終結プログレス 作:カモカモ
◆胴体ストレッチ
同居人が絶妙な位置に落っこちていた。
邪魔だったので、丹月は同居人の脇の下に手を差し込みつつ持ち上げる。びっくりするくらい無抵抗で。
みょーん(胴体が伸びる)
「猫?」
「どちらかというと、タチだが」
「そうなんだ」
なんの感慨もわかなかった。
「冗談だ」
「ほーん」
「冗談、だから、な?」
「はあ」
「本当だからな?」
焦った声をあげつつ、百は伸ばされ続けている。
「本当って今自白したし、何回も重ねていうあたり……」
「揚げ足を取るな草餅め」
ずるずると百を引きずるのが、なんか楽しくなってきてしまって、丹月は運搬先を見失いつつある。
「というよりも、ネコかタチという表現がお前に通じている……………妙だな。なぜ、お前はこの表現を知っている」
「言い出した側が、その詰め方するのは無理と思うんですよ」
丹月は、ふらふら左右に百を揺らしてみた。理由はない。
「自分の首を絞めるくらいなら、変な冗談言わなかったらよかったのに」
すると百が、さすがに嫌がったようで、しっかり地に足をつけて一気に立ち上がる。脇を抱えていた丹月も一緒に跳ね上げられて、ファイアマンズキャリーみたいな態勢にされてしまう。
「ネコやタチでやなく、鬼が出た」
「そのドヤ顔をやめろ」
丹月は、ぽいっと投げられた。マットレスで、ばいんと跳ねた。
数時間後
少なくとも、同居人は、タチではない。丹月は、そう確信した。
◆温泉スタイル
紆余紆余曲折あって、なんやかんやあって温泉旅行に来たため、どうせなら丹月は浴衣姿の百を写真に収めようと画策。
そして、失敗する。
「なんで!?」
「そもそも、なんでいけると思ったんだ……」
なんでも、なにも。
「ばっちり温泉街があるタイプじゃないですか、ここって」
土産屋が立ち並び、射的場なんかもちらほらある、ある意味で絶滅危惧種な町並み。
「なら、風情的に着るべき。そう思わないですか」
「言い回しが気に障るし、お前が妙に必死なのがシンプルに気持ちが悪い」
ボロクソの言われようだった。冷たさを含んだ秋風さらりと吹いて、温泉特有のにおいを運んでくる。
「第一、写真にとってなんになる」
「思い出……?」
「疑問を浮かべるな。そもそも、お前が写真を見返しているところを、とんと見かけたことはないが」
百は手強かった。
「それに、思い出と言うなら、お前自身はなぜ着ない」
「そりゃあ…………裾の管理がめんどくさいからですけど」
「お前は、自分がめんどくさいって思ってるもんを、私に着せようと?」
「絶対に似合うじゃん、百さんなら」
「草餅め」
結局、二人でちゃんと着た。