終結プログレス   作:カモカモ

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拉麺オリジン/良家パンチ

◆拉麺オリジン

 

「ラーメンを前にしたときは、ラーメンがあるな、くらいの気持ちにしかならない」 

「そっかあ」

 

 ずぞぞぞとカップうどんをすする百を眺めつつ、丹月は最近増えつつあるライス系のレトルト製品を食していた。

 

「百さんって、カップ麺狂いじゃないですか」

「理性はある。見てみろ、パッケージに完全食とある」

「本物の狂人って、自覚がないらしいんですよ」

 

 机の下で、足がとんできた。すねが軽く痛い。反撃した。器用に足を絡め取られてしまい、固定される。

 

「ラーメンも好きなのかなって」

「因果が逆だ。まず、カップラーメンがあったわけだ」

「狂った理論が展開されようとしてる……?」

 

 ぎゅうと、固定された足が捻じられていく。そろそろ、まずいかもしれない。

 

「逆に尋ねるが。私の人生に、ラーメンが入り込む余地があったと思うか?」

「ラーメンは割と普遍的に入り込むと思うんだよ」

 

 給食とかでも出るし。学食でも、なんやかんや定番のメニューだ。

 

「お前よりは、入り込む余地が確かにあるが」

「俺はもう、だいぶ入り込んでるんだよなあ、結果的に」

「いいか、丹月。給食のラーメンは──おいしくない」

「知らないですよ」

 

 まあ、確かに。丹月の記憶では、麺が伸びていることのほうが多かったから、あれをラーメンと呼んでいいかどうかはわからないが。

 

「それでなんやかんやあって、気づいたんだ。カップラーメンは、早くて美味しい、と。ゆえに私は思う。ラーメンは、しょせんカップラーメンのカップ抜きである、と」

「ラーメン屋さんに怒られそう」

 

 丹月の足が万力がごときパワーでねじられていく。

 

「俺の足を捻り切ろうとしてる……?」

「草餅め」

 

◆良家パンチ

 

 冬が過ぎ去り、春が一瞬で駆け抜けていって、ほぼ夏な気がする今日このごろ、丹月は死んだ目でリビングを眺めていた。

 

カサカサカサ(颯爽と走る黒い塊)

 

 春が過ぎれば、虫が湧く。生命の道理だった。

 

「昨日は小バエだったのになあ」

「夜中になにやらガタガタしてると思ったら…………草餅め」

「それは、ちゃんと俺に向かって言ってますよね?あっちを、草餅呼びしてませんよね?」

 

 土曜日ということもあって、二人ともかなり遅くの時間まであっちの世界にログインしていた。丹月だけお手洗いやらのために一瞬だけこっちに帰還していたのだったが、どうやらこっちで物音がしていたのか、百も様子を見に来たらしい。

 

「スプレーの類いは?」

「あるよ。どっかには」

「なら、早くしろ」

 

 丹月はチッチッチッと人差し指を、左右に振った。

 

「どっかっていうことは、どっかなんですよ」

「ちっ」

 

 人差し指を、逆方向に曲げられた。丹月は叫んだ。

 

「いらない雑誌とか、そういうものは?」

「電子派……」

「だろうな……」

 

 仕方ないか、と百が呟いたと思ったら、次の刹那に拳が空を殴った。

 あくまで、丹月の目には、そう見えた。

 果たして、生命の証(黒きG)は、真っ二つに割れた。

 

「ええ……」

「拳圧を飛ばした。斎賀流を究めれば、これくらいのことは朝飯前だ」

「良家ってすごい」

 

 黙々とティッシュで、後片付けしながら、丹月は思った。

 

 

「それに、百さんって、全然嫌がらないんですね。こいつら、見るのも無理って人もいるのに」

「実家は一軒家だからな」

「一軒家といえば、まあ一軒家かあ……」

 

 

 

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