黒色機動群の野営地への強襲から2日が過ぎたこの日、ヨナ達M.G.F.と連合地球陸軍部隊はフロリダ半島の付け根、北緯30度線付近まで到達していた。ここに来るまでに、半島に展開していた黒色機動群部隊は全て撃滅され、ヨナ達は半島制圧へ王手を掛けたのだ。そして黒色機動群の防衛ラインに対する攻勢が開始される時刻が迫る中、ヨナは地球連合陸軍のリニアガンタンクが作りだした単横陣の前にユイ、シン、コトハ、ミーシャ、リシェットと共に立っていた。その場にいるMS娘たち全員が装甲服を装着し、いつでも攻撃できる状況で待機していた。すると、作戦参加の全部隊宛に通信が入った。
〈こちら、空母ショウカク所属の偵察機。敵部隊の編成はZW級2、GF級3、SD級3、TER級通常型2、DM級2を認む!〉
数日前コトハたちが救援した航空母艦ショウカクから飛び立った偵察機が航空偵察を実施し目前の防衛ラインに展開する黒色機動群の情報を伝えてきたのだ。
〈かなり正確の情報だな…
シンが偵察機より送られてきた情報の正確さに危うさを感じたのか、そんな事を呟いた。そしてその予感はすぐに的中することとなった。突然通信の向こうから驚きの声が聞こえてきたのだ。
〈な、何だアイツは!?〉
〈黒色機動群が飛んで―――こっち来るぞ!回避しろ!〉
〈は、早い!うわぁぁー!!〉
その僅か数秒の間に驚きの声は悲鳴へと変わり、それ以降偵察機からの通信は途絶えた。
〈…どうやら、厄介な奴がいるようだな〉
通信が途絶えた数秒の後、ユイが呟いた。
「どういう…ことですか?」
ユイの呟きを耳にしたヨナはユイに思わず聞き返した。
〈偵察員は最後、黒色機動群が飛んで。と言い放った。つまり、空を飛べる黒色機動群が私たちを待ち構えている。という事だ〉
〈確かに厄介だな…空中戦は空を飛べないMS娘にとっては一方的になりかねない。リシェット、ヨナ、空を飛んでいる黒色機動群にはよく注意を払っておけよ〉
「わ、わかりました!」
〈言われるまでもないなミーシャ!そっちこそ、気を付けるんだな〉
ミーシャから忠告を受けるヨナ。するとシンがその場にいる全員に呼び掛けた。
〈もうすぐ爆撃機の支援爆撃が来る。総員、攻撃開始に備えるんだ〉
シンの警告から少し経った時、再び全部隊宛の通信が届いた。
〈こちら爆撃部隊イーグル。これより敵防衛部隊への爆撃を開始する、全機突入せよ!〉
その僅か数秒後、ヨナ達の眼前に巨大な爆炎が次々に湧き上がっていった。爆発の炎はヨナ達の左側から右へ流れていく。
「す、凄い!」
その光景に思わず言葉が漏れるヨナ。すると―――
全部隊に告げる。攻撃を開始せよ!繰り返す、攻撃を開始せよ!
連合地球陸軍の中将の声が通信から放たれた。遂に敵防衛ラインへの攻撃が始まった。
〈俺たちが前衛だ。M.G.F.攻撃を開始する!〉
了解!
空を飛べるユイとコトハはその場から飛び立ち、ミーシャとリシェット、そしてヨナはそれぞれ搭乗するベースジャバーを発進させ前進を開始した。ユイを先頭にした単縦陣形で防衛ラインへと向かっていくヨナ達。すると正面から白い煙を噴いた小さな円筒状の物体が飛来した。
〈ZW級のミサイルだよ司令!〉
〈後方の陸軍部隊を防御!ユイを先頭に傘型に陣形を展開、可能な限り撃ち落とせ!〉
〈チッ!姑息な真似をして!〉
飛来したミサイルを撃ち落とすためシンが素早く指示を出す。リシェットが舌打ちをしながらもMS娘たちはユイを先頭にして左右へ移動し傘状の陣形を展開し、それぞれの火器の銃口をミサイルに向け引き金を引いた。色とりどりのビームが飛び交い、ミサイルを撃ち落としていく。ヨナ達の目前に無数の爆発が次々に起こり、その爆発の数だけミサイルは減っていく。だが、その隙を狙っていたのか2機のDM級が地上を滑走しながらヨナ達に迫って来ていた。
〈DM級が接近してくるぞ!〉
ミーシャが接近するDM級を確認し声を上げる。
〈くそ…ユイはDM級を足止めしろ!その間にコトハたちはミサイルを墜とせ!〉
「了解!」
〈ターゲットロックオン…くらえ!〉
ユイの両手に握られた2丁のツインバスターライフルが火を噴き、DM級目掛けて黄色い閃光が走っていった。だが―――
〈なに!?〉
「DM級が左右に移動していきます!」
ユイが放ったツインバスターライフルの射弾はDM級が散開したことで回避され、2機は左右に分かれてヨナ達を挟撃するように向かってくる。
〈ユイ!〉
〈分かっている!〉
ユイはその場から前へ出ると、再びツインバスターライフルを発射した。今度は進攻上の足元を狙ってツインバスターライフルを発射し、DM級の転倒を狙った。そして今度は狙い違わず、DM級の進攻上の地面に直撃した。土煙が舞い上がり、DM級の姿が隠されたがその向こうとは別の方向からDM級が姿を現した。
〈クッ!〉
また外した!とユイが内心で吐き捨てている内、2機のDM級はユイの射角から遂に外れてしまった。左右のDM級は陣形の側面から一直線にヨナ達の方へと向かってくる。ヨナ達は未だにミサイルの迎撃を続けているのを目撃したシンが、一度下がれ!と叫ぼうとした時だった―――
〈ルナ、しっかり合わせろよ!〉
〈言われなくっても!〉
ヨナ達のレーダーが後方から高速で近づいてくる物体を捉えたのと同時に、通信から彼女たちが良く知った声が聞こえてきた。そして直後、陸軍部隊の上空から三条の赤い閃光が飛び込み、迫って来ていたそれぞれのDM級の足元を抉り取った。足元の地面を大きく吹き飛ばされたDM級はその場で仰向けに倒れてしまい、更に追撃とばかりに再度三条の赤い閃光が同じ場所に直撃、身動きの取れなかったDM級に止めを刺した。
「今の攻撃……まさか!?」
ヨナが思わず振り向いて声を上げる。そしてヨナ達の元に2人の少女が降り立った。
〈随分出遅れたけど、間に合ったみたいだ〉
〈はぁ…いきなり実戦に出すなんて、滅茶苦茶よ、もうっ〉
それは白と黒、そして緑を基調としたカラーリングとなった装甲服の背面に一対の大型ビーム砲と三角形のスラスターを有した「ブラストシルエット」を装着したアスカと、ZW級と瓜二つではあるが全体が赤色になっている右肩に1本角のスパイクショルダー、左肩には3つのスパイクを有するシールドを備えた装甲服に、その背面には円筒状のエネルギータンクを左側に備え、長大なビーム砲「M1500オルトロス 高エネルギー長射程ビーム砲」を右脇下から展開し右手で握った赤い髪の少女、ルナだった。
アスカちゃん!
ヨナは嬉しさのあまり、アスカの名前を大声で叫んでしまっていた。
続く