終結プログレス 作:カモカモ
◆ヘソ出しパニッシュ
同居人がへそを出していた。
1週間に1回くらいの頻度である、お腹をかきながら歩いていたらへそも普通に見えた、とかいうパターンではなくファッションとして。全くもって丹月は詳しくないが、かろうじて引っ張り出してきた知識で、パンク系とかそういうジャンルなのかもと適当に当たりはつける。
だから、丹月は8度見くらいした。指でまぶたを無理やり引き下ろされた。
「見るな」
「あ、なんか恥辱にまみれた顔してる!」
「見えてないだろうが」
「心の眼」
「お前は知らないかもしれないが、厨二病は恥ずかしいことなんだ」
「百さんが、今感じてる恥ずかしさのほうがよほど」
「草餅め」
まぶたを開けるようになったので、まじまじ見つめようとして、今度は手のひらで目元を隠された。
「なんでそんな格好に」
「罰、ゲームだ」
曰く、腐れ縁とバトった結果らしい。あんまり百の腐れ縁さんのことを、丹月は知らないけど、きっと今頃高笑いしている気はする。
「そんな律儀に着なくてもいいんじゃないですか」
「分かってないな、丹月。今回、罰ゲームを受けることで──今後あちら側の逃げを排することができる」
食わせてやる、激辛ペ○ングを。そう百は決意を口にした。
「あ、はい」
この二人はきっと、学生時代からこれくらいのやりとりの応酬を続けていたのだろうなあ、と丹月はほっこりというにはやや剣呑な関係性に思いを馳せる。
「でも、これ、言うほど罰です?」
「…………その心は」
「似合ってるじゃないですか」
「ぺっ」
丹月の感想は、唾棄された。
◆混合リアル
道端で何かが動いたからとっさに後ずさりをしながら、背中に手をやる動作をしてしまったら、同居人から変態をみる目で見られた。
「現実とゲームを混同する実例を身内で見るのは辛い」
「気の所為です」
「私の動体視力はオリンピアン級だ」
「何で知ってんの」
「昔、ゲームセンターで測った」
「いつの話ですかそれ」
「制服を着ていたな」
「なら、もう衰えてるよね、確実に」
「草餅め」
さわさわと風が吹いた。背丈が低い街路樹が、ざわめきながら揺れている。
先ほど、丹月が思わず戦闘態勢をとったのも、きっとこの木々の枝なのだろう。
「しかし、お前は恥ずかしくないのか。そんなゲームに入れ込んで」
「百さんにだけは、言われるいわれはないなあ」
「私というものがありながら」
「悪いもんでも食いました?」
「賞味期限が昨日の卵を今朝食べたかもしれない」
「そのせいかあ」
半熟で食したそうだ。セーフとアウトの境界に立っている。
びゅおおおおと音を立てて、風が吹いた。どこやらかビニール袋が飛んできて、宙を舞う。別段身をかがめるほどの強風でもなく、だから丹月は普通に歩き続けていたのだが。
すっ(右手をかざす)
じっ(変なやつを見つめる目)
「見間違いだ」
「現実とゲームを混同する実例を身内で見るのは辛いですね」
ぺちんと丹月の腿がはたかれた。