当に正しいアレンジなのか?アレンジは、食品のポテンシャルを引き出すためにするべきなのではないのか?少し調味料を足す……これは、良いだろう。アクセントとなって、あらたな魅力を見つけ出すきっかけにもきっとなるだろう。しかし、お前が今やろうとしていることは個性を殺し、違うものにしたてあ「百さん、あーん」
「濃い」
「感想それになるんですね。俺も食べよ。…………しょっぱ!?」
「最後まで責任を持って食べ切れよ草餅め」
「……………もう一口いりません?」
「アホ」
◆流行歌シャウト
リビングに音楽が流れている。
百も多少口ずさめるくらいには流行ってた楽曲で、おおかた同居人がイヤホンせずにスピーカーで流しているのだろう。
ただ、まあ。
「お前の聴いてる曲、会いたいやら会えないやら会いたくて震えるやら、情緒不安定がすぎないか?」
「え」
「つまり、お前は普段からそんな感情を私に向けていたのか」
「反論させてください」
「草餅め……」
「なんか蔑まれてる!?」
こいつ、もしや私のこと、かなり好きなのでは。
反論はこうだった。
「そもそも、世間で流行する曲がこういう系統が多いだけであり、そして俺は音楽にこだわりがあるわけではないので、歌詞に共感とかはしていないんです」
「つまり、浅いにわかだと」
「そうなんですけど。そうなんですけどね?」
にわかと言われると、釈然としないらしい。確かに、選んだ言葉は良くなかったかもしれない。
「というか、百さんだって、音楽をそんなに深掘りするタイプじゃないでしょ」
「深掘りをどのレベルで言うのかは分からないが……日本舞踊ならばある程度」
「音楽といえば音楽かもだけど……!舞踊の方が本体じゃないんですかそれは」
「吟じてみせよう」
「詩吟……!」
じゃれあってしばし。
「でも、本当に百さんにも、思い出してほしいんです。俺たちが学生時代に流行ってた、なんとなく歌える楽曲って、多かれ少なかれあるじゃないですか」
「世代を勝手に一緒にしないでくれるか。三十代のお前と、この私を」
「そんなに変わらねえんですよ、3歳違いだし。四捨五入したらとっくに、あんたも三十路だよ」
「草餅め」
「あべべべべべ」
ぐりぐり小指を軽く踏んづけたら、変な声を出してきやがった。痛くないだろうに。
「とりあえずですね、百さんが思い浮かぶヒット曲をなんかしら思い浮かべて欲しいんですよ」
「1小節でいいのなら。f******k!!!!!!(鍛え上げられたシャウト)」
「あっ、触れてた音楽が本当に違うやつだ!!!!!」