戦闘が終了し、そこには黒煙と炎が舞い上がる平野になっていた。パチパチと炎が立てる音を聞きながら、ヨナは呼吸を整えていた。
「はぁ…はぁ…か、勝ったの?」
ヨナがそう呟いた時、シンから通信が入った。
〈ああッ、俺たちの勝利だ!見事だったぞヨナ、アスカ!〉
「勝った…やった!私たち勝ったんだ!」
と、初めての勝利に湧き上がり、両手を上げて喜ぶヨナ。するとアスカは少し呆れた様子で呟いた。
〈これくらいで騒がないでほしいんだけど…〉
〈ほぉ?大した口を利くようになったじゃないか、アスカ?〉
〈あ、いや!ユイさんこれは――〉
そんなアスカを小さくあざ笑うようにユイがツッコミを入れると、アスカは慌てて訂正しようとした。だが、シンの発した集合の指示がそれを遮った。
〈笑い話はそこまでだ。ヨナとアスカは、1度俺とユイの元に集合してくれ〉
「わかりました!」〈むぅ…了解しましたッ〉
2人は指示に従い、ユイとシンの元へ向かった。
そしてユイとシンの元に到着したヨナとアスカの2人。シンもユイの背中から降りると、ヨナとアスカに目配りをしながら口を開いた。
「2人共、ご苦労だったな。これから帰還するが、その前に今回の戦闘のMVPを発表したと思う」
「エ、MVP?MVPが取れるとどうなるんですか?」
ヨナがシンに対して率直な疑問を投げかけた。するとシンは、少しだけ気恥ずかしそうに答えた。
「どうなるってことは無いんだが。単純に、さっきの戦闘で1番活躍したぞ。って言われたら嬉しくないか?」
「た、確かに嬉しいかもです!」
(士気高揚のためとは言え、やっぱりMVPの説明するの恥ずかしいんだ司令)
そんなことを考えていたアスカに誰も気づくことは無く、シンは小さく咳払いをすると先程の戦闘で一番活躍した者を発表した。
「今回のMVPは…ヨナ、お前だ!」
「え……ええ!?わ、私がMVPなんですか!」
「先に言っておくが、これは俺の独断じゃない。基地本部のコンピュータが戦闘の流れの中から厳正な審査に基づいて導き出した結果だ。今回はZK級1機と部隊長格のZW級を撃破したことが、MVPの最大要因だったみたいだな」
シンは手首に付けている小型の腕時計型端末から映し出された画面を見ながら、そう説明をした。それを聞いたヨナはまだ驚いたまま、やがて嬉しそうな表情になると―――
「ありがとうございます司令官!私、これからもっと頑張ります!」
と、笑顔で声を上げた。すると、ヨナはとある不思議な感覚に襲われた。それは、胸の奥からこみ上げてくる力強い感覚だった。
「あ、あの司令官。1つ聞いていいですか?」
「ん?どうしたヨナ」
「胸の奥から、何か力強いモノがこみ上げて来るんですが…これは一体―――」
その時、シンの腕時計端末に着信が入った。すまない。とシンは一旦話を切り、通信を開いた。相手はルトだった。
「どうしたルト?」
〈司令大変だよ!今の戦闘でヨナちゃん…ナラティブガンダムの大規模改装が出来るようになったよ!〉
「なに!?それは本当か!」
〈もちろん本当だよ!でも驚いたなぁ、数時間の訓練と1回の実戦ですぐ大規模改装出来るなんて…〉
「今ヨナが、胸の奥から力がこみ上げてくると言っていた。帰還したら、すぐに
〈りょーかい!楽しみに待ってるねー!〉
そう言ってルトは通信を切った。するとヨナが、あの…と尋ねてきた。シンはそんなヨナの両肩に手を置くと笑顔でヨナに答えた。
「ヨナ、基地に戻ったら整備室に向かってくれ。今お前の胸の奥では、ナラティブガンダムの魂がより強く輝こうとしている。それが今のお前が感じている感覚の正体だ」
「ナラティブガンダムの魂が……」
シンの言葉に少し呆気取られながらも、何処かその言葉に納得を得ることが出来たヨナ。そしてシンは続けた。
輝こうとする魂に応えるんだヨナッ
真剣な表情で訴えてきたシンの言葉にハッとしたヨナは強く頷きながら、ハイッ!!と元気よく返事をした。
そして基地へ帰投したヨナは、装甲服の取り外しが完了するとそのままの足で整備室へ向かった。出撃ドックの正面入り口扉の左右に伸びる下りの階段を降りていき、整備室に到着し入室してきたヨナをルトが出迎えた。
「おかえりヨナちゃん!じゃあ早速、大規模改装しちゃおうか!」
「だ、大規模改装?」
「そ!大規模改装をする事で、ヨナちゃんの中で更に強く輝こうとするナラティブガンダムの魂に応えるんだよ!」
そう言ったルトは、壁沿いに並べられたパネルの元へ向かった。ヨナもそれに続き、やがてパネルの前にやって来た。ヨナはパネルを起動させ、ナラティブガンダムの情報画面を開く。するとそこには「大規模改装許可申請」の文字が浮かび上がっていた。
「えっと、この「大規模改装許可申請」を押せばいいんですよね?」
「そうだよ!ささっ、ポチッと押しちゃってよ!」
ヨナはルトに促されるまま「大規模改装許可申請」をタッチした。するとすぐに、申請許可の通知が届いた。
「それじゃあ、ちょっと待っててね。あとは任せてくれていいからね!」
そう言ってルトはヨナの隣を離れると、部屋の奥にある端末へと向かいこれまた凄まじい速度でキーボードを操作していった。そして最後にエンターキーをカチッ!と鳴らした。
「よーし、これで完了!後は少しだけ待つだけ!」
「あ、はい!」
すると整備室の中央に突如緑のスクリーンが現れ、スクリーンの中央にヨナが先日初めて装着したナラティブガンダムの装甲服が映し出された。そしてその数秒後、無数のアームが画面外から現れると装甲服の表面に青白い火花を焼き付けていった。
「これは…」
「今、ヨナちゃんの装甲服に大規模改装を施しているんだ。しばらくすれば、この前よりももっとパワーアップした物に仕上がるんだ!」
「そ、そうなのですか…」
無数のアームによって青白い火花を散らせて光る自分の装甲服を、ヨナは初めて宝石を見たような驚きと歓喜の表情で眺めていた。そしてしばらくすると火花を発生さえていたアームが画面外へと姿を消すと、ピコリーン!と可愛らしい音と共に、アナウンスが流れた。
「大規模改装、終了しました。おめでとうございます、ナラティブガンダムさん」
「はい!大規模改装はこれで終了だよ!画面を確認してみよっか」
「は、はい!」
ルトの言葉を受け、ヨナは改めて壁沿いに並べられたパネルに向かい「装備確認/変更」をタッチした。そしてヨナの視線の先に映し出されていたのは、先日までの武装スロットが1つしかない
「これが、強くなった私…」
「ヨナちゃんおめでと!ナラティブガンダムの魂も、きっと喜んでるよ!」
ルトは笑顔でそう言いながらウインクをした。そのウインクに応えるように、ヨナはキリッとした表情で強く頷いてみせたのだった。
続く
いつも「機動戦士ガンダムこれくしょん」を読んでいただきありがとうございます。次回はProloguE~EP9までに登場した登場人物紹介となります。お楽しみに待っていてください。お話の続きが気なる方には申し訳ありませんがご了承ください。