機動戦士ガンダムこれくしょん   作:黒瀬夜明 リベイク

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EP31 ヨナ隊の戦い

時刻が21時を過ぎた時、ニューヤーク基地の外周に2つの人影が動いていた。2つの影は辺りを窺うように、周囲を見回している。すると2つの人影は基地の外周からサッと飛び出し、建物の影に飛び込んだ。

「ふぅ、なんとかここまでは来れたね」

夕方から基地を偵察し、黒色機動群が集まりにくい場所なのだろう、ニューヤーク基地の北東部から潜入を果たした2つの人影の内の1つ、ヨナがホッと胸を撫で下ろした。

「でもここからが本番だ。気を抜かずに行くぞ、ヨナ?」

傍らにいるもう1つの人影は、ソードシルエットを装着したアスカだ。ソードシルエットを装着した後にはアスカの装甲服のVPS装甲が鮮やかな赤を基調としたものに変わる。それによって敵に発見される可能性を少しでも下げるため、今は装甲を展開していない鉄灰色になっている。アスカの言葉にヨナは大きく頷いてみせた。そして闇夜に紛れながら、また別の方向へと走っていく。やがてしばらく走り、基地の北部外周近くまで着た時だった。遠くの建物の影から2機のTER級通常型が姿を見せた。ヨナとアスカはサッと近くにあった物陰に隠れた。

「目標を視認。アスカちゃん…」

「うん。前の奴は私が、ヨナは後ろの奴」

「了解」

アスカとヨナが顔を見合わせ合って頷き合うと、アスカは背中に背負ったエクスカリバー レーザー対艦刀*1を引き抜き、その内の1本をヨナに手渡した。そしてVPS装甲を起動させ、装甲服を鮮やかな赤色へと変える。

「ここからは時間との勝負だよ。準備は良い?」

「いつでも!」

ヨナの言葉にアスカは力強く答えた。そしてヨナは、後方で待機しているルナに向かって通信で呼びかけた。

「ルナちゃん」

〈…いつでもどうぞ〉

「了解……3、2、1、ゴー!」

掛け声と共に、ヨナとアスカは同時に別方向へ駆け出した。そしてその2秒後、遠く離れた高台から一条の赤い閃光が放たれた。ルナのオルトロスから放たれたビームは、真っ直ぐにニューヤーク基地西側で警備を行っていたSD級の腹部に吸い込まれた。オルトロスのビームがSD級の腹部を貫通すると、SD級はバランスを崩すように仰向けに倒れ込み、その場で大爆発を起こした。その爆発に気づいた他の黒色機動群ではあったが、残された5機のSD級とTER級通常型は、何処から攻撃が来たのかまだ把握できていない様子で頭部を右往左往させている。そんな時、基地北部で警戒をしていたTER級通常型の目の前にアスカが飛び出してきた。

〈おっと、先に飛び出したのは私だったみたいだ〉

2機のTER級通常型は右腕部に装着された巨砲をアスカに向けたが、その直後、後ろにいたTER級通常型の動きが止まった。それに気づいたのか、前にいたTER級通常型が振り向こうとした。が、その瞬間を逃すアスカではなかった。

〈もらった!〉

TER級通常型に向かって飛びかかったアスカの手に握られたエクスカリバーが、TER級通常型の胸部に突き立てられた。アスカは同時にスラスターを噴かして追い打ちをかけた。エクスカリバーがTER級通常型の胸部に鍔の部分まで突き刺さると、TER級通常型は支えを失った棒のように倒れた。そして背後からうつ伏せになるようにして倒れてきたもう1機のTER級通常型と折り重なるように倒れると、やがて2機とも盛大な爆発を起こした。その直後には、再びルナがオルトロスを放ち、もう1機のSD級を仕留めていた。基地の南の方角で起こった爆発の光がその事を証明しているように赤々と燃えている。そしてこの時になって残っていたSD級とTER級通常型は、MS娘たちの侵入を許したことに気づいたようで、北部方面に向かって移動を開始した。すると、爆炎の中からヨナが飛び出してくると、アスカの隣に降り立った。

「こっちに気づいたみたいだね」

〈まあでも、SD級とTER級通常型が1機ずつなら負ける道理なんか無いけど〉

「だね!行こう、アスカちゃん!」

〈了解!〉

ヨナは地面を強く蹴ると、スラスターを噴かしてSD級とTER級通常型に向かっていく。上空では、フォースシルエットを呼び出したアスカが、ソードシルエットをパージしている最中だった。

「やらせないよ!」

そんな無防備状態のアスカを援護するべく、ヨナは脚部裏側のバーニアスラスターを噴かしてハイジャンプし、眼下のSD級に向けてビームライフルを放った。桃色のビームが銃口から放たれると、それらはSD級の周囲に弾着し、その内の1発がSD級のつま先に命中した。足元で起こった小さな爆発によってSD級はバランスを崩してしまった。ヨナが周囲に目を向けると、足が遅いTER級通常型はまだ自分たちを射程内の捉えてられていないのか、こちらに向かって来ているだけだ。

「今がチャンスだ!」

ヨナはそう叫ぶと、スラスターの噴射を止めた。山なりの軌道を描きながらSD級に向かって落下していくヨナは空いている左手を腰裏に回し、ビームサーベルを抜いた。

「これでもくらえ!」

そしてそれを左上段に構えると、落下の勢いを乗せたままビームサーベルを真っ直ぐ振り下ろした。ヨナが放った縦斬りはSD級の右腕を切り落とした。しかしこれだけでは撃破するには至らない。着地と同時にヨナはその場から後ろへ飛び退いた。

「腹部を狙ったつもりだったのに!クソォ…」

〈でぇーい!〉

だがその時、上空からSD級に向かって行ったアスカが、SD級の懐に飛び込むと右手に握ったヴァジュラビームサーベルを一閃。ビームの刃がSD級の腹部を横方向に深々と抉り取った。アスカはそのまま飛び去ったが、すぐにヨナに呼び掛けた。

〈ヨナ!〉

「っ!わかった!」

ヨナはアスカの呼びかけに応え、着地した瞬間、ガラ空きとなったSD級の腹部目掛けてビームライフルを連射した。発射された全弾がSD級の腹部に命中すると、それは爆発を起こしSD級はその場に仰向けに倒れ込んで爆発した。

 

あと1機!

 

ヨナがそう叫んだ時、再び高台からルナのオルトロスが火を噴いた。放たれた赤いビームはこちらへ向かって来ていた、最後のTER級通常型の腹部に命中したらしく。上半身と下半身が両断されたTER級通常型はそのまま爆散し炎に包まれた。

「あっ!」

余りに唐突に起こった出来事だった為、ヨナは思わず驚きの声を上げた。すると、通信機の向こう側から、ルナの弾んだ声が聞こえてきた。

〈やったわ!全弾命中ぅ!〉

ヨナはゆっくりと着地の体勢から状態を起こすと、周囲をキョロキョロと見回した。すると上空にいるアスカから通信が入った。

〈周辺クリア。基地の制圧完了だ、ヨナ〉

そう言ったアスカは、ゆっくりとヨナの隣に降り立ちフォースシルエットの主翼を折り畳んだ。アスカの深紅の瞳が、優しさを含んで真っ直ぐにヨナを見つめてきた。

〈お疲れ。ヨナの立てた作戦、成功だったね〉

アスカの少しだけ嬉しそうな声と小さな微笑みに、ヨナはつい照れ臭くなったのか顔を赤くして左手で頭を掻いていた。

「あ、ありがとうアスカちゃん」

爆炎によって照らされるニューヤーク基地で、ヨナはボソリと、恥ずかしそうに呟いた。

 

続く

*1
以降、「エクスカリバー」と表記

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