終結プログレス 作:カモカモ
◆コールラブしないと出られない部屋2
「俺が、百さんに、愛してるよって、6回言わないと、出られない部屋に、閉じ込められた、わけですけど」
「さっさとこの部屋から出せ。ほら、早く言え」
「心の準備欲しいなあ!」
丹月が目覚めたらそんな状況だった。
夢であるはずだと遠い目をしていたら、百に頬を思いっきり伸ばされた。死ぬほど痛かった。痛みがあるタイプの夢の可能性もあるため、今度は丹月から百の頬を伸ばそうとして、普通に手をはらいのけられた。
しょうがなかった。
「なんですか、この状況」
「私の方が言いたい」
とはいえ、愚痴っていてもここに閉じ込められ続けるだけだろう。むしろ、前向きに考えればいい。
愛していると、百に言いさえすれば、この部屋から出られると、明示されているのだ。
「ほら、早くしろ」
「めっちゃ急かしてくる……」
丹月は、百の目を見つめた。もうこうなれば、やけくそだった。盛大に、愛を囁いてやろう。
と、決心したのだが。
ポーン
『もういいよ、6回分と認めましょう』
部屋に掲げられた看板になんか文字が表示される。がちゃんと、解錠音がした。
「……なんで?」
「見苦しかったんじゃないか?」
「何が」
「表情」
「俺、どんな顔してたの?」
「お前には教えてやらん。草餅め」
◆当たり屋メイド
「そっかあ、メイドの日かあ…………」
「…………」
丹月は、メイド服の同居人とは目を合わせないように努める。端的に言えば、見てはいけないものだからだ。
服飾の類には、全く詳しくないので、どういうジャンルかはわからないが、少なくとも露出は全くないやつだった。
「じゃあ、俺は私用ができたので、ちょっと出かけますね」
「──つまり、お前は」
地獄の底で響く音のような声だった。丹月は、非常に怖かった。
「『いってらっしゃいませ、旦那様』と、この私に言わせたい、と?」
「欠片も考えてなかったよ!」
「いわんや、『おかえりなさいませ、旦那様』と、この私に言わせよう、と?」
「その目的で、出かけようってわけじゃないんですよ、断じて!」
ちょっといいかも、なんて思ったりは、正直したが。百は、ソファに腰掛ける。丹月は立ちっぱなしである。
「お前のような人間を指す便利な単語があるんだ。変態」
「冤罪のうえに罵倒を積み重ねられている……!」
あと、変態は言いすぎだと思う。その理屈で言えば、コンセプトカフェに通う世の人々が、そのくくりで入ってしまうではないか。丹月は、世の人々の擁護をしたかった。
「彼らは、金銭をもって契約関係を結ぶことで、コンセプトカフェを楽しむ権利を得ている。ところが、丹月。お前はどうだ。対価を払っていない」
メイドが、足を組み替える。丹月は、怖い上司ってこんな感じなんだろうなと、意識を別のところに飛ばした。
「つまり、お前は私のメイド姿を搾取しようとしている。許されるはずがない」
「当たり屋ぁ!」
普通に過ごしてたら、なんか百がメイド服だったのだ。丹月は、この状況をコントロールするすべを全く持ち合わせていないのだ。
「ということで、対価を要求する」
「えー」
「それとも、お前は、この私の、この格好は、対価が発生するに値しない、と?」
「…………ずるぅ」
「草餅め」
──そして丹月はメイドになった。