終結プログレス 作:カモカモ
◆交換チョコ、プレゼント
「知っての通り、今日はあらゆるチョコレート製品が商機となる日だが」
「はあ。あ、お誕生日おめでとうございます」
「忘れてなかったのか……」
「なんで残念そうなの?」
バレンタインデーかつ、同居人の誕生日である。もう互いに長い付き合いな事もあって、1年間のイベントごとも、日常の一部として消化していくことが増えているが、そうであってもイベントである事実ら変わらない。
なので、丹月も、つつがなく前もって購入しておいたプレゼントの類を、本日の主役に手渡したら、そこはまあ素直に受け取ってくれたので、喜んでもらえたと思ってもいいだろう。
それは、いいのだが。
「それで、百さん」
「なんだ」
「何をどう思って、湯煎し始めたんですか」
ボウルinデカ目の鍋withお湯。以外にも手順にのっとって、真面目にチョコレートを溶かしているらしい。
「バレンタインだろう、今日は」
「まあ、そうですね」
例年、百が持ち帰ってくるチョコレートの選別作業の日になりがちだが、今年は社内政治うんぬんで事なきを得た、とは百の言だった。
だから、今年は平和かなーと、丹月は思っていたのだが。
「チョコレートの──厳密にはカカオ豆は、薬の原料として伝わったという話があってだな」
「媚薬?」
「草餅め」
滋養強壮だと、訂正される。
「そこで考えたんだ。肌から摂取すれば、効率的になるのではないかと」
「ならないよ」
「ということで、だ。丹月。今から、この熱々のチョコレートを、お前の背中に、流し込んで試すことにした」
「自分で試せよ」
本人の許可はないし、拒否権もないらしい。
熱々のホットチョコレートで二人して、口の中をやけどした。
◆眼鏡フィット
寒さも和らいだ気がしなくもないが、それでもまだ底冷えする今日このごろ。例のごとく、丹月の部屋に勝手に潜入していた百が、当たり前のようにこたつに足を突っ込んでいた。
「美人が眼鏡をかけてる」
「きっしょ」
同居人が珍しく眼鏡(推定ARグラス)をかけていたので、何も考えずに思ったことを発言したところ、非常に直裁なご意見が返ってきてしまった。
「いいじゃないですか、減るもんでもないし」
「お前の社会的地位における信頼度は着実に減少している」
「それほどのことですか」
「それほどのことだ」
百は端末から顔もあげることなく、チョコレートを数粒口に放り込んでいく。
「どうしたのそのチョコ」
「バレンタインの翌日に、私の職場のデスクに落ちていたから、検品したところ市販品と判明したブツだ。安全性は担保されている」
「落ちていたって」
それは普通にデスクに置かれていたとか、忍ばされていたとか、そういう類じゃないのか。
「いいか、丹月。持ち主不明の食べ物は──怖い」
「はあ」
「何が入っているかも分からないのだから、食べてはならないんだ」
「食べてるじゃん」
「検品したうえに、加持祈祷も済ませたからな」
言われてみれば、最近やたらとお香の匂いがしていたなと思い出した。
「加持祈祷はさすがにやらんが」
「やらないんだ」
嘘かい。信じる方も信じる方かもしれないが、丹月にとっていまだに百の底知れなさは計り知れなかったりする。
「下手なものを喚び寄せることになりかねんから、な」
「百さんにとってバレンタインってどういう日なの?」
「誕生日」
「それはそうだけどさ」
「あと、お前からの3倍返しの前振り」
丹月は口を閉じた。沈黙は金だからだ。実のところ、何を返すか全くもって決めていないからだ。
「ちなみに、私の指のサイズは「知ってる」
というか。
「欲しいの?」
「追加分は全く?」
「百さんめ……………」