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日が傾き始め、太陽がオレンジ色に染まりそうになろうとしている時間、一人の小学生が学校の中を駆けていた。
「はぁ~、うっかりしてた。全部入れたと思ってたのに」
そう呟きながら黒髪の少年、織斑一夏は学校の階段を上がっていく。彼が向かっているのは自身の教室で、宿題をするのに必要な教科書を忘れてしまいそれを取りに向かっていたのだ。
そして階段を上り終えた一夏は自身の教室へ向かおうとした瞬間
「―――きなのよ」
「ん?」
自身の教室に向かう途中にある教室から声が聞こえ、一夏は何事だと思い中を覗く。其処には3人の少女が1人の白髪の少女を囲って罵っていた。
「何時も霧島君に気に掛けてもらって、気に喰わないのよ」
「そんなの、知らないよ。私はそっとしてほしいのに勝手に向こうからくるんだから」
「なによその言い方。本当生意気!」
そう言うと少女の前に居た女性生徒が2人の生徒に目で合図をすると、2人は白髪の少女の腕を掴んで拘束する。
「な、何するの!」
「アンタのその髪を綺麗に切ってあげるのよ」
そう言い少女は何処からかハサミを取り出す。そして少女の髪を切ろうと近付こうとした瞬間
「おい、何やってんだお前等!」
と一夏が怒鳴りながら教室に入って来た。少女達は驚いた表情を浮かべている中、一夏はすぐに白髪の少女まで行き3人を睨む。
「お前等虐めなんかして楽しいのかよ?」
そう言った後白髪の少女に顔を向ける。
「荷物持って早くここから離れろ。こいつらは俺が見張っておくから」
「……えっと、あ、ありがとう」
そう言い少女はカバンに机の上や床に散乱したノートや筆箱を回収して入れて行く。
「お前等がこの子の事イジメてたこと先生に言いつけるからな」
そう言うと少女を取り押さえていた2人は狼狽えだし、前に居た少女はヒステリックになって叫びだす。
「こ、こんな事で先生に言いつけなくてもいいじゃない! ただの悪ふざけで、本気でやる気じゃなかっただし!」
「悪ふざけでも流石にやり過ぎだろうが!」
「う、五月蠅いわね!」
そう叫んだ少女はついカッとなって右手でビンタしようと振り上げた。だが彼女の右手にはハサミがあった。
「危ない!」
そう叫び声をした後白髪の少女が一夏を庇おうと前に出ようとする。一夏は前に出ようとする少女を庇おうと押し退けのけたら右頬にハサミが当たってしまった。
スパッと切れた一夏の右頬から血が流れ、しかもその量は多くびちゃびちゃと床に血が流れ落ちた。
「きゃぁあああっぁぁぁあ!!」
と白髪の少女が叫ぶ。すると廊下から走ってくる音が鳴り響きそして
「雪奈ちゃん!」
と叫んで黒髪のショートヘアーの少女が入って来た。その後に
「何をしているんだお前達!」
と教師も入って来た。混乱する状況の中、白髪の少女は慌ててポケットに入っているハンカチで一夏の出血している箇所を押さえる。
「だ、だいじょう「喋っちゃ駄目! ち、血が出ちゃうから!」」
そう叫んびながらも一夏の頬を押さえ続ける少女。だがハンカチは直ぐに真っ赤に染まり、抑えている指の間から血が漏れ出してきた。
すると
「雪奈ちゃん、このハンカチも使って!」
そう言い黒髪のショートの少女もポケットからハンカチを差し出す。雪奈と呼ばれた白髪の少女は慌ててそれを受け取り同じく赤く染まったハンカチの上から重ねる様にして抑えた。
そうこうしている間に救急車が到着し、一夏と雪奈と黒髪の少女、そして付き添いで女性教師が乗り込み発車した。
暫くして病院に到着すると、一夏は担架に乗せられたまま緊急治療室に運ばれていき、雪奈と黒髪の少女と教師は治療室前のベンチで待たされた。
「雪奈ちゃん、教室で一体何があったの?」
「…雪奈ちゃん」
女性教師と黒髪の少女が優しくそう聞くと、雪奈はその場であった出来事を震える唇で伝えた。
女性教師は、現場の状況を聞いて学校に伝えに電話してくるから此処に居てね。と言いその場を離れて行く。
雪奈は教室での光景を思い出したのか体をブルブルと震わせ、隣に座っていた少女はそっと雪奈を抱きしめ優しく肩を撫でて落ち着かせた。
「大丈夫、お姉ちゃんが傍に居るから。怪我した子も大丈夫だから」
「うぅう…、うん」
涙を流しながら震える雪奈に、少女は大丈夫と声を掛けながら落ち着かせ続けた。すると
「雪奈! 春奈!」
「無事か雪奈ッ?」
と黒髪で後ろで髪を纏めた着物女性と同じく黒髪のスーツ姿の男性が駆け足で二人の元にやって来た。
「お父さん、お母さん」
「あぁ雪奈。怪我とかしてない?」
「う、うん。でも、私を…助けてくれた子が…」
「大丈夫。此処のお医者さんは腕が良いから、きっと大丈夫よ」
そう母親が言い雪奈を落ち着かせる。
「春奈、一体何があったのか分かるか?」
「うん。雪奈ちゃんから聞いた話だと、クラスメイトの女子3人が嫉妬で雪奈ちゃんに突っかかって来たらしいの。そしたらいきなり腕とか掴まれて動けなくされてもう1人がハサミで髪を切って来ようとしたらしいの。その時運び込まれた男の子が助けに入ってくれたらしいの。早く逃げる様に言われてそれで逃げようとした時にハサミを持った女子が暴れてハサミを振り下ろしてきたらしいの。それで雪奈ちゃん、男の子を守ろうと前に出ようとしたんだけど、その前に男の子が雪奈ちゃんを庇おうと前に出たらしい。それで今の状態に…」
「そうか。その男の子にはしっかりとお礼をしないといけないな…」
黒髪のショートの女子、春奈はそう父親に伝えていると治療室の扉から医師とナース、そしてベッドに寝かされた一夏が出てきた。
出てきた一団に気付いた父親たちは医師の元に駆け寄る。
「先生、彼の容体は?」
「大丈夫です。頬の傷は深く入っておりましたが、生活には支障をきたさないはずです。ですが傷跡は残るでしょう」
「そうですか。娘の命を救ってくれた子なんで無事で良かったです」
「そうですか。…では、私はこれで」
そう言い医師は去っていく。その際母親は医師の顔に若干違和感を覚えた。
「あの先生、何か言いたげな表情だったわね」
「そうのか?」
「えぇ。…取り敢えず、今日はもう帰りましょう。明日なら彼も起きているかもしれないし」
「「…うん」」
そうして4人は後ろ髪を引かれつつも病院を後にした。
翌日、学校は臨時休校となった為雪奈と春奈は午前中に一夏のお見舞いに行こうと思っていたが、両親が仕事の関係で行けず午後から行くこととなった。
そして午後、雪奈と春奈そして両親は車に乗り病院へと向かった。
病院に到着すると、4人は事前に聞いていた一夏の入院している部屋へと向かう。
「彼、起きていると良いわね、雪奈ちゃん」
「…うん」
「さてもうすぐ彼の部屋『全くこの馬鹿者が』ん?」
もうすぐ彼の部屋と思った所で部屋の中から女性の声が聞こえ、4人は誰だろうと疑問府を浮かべる。
『でも、いじめられているのを『見て見ぬふりをすればよかっただろうが! そんな怪我をして! 家計が大変なのを分かっているだろ!』け、けど』
『けどもあるか馬鹿者が!』
中から少年の声と女性の罵声の様な声が響き続けた。それを聞いた雪奈と春奈の両親は顔をしかめる。
「一体何を言っているんだ?」
「全くです。しかも見捨てろだなんて、何てことを…」
そう言い聞くに堪えなくなったのか、2人は扉を思いっきり開ける。
開けると其処には黒髪の女性とベッドの上で上体を起こした一夏が居た。
「っ! だ、誰だお前等は!」
「その子が救ってくれた娘の親だ」
「貴女、さっきの言葉一体何なんですか?」
「なんだと?」
「いじめられているのを見て見ぬふりをしろなんて、なんてふざけた事を言っているの!」
「教師を呼びに行けばいいものを、コイツはカッコつけたいがために突っ込んだんだ! それを叱っていただけだ!」
女性がそう叫ぶと、雪奈が怯えながらも凛とした顔で口を開く。
「か、彼は私が本当に危ないと思って出て来てくれたんです!」
「こいつの事何も知らないくせしてほざくな!」
そう叫ぶ女性にひるみそうになる雪奈を春奈が支える。
「私の妹を怒鳴らないでください! 貴女が可笑しなことを言っているのが悪いんでしょ」
「生意気な小娘が!」
そう叫び女性が一歩前に出ようとした瞬間扉が開き医師とナースが入って来た。
「一体何を騒いでいるんですか!」
「織斑さん、すぐに此処から出て行きなさい」
「なっ! 私はコイツの姉だぞ!」
「姉であろうと、関係ありません! さっさと出て行きなさい! 出て行かないというなら警備を呼びますよ!」
そう言われチッ!と舌打ちを放ちそのままずかずかと部屋から出て行った。ナースは出て行った女性が本当に帰ったか確認するべく廊下へと出て行き、残った医師ははぁ。と重いため息を吐く。すると男性が申し訳なさそうな表情で口を開く。
「……申し訳ない先生、大騒ぎしてしまい」
「いえ、大丈夫ですよ」
そう言い医師は一夏の傍へと向かう。
「すいません先生。騒がしくしてしまい」
「いやいや、君は謝らなくても良いよ。悪いのはお姉さんなんだから」
すると一夏は先程入って来た4人に顔を向ける。
「あの、所で貴方方は?」
「あぁ、自己紹介が遅れて申し訳ない。私は君が助けてくれた娘の父親で、桜木冬真と言う。此方は妻の」
「秋江と言います」
「姉の春奈です」
「ど、どうも。織斑一夏と言います」
そう自己紹介をしていると、雪奈がそっと一夏のベッドの傍に近寄る。
「あの、私、雪奈って言います。助けてくれて、ありがとう。あと、危険な目に遭わせてごめんなさい」
そう言い頭を下げようとする雪奈を一夏がそっと肩に手を置いて止めさせる。
「うぅん。あれは僕が自分の意思でやった事だから気にしないで」
「で、でも「ほら、女の子は顔が大事って聞くしさ。僕は男の子だから顔に傷があってもへっちゃらだよ。むしろかっこいいって思ってるから」けど…」
雪奈が謝ろうとするのを、一夏はあれこれ言って阻止するといった事が暫し続き、それを見かねた春奈が
「雪奈ちゃん、彼もこう言ってるんだから素直に受け入れよ」
そう言われ雪奈はまだ納得できない思いであったが、コクリと頷き受け入れた。
すると今度は冬真が口を開いた。
「所でご両親は何時頃来るかな? しっかりとご両親に今回の事を謝りたいのだけど」
「…うちには両親が居なくて、ずっと姉と二人で暮らしているんです」
「え、ご両親が居ない? 親戚もかい?」
「はい」
そう言い俯く一夏。
「もし差し支えが無ければ、お家の事聞いてもいい?」
秋江が優しくそう聞くと、一夏はぽつりぽつりと自身の家庭の事情を話し始めた。幼少の頃から親がいない事、強く生きられるようにする為にと無理強いさせるように剣道をさせられている事などを。
一夏の説明に冬真達は悲しそうな表情を浮かべていた。そんな中医師はというと
「……やはりあの傷は」
と小さく零した。秋江はその言葉を聞き逃さず、すぐに医者に問う。
「先生、あの傷とは何ですか?」
そう聞かれた医師は口を閉ざす。しばしの沈黙が流れた後そっと口を開いた。
「分かりました、お話しします」
そう言い医師は一夏の傍に近寄る。
「一夏君、腕を見てもいいかい?」
「……はい」
一夏から許可を貰うと、医師は一夏の腕を取り服の袖を捲る。腕には細長い跡が残っており古い物だったり新しいものが付いていた。
「せ、先生これって…」
「恐らく彼が言っていた剣道によるものだと思います」
「ですがこれほどまでにはっきりつく様なことは…」
「恐らく力強く叩いた為だと思います」
「なんてひどい事を…」
そう零し悲しそうな表情を浮かべる秋江。冬真も出て行った一夏の姉に対し酷い怒りを覚えた。
一夏の傷に雪奈と春奈も悲しそうな表情を浮かべていた。
その後医師は一夏の怪我の状態を診察後退出していき、冬真達も部屋から退出し病院を後にした。
その夜、桜木家のリビングでは冬真と秋江がそれぞれソファに座りながら今日の事を話し合っていた。
「今日のあの子を見てどう思った秋江?」
「……率直な言葉でいいかしら?」
「あぁ、構わない」
「正直に言って信じられないわ。親が居ないからと姉一人であの子を育てたのは凄いと思うわ。でも、だからと言ってその弟に対して強くなる為だと言って無理矢理剣道をやらせて、その上防具無しなんて虐待以外何物でもないわ」
「そうだな、私もそう思う。それで思ったんだ」
「何をです?」
「あの子を、私達で引き取れないかとな」
「っ!?」
冬真の言葉に秋江は驚いた表情を浮かべ冬真を見つめる。
「それは…」
「勿論色々と問題があるのは分かっている。だが、娘と同じ年で、恩人でもある子が虐待まがいの事をされているのを黙って見ておくなど…!」
やるせない気持ちを吐き出すように話す冬真に、秋江は俯き暫しの沈黙が流れた。
どれ程の沈黙が流れたのか。最初に口を開いたのは秋江だった。
「…確かに引き取ろうと思うと色々と問題があります。私たちの子供たちにこの事をどう説明するか、そしてあの子の姉をどう説得するとか。あげればキリがないかもしれません。ですが、私も貴方と同じ気持ちです。あの子を救いたい、なら取るべき行動は一つしかありません。私達、これまでも多くの問題を乗り越えてきたでしょ?」
真剣な表情で伝える秋江に冬真はあぁ。と力強く返事を返した。
事件から数日が経ったある日、豪邸に一台の車が入り玄関前で停まった。運転席にいた執事服の初老の男性は素早く下りて後部座席の扉を開ける。
後部座席からは秋江と冬真、そして一夏が降りてきた。
そう、あれから一夏は姉の元から離され冬真達桜木家に引き取られたのだ。
勿論色々な壁が立ちはだかり困難を極めたが、2人は何とか一夏を引き取ることが出来たのだ。
後部座席から降りてきた3人。一夏は大きな家に驚いた表情を浮かべながら見上げていた。
「ほら一夏君、こっちが玄関よ」
秋江にそう呼ばれ一夏はその後に続く。冬真が扉を開けて2人が中へと入ると一夏もその後に続く。
「お、お邪魔します」
「あら、一夏君。お邪魔しますじゃないわよ」
「そうだ。此処はもう君の帰るべき家なんだ」
そう言われ一夏は今まで感じた事が無いような胸の暖かさを感じ、そしてずっと抱いていた思いを載せる様に口を開く。
「ただいま!」
「「「「おかえりなさい、一夏君」」」」
そう言い冬真と秋江、そして玄関で出迎えて待っていた雪奈と春奈が笑顔でそう答えた。
上空から一夏が桜木家の家に入っていく姿をモニター越しで見ていた一人の女性。
「良かった、良かった。これでいっくんは無事だ」
そう言いながら女性は携帯を取り出し何処かに掛けた。
「やぁやぁ! ご機嫌いかがぁ?」
『―――!? ―――‼』
「えぇ~。自分が悪いのに他人のせいにするのどうかと思うよぉ」
『――!?』
「はいはい、自分は悪くないって思ってるならそう思っておけばぁ。それと――」
一旦区切った女性は先程までのおちゃらけた雰囲気から殺意を混じらせた声質へと変える。
「いっくんはもうあの家の子供となった。つまりお前とはもう元姉弟で、同じDNAの血が流れている関係だけ。あの子にはもう近付くなよ? これは警告だ。破ったらどうなるか、お前なら分かるだろ? じゃあね」
そう言い女性は携帯の通話を切りポケットに仕舞い笑みを浮かべる。
「ふふん。いっくんはもうあの女の元から切り離された。ならこの天才博士、篠ノ之束さんもいっくんのご家族の会社にお邪魔しますかぁ!」
そう言いながら手に履歴書を持ってスキップしながら部屋から出て行った。
次回予告
怪我が治った一夏は雪奈と春奈の2人と共に学校へと向かう。
一夏と同じクラスに異動となった雪奈は一夏とその友人達と共に楽しい学校生活を始める。
次回
久しぶりの登校
次回投稿してほしい小説(詳細は活動報告の「次回作一覧」を見てください)
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①IS×ウォーシップガンナー2
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②IS×メタルギア
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③IS×オリジナルストーリー①
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④IS×オリジナルストーリー②
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⑤IS×クロスアンジュ
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⑥IS×タイムクライシス
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⑦IS×オリジナルストーリー③
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⑧IS×人狼 JIN-ROH
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⑨IS×東方project
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⑩IS×オリストーリー④
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⑪IS×R-type
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⑫俺ガイル×IS