終結プログレス 作:カモカモ
◆壁ドンクライシス
壁ドン。
それは一昔前、それこそ久佐持丹月の親世代にとっては胸キュンシチュとして人気だったらしい。
そんな知識を踏まえた上で丹月は、現在。
「おい」
斎賀百に壁に追い詰められ、ドンとやられ。
「ふぃへっ」
顎をグイっとやられていた。
ドキドキが止まらない。十割恐怖で。
「なんのつもりだ?」
土曜日の深夜四時。
深夜といえば深夜だが、オンゲーたるシャンフロではむしろ廃人達はそこそこ活発な時間帯。
丹月は、避けられない生理現象のため一旦ログアウトして用を足し、また自室に帰ろうとしたのだがそこで同居人に壁ドンをくらった。
「ふぁんふぉほふぉふぃふぅふぁ」
「なにをいってるかわからん」
そりゃ顎を掴まれてるからだよ、と反論したいがその理由により反論できない。
すさまじくよく分からない理由で明日から流動食になるのかもしれない、と涙目で色々と諦め始めたときに。
「こんなじかんにいったいなにも……Zzzz」
「寝惚けてた!?」
どうやら、不審者と思われていたらしい。
もたれ掛かって脱力し始めた百を抱えつつ、丹月もズルズルと床に座り込んだ。
◆壁ドンパニック
現在、斎賀百はこの上なくピンチを迎えていた。
「百さん」
「げ……」
壁ドン。
学生時代に、ふざけた腐れ縁にやるように促されたあれである。結局、そのときは同性同士だったのもあってか、百は鼻で笑い腐れ縁も微妙な顔をしていた。
では、異性である同居人{婚約者(一応)}によってなされているこれはどうかというと。
「うん、やっぱりかわいい」
「頭湧いたか、丹月」
困惑九割九分、残り一分はよくわからない感情。
「ひどくない?」
「この状況ほどは、ひどくない」
大体である。
かわいいとか宣まってやがるこの男、恐らく酔っぱらいである。
「このじょうきょう?」
訂正しよう。久佐持丹月という男は現在、へべれけであった。
「お前、今日どんだけ飲んできた」
「のんでないよ~」
「酔っぱらいは、みんなそう言う、……っ!?」
とすん、と百の左肩に軽い重み。丹月がもたれ掛かってきた。
「うん、ももさん、やっぱりきれいだ」
「…………」
…………………………。
「…………………………耳元で囁くな」
「こぺっ」
襟締め。 百ほどの実力者であれば、酔っぱらっている成人男性程度なら余裕で意識を刈り取れる。
「まったく」
熱っぽくなっている顔を冷ます。きっと怒りのせいだ。 多分、絶対そうだ。 断じて、やつの言葉に照れたとかそんなことはない。ないったらない。
もたれ掛かってきた丹月を、少々乱暴に床にと転がす。
「草餅め…………」