「では早速、作戦の最終確認を始めましょう」
シンと握手を交わし終えたアミットは、部屋の奥の壁に掛けてある大きなモニターを付けた。そして同時に部屋の照明を落とし、その場にいる全員がモニターに注目するようにもした。モニターには北米大陸東海岸周辺が映し出された。アミットはモニターの前に立つと伸縮式の指揮棒を取り出した。
「現在、我々連合地球海軍連合艦隊はフロリダ半島南部に存在する海岸線の敵防衛陣地に対して上陸作戦の準備砲撃を実施中です。準備砲撃は、明日の上陸作戦開始時刻
「我が艦隊の偵察機の行ってくれた偵察によれば、防衛陣地前方には戦車止めや鉄条網で固められており、その後方には複数のZK級、GM級、ZW級、そしてSD級、TER級通常型が確認されています」
クロサキ司令長官がアミットの隣に歩きながら複数枚の航空偵察写真を取り出し、それを机の上に置いた。その写真に興味を示したヨナは写真の置かれた机の元へ歩み寄った。そしてヨナを含めたその場にいた全員がその写真に目を通した。その写真には数日前の戦闘で目の当たりしたZK級、ZW級。更には、平面的な全身と右手に大きく銃口が開かれたハンドガン、左腕には十字の紋様が入った大盾を持ち、丸い頭部には凸の形をした緑色のスクリーンを光り、背中の左側に1本の円筒状の物を刺したGM級。GM級とよく似たが形状ではあるが下半身が少し曲線的な装甲になっていて、右手には中型のライフル、左腕には曲線的で両端が二股上になっているシールドを持った黒色機動群SD級。非常に平面的でずんぐりした全身と両肩に逆L字のシールド、背中には1本のアンテナ、右腕には大型の固定砲と左脚にもシールドを備えた単眼の黒色機動群TER級通常型が写っていた。
(新しいタイプの黒色機動群!?まさか、もう新しいのが投入されてるの!?)
新たに目にした黒色機動群にヨナは驚きを隠せず、ギョッとした表情をしていた。しかし―――
「なんだ、既存の
と、リシェットが自信満々な言葉を発すると、先程まで驚いていたヨナは何とか落ち着きを取り戻した。
(び、ビックリしたぁ…思わず声を上げるところだったよ…)
「明日
「半島を丸ごと前線基地か…面白いことを考えたな」
アミットの話を聞いたシンは、思わずこぼした。
「半島の制圧において敵部隊が防衛線を展開している箇所は複数あるでしょうが、強固に展開されていると予測される箇所は―――」
アミットはそう言うと、手にしていた指揮棒をモニターに当て半島の付け根の部分をなぞった。
「ここ。北緯30度線に沿った半島の付け根部分と予想されます」
「そうだな。ここを抜かれれば、北米大陸内地方面への道を開かれてしまうからな」
「はい。ですが―――」
クロサキ司令長官と共に入ってきた参謀の1人が頷きながら納得した様子を見せていた。するとアミットは、一呼吸おいて更に言葉続けた。
「私は、更に強固な防衛線が張られていると予想しています」
「…それはどういうことだ?アミット」
アミットの言葉を聞き、シンが思わずアミットに尋ねた。アミットはシンの方を一弁すると、再び指揮棒をモニターに当て今度は円を描くようにある一帯をなぞった。
「フロリダ半島を抜けた先にある北東から南西方向に全長約2,400kmに渡って延びるこのアパラチア山脈は北米西海岸と北米内陸部とを分断する山脈です。フロリダ半島からこの山脈を避けて内陸方面へ出ることの出来るルートは、攻撃目標であるニューヤークから川沿いに更に北上する迂回ルートか、アパラチア山脈が途切れた西経85度線付近の海岸沿い周辺しかルートがありません」
そしてアミットはアパラチア山脈が途切れた西経85度線付近を北から南に向かって円で囲んだ。
「そのエリアにより強固な防衛線が引かれていると言うのか?」
シンの言葉にアミットは冷静に、はい。と頷くとその根拠を話し始めた。
「このエリアは北を山に、南を海に挟まれた巨大な隘路です。隘路は防衛側から見れば出口に蓋をしてしまえば相手の突破を難しく出来る地形。そしてこのエリアは北米大陸の内陸へ繋がっている。故に奴らはここを抜かれると我々に占領地への侵入を許してしまうことになります。そう考えれば、自ずとこのエリアで防衛線を張るでしょう。北緯30度線に沿った防衛戦よりも強固な物を」
「ではどうすると言うのだ!そんな所へむざむざ我々陸軍を突撃させる気か!」
と、今度は先程の参謀とは別の人物である緑色の軍服を着た陸軍中将がアミットに向かって叫んだ。しかしアミットは、そんなことはしません。とハッキリと落ち着いた口調で話し始めた。
「強固な防衛線を正面突破することは出来ません。そして、我々の目標は東海岸沿いのニューヤークです。相手が防衛に集中してくれるのであれば、こちらから迂闊に打って出る必要はありません。その為に、半島を丸ごと前線基地にする計画を立てたのです」
「なに?」
「…半島を前線基地にすれば物資の補給もスムーズに行える。攻勢を仕掛ける素振りだけ見せておけば被害も抑えられるし、それ以上後方に奴らを通すことも防げる。その間に別部隊が西海岸沿いを北上、ニューヤークを落とすという事だな」
「その通りです。奴らもアパラチア山脈を越えて部隊を送ってくることは難しい筈。戦力を分散させてしまうのは危険を伴いますが…ニューヤークを落とし、最終的に北米大陸を奪還するためには我々も身を切る必要があるのです!司令長官、偵察機隊にこのエリアの偵察要請を願えますか?」
「わかった、伝えておこう」
「感謝します長官」
「危険な戦略であることには変わりない。だが、虎穴に入らずんば虎子を得ずと、東洋では言うらしいからな。我々陸軍も全力を尽くそう」
「中将…感謝します!」
アミットはそう言いながらクロサキ司令長官に頭を下げ、中将にも頭を下げたのだった。
「アミット、作戦を纏めてくれ」
アミットは、わかりました。というと淡々と作戦内容の纏めを話し始めた。
「明日
「攻撃部隊と防衛部隊の選別は俺が判断させてもらうぞ」
「はい。シン司令官、よろしくお願い致します」
「わかった。お前たちは明日に備えて準備と休息を取ってくれ。コトハとミーシャは3人の面倒を見てやってくれ。俺はクロサキ司令長官と話すことがあるんでな」
「えー!!私はもっと司令と―――」
「了解した司令。ほら行くぞコトハ、3人とも」
「イテテテテッ!耳引っ張ないでよー!」
シンの言葉を聞いたミーシャは司令に再度くっつこうとしたコトハの右耳を引っ張りながらヨナたちを連れて作戦会議室から出て行ったのだった。
続く