「え?女の子?」
撃破した黒色機動群から現れた少女に驚きを隠せないアスカ。だがアスカが驚いている間に少女の身体はフラフラとよろめき始めた。
「ヤバッ!」
よろめいた少女を見たアスカは急いで少女の元へと駆け寄り、慌てて身体を支えた。だが依然としてその少女が目を覚ます気配はなかった。するとそこへコトハとミーシャ、リシェットの3人が到着した。
〈アスカ、これは一体どういうことなの?〉
「そ、そんなこと私もわかりませんよ!黒色機動群を撃破したと思ったら、いきなり女の子が現れたんですよ!?」
コトハの質問に現実に起こったことに整理が追いつかないアスカは焦った様子で答える。
〈とは言え、この子をこんな場所に放置は出来ないな。コトハ、拠点に戻って司令に相談するのが最善だと思うが…〉
「そ、そうですよ!女の子を戦場のど真ん中に放置なんて出来ません!」
ミーシャは客観的に、アスカは少し感傷的にコトハに進言をする。2人の言葉を聞いたコトハは少しだけ悩んでいる様子だったが、リシェットの言葉が決め手となった。
〈おいコトハ、ここで悩むのは時間の無駄だ。もしこいつがスパイだったなら、その時は私たちで殺せばいいだろ?〉
〈……それも、そうだね。わかった、一度拠点に戻るよ!アスカ、その子の事は貴女にお願いするからね〉
「はい!」
〈こちらコトハ。目標の殲滅を完了、これより帰還します〉
コトハは通信で目標の殲滅完了を報告した。すると、シンから通信が返ってきた。
〈了解した。無事の帰還を願っているぞ〉
〈ありがとうございます司令!…司令、一点だけ目標とは別に報告があります。黒色機動群を撃破した際に黒色機動群の中から少女が現れる現象が発生しました〉
地上から飛び立ったコトハは、先程の現象をシンに報告していた。そして丁度その時にコトハの隣にアスカがやって来た。コトハの報告に、なんだと?と反応するシン。コトハは後方でその少女を抱きかかえるアスカの方を向きながら報告を続けた。
〈現在、その少女を伴いそちらに向かっています。指示をお願いします〉
〈……わかった。とりあえず、M.G.Fのテントまで連れて来てくれ〉
シンから指示が言い渡されたコトハは、わかりました。と答え通信を終了した。そして4人は拠点へ帰還していった。
拠点へと帰還した4人は、装甲服を装着したままM.G.Fのテントへと入って行った。そして4人を待っていたシンとヨナはアスカがテントの中へ入ってきた時に驚きの顔を見せた。
「これは驚いたな」
シンが思わず少女を見てこぼした。アスカはそのままその少女をテントにあるベットの上に寝かせた。以前として少女が目を覚ます気配はなかった。すると、コトハが話を切り出した。
「司令、この子がさっき報告した女の子です」
「うむ。パッと見た感じは何処にでもいる普通の女の子に見えるな……撃破した黒色機動群の中から出てきた。と言ってたな」
「はい…アスカが撃破した黒色機動群の中から……」
コトハの報告を聞いてアスカに顔を向けるシン。アスカはシンが何を言いたいのか察したのか、いきなり喋り出した。
「そんなこと知りませんよ!こっちが知りたいぐらいだって!」
「……それもそうだな。悪かった」
「だが、この拠点では身体検査もまともに行えない。ハルフェースに送り届ける必要があるだろう」
ユイが出した提案にシンは頷きながら、そうだな。と言うと、アスカの方をもう1度振り向いた。
「アスカ。今からお前はこの少女と一緒にハルフェースに一時帰還だ。時間は掛けて構わない、この少女の事に片が付いてからこちらと合流してくれ。出来るな?」
「……わかりましたっ」
シンからの命令に少し面倒くさそうな表情を見せたアスカだったが、ここで反論しても仕方ないと分かっていたのか、表情はそのままにシンに敬礼をした。
「では今すぐハルフェースに向かってくれ。陸軍と海軍それから…ルトには俺から話を付けておく、さあ行け!」
「…了解っ」
シンの命令に嫌な顔をしながらも、アスカはその少女を抱えてテントを出ていった。そして、フォースシルエットの主翼を展開すると空高く飛び上がった。
拠点から飛び立ったアスカは連合地球海軍の艦艇が浮かぶ海上をハルフェースを目指して飛んでいた。
「ああもう!何でこんなめんどくさい事、私がやらなきゃダメなのよ!自分がこの子の世話やりたくなかっただけじゃないのかぁー!」
ハルフェースへ向かう道中、思わずシンに対して愚痴を叫ぶアスカ。だが結局、引き受けてしまった以上はこの任務を確実にこなさなければならない。そんな事を頭の中で考えていたアスカの目の前に海上に着水したハルフェースが映った。アスカは通信でハルフェースのブリッジに呼びかけを行った。
「こちらアスカ。司令からの命令で一時帰投する」
〈こちらハルフェース管制官。後方のハッチを開きます、そちらから着艦してください〉
「了解」
アスカはそのままハルフェースの後方へ回り込み、解放されていたハッチから艦内へと着艦した。そしてフォースシルエットの主翼を折り畳むと、格納庫で待っていたルトと合流した。
「待ってたよアスカちゃん」
「じゃあ、この子お願いします。司令が言ってたのはこの子です」
「りょーかい!じゃあとりあえず医務室まで行こっか、まずは身体検査から始めるよ」
(何で私も同行させられるのさ…)
そう内心で愚痴りながらアスカとルトは医務室へ向かった。そして結局、アスカが例の少女の身体検査が終わるのを待っている間に太陽はすっかり沈んでしまっていた。その上、身体検査を行うにあたってアスカが何かをする訳もなく、彼女は1人装甲服を身に着けたまま何時間も医務室前の廊下で待たされたのだった。
(はあ…何やってるんだろ私)
アスカが現状について苛立ちと面倒くささと、謎の虚無感を味わっていた時だった。突如、医務室の扉が開き2人の人間が出てきた。1人はルトで、もう1人は―――
「あ、その子…」
アスカが連れてきた例の少女だった。その少女はいつの間に黒地に青、赤、黄色の三色のイラストが描かれたシャツに薄紅色の襟付きジャケット、少し青みがかった黒のショートパンツに着替えていた。
アスカが例の少女が現れたことに驚いていると、その少女はアスカに話しかけてきた。
「貴女が助けてくれたの?」
「え…ま、まあそうだけど」
「そっか!じゃあ、お礼を言わなきゃね。ありがと!」
その少女はアスカに向かって笑顔で礼を述べた。アスカは依然として驚いたままだったがやがて、どういたしまして。と少し照れ臭そうに答えたのだった。そしてルトが会話に入り込んできた。
「そうそうアスカちゃん!聞いてほしい事があるんだけどさ!」
アスカが、なんですか?と聞き返すより前にルトは興奮した様子で叫んだ。
この娘、ガナーザクウォーリアのMS娘だったの!!
「……え?」
興奮するルトの言葉に押され、アスカはそう呟くことしか出来なかった。
続く