それから数十分後、シンとユイは司令部のブリッジにやって来ていた。ブリッジは、正面のガラス張りとなっている窓に沿ってブリッジクルーの座席が六ヵ所設置されており、その後方にはシンの胸元くらいまである高さの機械によって後方以外を仕切られた艦長席がある。艦長席にはM.G.Fのマークが中央に刻まれた帽子を目深に被った女性が座っていて、シンはその艦長に話しかけた。
「艦長、発進準備はどうなっている?」
「もう少しで完了します」
「わかった」
そう言ってシンは通信士の座る座席に向かうと、艦内通信や他の基地と通信を行う時に使用する受話器を取った。それを耳に当て、チャンネルを艦内放送にセットしたシンは話し始めた。
〈司令官のシンだ。これより我々M.G.Fはフロリダ半島にて上陸作戦準備中の連合地球海軍連合艦隊との合流に向かう!この作戦は、全人類の存亡と命運をかけた作戦だ。失敗すれば、人類は押し寄せる黒色機動群の軍団によって滅亡することになるだろう。M.G.F総員に今まで以上の奮励と努力を期待する!以上だ〉
そう言ってシンは受話器を元の位置に戻した。そして艦長の元へ振り返ると――
「準備を急いでくれ」
「了解しました」
一方のヨナ達は出撃準備を終え、出撃ドックへとやって来た。すると、艦内放送が流れた。
〈これより本艦は発進準備に入ります。艦内各員は、所定の配置に付いてください〉
その放送を聞いてヨナは後ろを振り向いた。そしてその内容に1番驚いていたのも紛れもないヨナだった。
「え!?この基地って、船だったの!?」
「ああ、ヨナには言ってなかったっけ。今の艦内放送の通り、この基地は移動が可能な基地なんだよ」
「移動可能な基地!?」
「うん。私たちの基地「M.G.F司令部」は超大型輸送機を元に作られているんだ。この基地に来た時、基地の外観が飛行機みたいな印象を受けたんじゃないの?」
「そう言えば…飛行機みたいだなって、確かに思ったよ」
「つまりはそういう事。まあ、私たちは何もすることは無いんだけどね」
「そ、そうなんだ…」
アスカの説明に驚きを隠せないヨナを見て、リシェットは小さく笑っていた。
そしてブリッジでは、オペレーターの1人が声を上げた。
「艦内各所、全て準備完了しました!」
その言葉を待っていたシンは艦長の方を向き直ると―――
「では行こうか。フロリダ半島へ」
「了解しました!機関始動―――」
ハルフェース、発進ッ!!
艦長の言葉を受け、M.G.F司令部「ハルフェース」の翼部後方にあるエンジンが火を噴き、操舵士が高度上昇のレバーを前へと倒した。すると、ハルフェースは地上からゆっくりとその巨体を浮かばせた。それと同時に艦内を大きな揺れが襲った。それにヨナは驚いていたが、アスカとリシェットの2人は落ち着いた様子だった。
「わわわ!な、なんですかこの揺れ!」
「基地が発進した揺れだ。いちいちデカい反応なんかするな」
「す、すみません!」
と、リシェットがヨナの反応を見て少し冷ややかに呟いた。そんなヨナ達を乗せ、白いガルダ級超大型輸送機によく似た形状のM.G.F司令部「ハルフェース」はフロリダ半島へと飛び立った。
続く