終結プログレス   作:カモカモ

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奥襟ルージュ/豆まきイーティング

◆奥襟ルージュ

 

 配偶者が、襟に口紅をつけて帰ってきた。 

 

 

 

 

 

 百が。

 

「おモテになられました?」

「表に出るか?」

 

 丹月は、己の気持ちを表すためにホールドアップし、アップした腕に無理くりカバンを引っ掛けられた。地味に重い。

 

「どこで?」

「駅前」

「車内ですらなく?」

 

 なんでも、ぶつかることを生きがいにしているおじさんが、いたらしい。そのおじさんが、口紅の主にぶつかって、百の近くに倒れ込んだそうだ。

 

「それで、助け起こしつつ、お前の腕に今あるやつで、後頭部に思いっきり投げたんだ」

「無事でした?」

「生きてはいた」

「相手の有無ではなく」

「私の心配を……?あの丹月が…………?」

「俺をなんだと思ってます?」

「釣った魚を持ち帰ってきたら餌をやらない釣り人」

「だいたいの釣り人はそうじゃないかなあ」

 

 先日、釣り道楽たちに義理の弟ともども巻き込まれてきたばっかりだった。風評被害もいいところだ。

 

「それで、百さんは、SNSのIDをしっかりもらってきたと」

「え?」

「ありゃ、気づいてない?」

 

 百のコートのフードからメモを取り出して、百に手渡す。

 百は頭痛をこらえるように、こめかみを押さえる。

 

「モテるよね」

「そんなつもりはなかったんだが」

「モテる人の発言……!」

「草餅め」

 

◆豆まきイーティング

 

 鬼は外。福は内。

 ということで。

 

「俺に!ぶつけるのは!おかしい!」

「仕方がないだろう、丹月。そういう行事なんだ」

 

 豆くらいは年の数だけ食べるか、と思い福豆を購入してみたら、謎に鬼のお面もおまけでついてきた。

 だから、丹月が被せられた。

 

「むしろ、人を無理やり鬼に仕立て上げるような百さんの方がよっぽど鬼じゃないですか」

「知ってるか丹月。人は見た目で8割の印象をさだめると。その理屈でいけば、鬼の面を被っているお前のほうが、私よりもよほど鬼になるだろう?」

「本当の鬼は人の心のなかにいるんですよ」

「草餅め」

 

 百が指ではじいた豆が、丹月の額にぴしりと当たった。普通に痛かった。

 

「どうやったんですか、今の」

「どうって、普通に指で弾いただけだが」

 

 もう一発跳んできた。お面のうち、丹月の頭からはみ出ていた部分に、豆が直撃し、お面が破れる。

 

「威力……!」

「鬼を退治するならこれくらいは必要だろう」

「豆って、遠距離武器として活用されてたわけじゃないと思うんですよ。あと、百さんは俺を殺したいの?」

「この程度で死なれてたまるか。せいぜい、傷ができる程度だ」

「節分で傷をつくったらだめなんですよ」

 

 いくらなんでも百とはいえ、怪我をするようなことは、避けてくれるとは信じたいところだけど。

 

「ところで、丹月」

「なんですか鬼さん」

「鬼はお前だ草餅め。豆を歳の数というか、厳密には数え歳の分だけ食べるのは良いとして、余った分はどうするつもりだ?」

「…………」

 

 とりあえず、丹月は一粒を百の口に放り込む。三十粒くらい口のなかに突っ込まれてやり返された。

 

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