終結プログレス 作:カモカモ
◆睡眠リミテッド
疲弊していて、もう寝たほうがいい状況というのが人間にはある。
「おい、丹月」
「ん?」
なんか微妙に普段より体温が高い気がしないでもない同居人を、わりかし本気で睨んだのだが、そいつは全く動じやがらない。
なんか変だと、百は15分ほど前から気づき始めた。
「何時間眠っていない」
「絶好調ですよ」
「…………」
さすがに、その言い分は無茶であるため、百はゴンッと上体で同居人を跳ね上げた。
「あ〜あ〜!!!!」
情けない声で崩れる成人男。
「せっかく編み込んだ髪がほどける!!!!!」
「草餅め」
なぜこいつはそんなことができるのかと一瞬考え、そういえば妹持ちだったなと思い当たる。
「そこまでして起きていることに何の意味がある」
「編み込みができる?」
「するな」
百はぶおんふおんと激しめに首を振った。ぱらぱらと微妙にのこっていた編み込みの残骸がほどける。
「せっかくかわいらしかったのに」
「私が求めていなさすぎる」
なんか勝手に今度は百の髪を両手で掴んで、ツインテールとか言いはじめた。ちらっと顔を見たら、目が半分以上閉じていた。
「まあ、百さんは何もせずともかわいいですけど」
真剣に寝たほうがいいと百は思った。
そして。
「殺してください」
「寝たか?」
「起きました……」
「だから、私は何度か警告したはずだが」
枕に顔を埋め始めた。動きがいちいちなんかきしょかった。
「言わんこっちゃない」
◆美人薄命?
夕食時。
仕事が定時で無事に終わるという結果を百が導き出したので、平日ではあるけど同居人と一緒に食卓を囲んで、名もなきなぞの炒め物の類と、中身のバリュエーションが富みすぎている汁物を口に運んでいたら、やたらと同居人が己の顔を見つめてきた。
「なにか私の顔についてるか?」
「何もついてはないんですけど……」
同居人は、右目の前で親指と人さし指で輪っかを作って、なにやら目を細め始める。
「こうしたら、ぎり儚く見えなくもないかな、と」
「草餅め」
「生命力に溢れてそうじゃん」
残念なことに、同居人にはデリカシーと見る目がないようだった。
「美人薄命と昔から言うだろう」
「薄くはなさそうだし」
「逆に聞くがお前は、ほんの数年前まで、3食カップラーメン生活を毎日していた成人女性が長生きできると思うか」
「…………」
丹月が、すっと箸でつまんだ炒め物を百に差し出してきた。野菜を食べろということなのだろう。しょうがないのでもらってやることにして、直接口に入れた。なぞの野菜はくたくたになっているので、本当になんの野菜か食感からは全くわからない。
「つまり、私は薄命ということが証明できつつあるわけだが」
「証明できなくていいですね、それに関して」
丹月は、なんかしょんぼりし始めた。百のほうもなぞの肉を箸でつまんで差し出してみたら、めっちゃ嫌そうな顔で固辞された。ムカついたので、無理やりねじ込む。
「で、私が儚いという話だが──美人なら儚いだろう」
「さっきから思ってましたけど、よく真顔で美人連呼できますね」
「お前視点に立って言ってやってるんだ」
「百さんめ」