夏に恋する春と雪   作:のんびり日和

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6話

一夏達が入学して日が経ったある日の事。

その日、一夏達は所属している生徒会に何時も通り仕事をしに向かっていた。

 

「さてと、今日は何かあったかな?」

 

「確か昨日書き上げた資料の見直しと部費の見直しだったはず」

 

「なるほど。そうなると今日も大変だな」

 

そう言いながら一夏と雪奈は生徒会室へと向かった。

そして生徒会室前に到着し、中へと入る。

 

「お疲れ様です。……あれ、会長は?」

 

「おぉ、一夏君と雪奈さんか。会長だったらまだ来てないぞ」

 

「そうなんですか。何処に行ったんですか?」

 

「なんかラブレターを貰ったとかで、それの返事をしに行ったらしいぞ」

 

加奈の説明に一夏と雪奈は驚いた表情を浮かべた。

 

「え? 春奈お姉ちゃんにラブレターですか?」

 

「おう。あぁ見えて会長って男女問わずモテるからな」

 

「へぇ、そうだったんですか」

 

「まぁ1年で生徒会に参加し、2年に上がったら即生徒会長に名乗りを上げたから」

 

「1年の頃からですか?」

 

「あぁ。あの頃の会長は前の会長の元で色々と手伝ったりと裏方で頑張っていたからな。その頑張りを身近で見ていた前の会長と教師達からの推薦で生徒会長になられたんだ」

 

「「へぇ~」」

 

健吾の説明に一夏と雪奈は声を揃えながら言い、姉の凄さに改めて驚かされていた。

すると一夏はふとある事を聞こうと加奈に声を掛ける。

 

「望月先輩、姉にラブレターを送った人って分かりますか?」

 

「ん~。それはアタシにも分からないかな。誰からって聞いても教えてくれなかったし」

 

「そうですか「でも」はい?」

 

「恐らくだけど、久瀬六郎だろうな」

 

「誰です、その久瀬っていうは?」

 

雪奈は聞いた事が無い人の名を聞き首を傾げつつ加奈に聞く。

 

「アタシたちと同じ2年で、顔はまぁイケメンと言う奴はいるんじゃないか?っていうような顔立ちの奴で、確か健吾と同じ剣道部じゃなかったか?」

 

「いたな、そんな奴」

 

と、過去形で話す健吾。

 

「いたなっていう事は…」

 

「あぁ、辞めたんだ」

 

「理由を聞いてもいいですか?」

 

「上下関係を無視するような奴でな。誰に対しても挑発的で、和を乱していたんだ。で、ある日突然俺に剣道の勝負を挑んできたんだ」

 

「それで、結果は?」

 

「奴の惨敗だ。一度も俺に打ち込むことが出来ずにだ。で、それから来なくなったんだ」

 

「……その人って、なんでまた真島先輩に挑んだんでしょう?」

 

「さぁな。大方自分の方が強いと自意識過剰していたんだろ」

 

なるほど。と返す雪奈。そんな中、一夏はある事を思い返していた。

それはほんの数時間前、一夏達が教室で弾達と談笑していた時の事だった。

鈴がある事を思い出したのか少し真剣な表情を浮かべる。

 

「そうだ、雪奈」

 

「なに、鈴ちゃん」

 

「実は別の中学に行った友達から昨日メールが来てね。なんか最近メールとか手紙で女子を呼び出して襲おうとするグループが居るらしいっていう内容だった」

 

「そ、そんな酷い事をしてくるグループがあるんですか?」

 

「うん、あくまでも噂らしいだけどね。でも、その友達の友達の下駄箱に知らない人からのラブレターが入ってたらしくてね。で、その子も噂を知っていたらしいから怖くて柔道部に所属してる男友達と一緒にその待ち合わせに行ったらしいの。で、男友達に隠れて見守ってもらってたら、ラブレターを出したと思う人が来たの。でその友達は告白を断ったらしいの。相手は諦められないのか、色々とその子のどこを好きになったのか言って来たらしいの。そしたら隠れていた男友達が数人の不審な人影がガサガサと近づく音が聞こえてきたらしいの。で、明らかにその現場に向かって歩いて来てるから、万が一その噂のグループだと自分一人では難しいかもしれないと思った男友達が、機転を利かせてある男性教師の物まねで『其処で何をしているんだ?』って言ったらしいの。そしたら近付いて来てたグループは足早にその場を去って、さっきまで色々と言って来た男子もパッと焦る様にその場から離れて行ったらしいのよ」

 

「怪しすぎますね、その人達」

 

「でしょ。まぁ他所の中学だから問題無いと思うけど、あんまり過信できないじゃない? だから雪奈も知らない人からラブレターとかもらっても一人で行っちゃ駄目よ」

 

「行かないよ。それに、ラブレターを貰うなら……」

 

と言葉を詰まらせチラチラと一夏をチラ見する雪奈。

 

「ん? 雪奈、俺の顔に何かついてるか?」

 

「べ、別に、何にもついてない」

 

「? そうか」

 

と首を傾げる一夏。その光景に鈴と弾は(・∀・)ニヤニヤと笑みを浮かべていたのだった。

 

 

と、そんな話をしていたのを片耳で聞いていた一夏は思い出していたのだ。

一夏は何だか嫌の予感がするな。と思い

 

「真島先輩、ちょっとお茶を買いに行ってきてもいいですか?」

 

「ん? 別に構わんが、遅くなるなよ」

 

「はい、直ぐに戻ります」

 

そう言い一夏は生徒会室から駆け足で出て行った。出て行った一夏に雪奈は不安を覚えた。

なにか、悪い事が起きようとしているのではないかと。

 

(どうしたんだろう。一夏があんな焦って出て行くなんて。もしかしてお姉ちゃんのとこかな? でもラブレターの返事を言いに行っただけで直ぐに……もしかして)

 

其処で雪奈は鈴が言っていたあの話を思い出し、まさか。と大きな不安に襲われた。

雪奈は自分も行って確認すべきかと思ったが、護身術は得意だが姉や一夏達と違い体が少し弱かった雪奈は体力が他の人より少なかった。その為行ってももしもの場合は足手まといになると考えつく。そして必死に考えた結果雪奈は

 

「あの望月先輩、真島先輩」

 

「ん、なんだ雪奈?」

 

「どうした雪奈さん?」

 

2人に頼ることにするのだった。

 

 

その頃一夏は人が余り近付かなさそうな場所は何処だと思いながら校内を走っていた。すると

 

「―――!? ―――!」

 

「――!」

 

「―――――!」

 

と複数人居るのか男性と女性の声が聞こえ、一夏は女性の声を聴いた瞬間声がした方に向かって走り出した。

すると男二人に取り押さえられた春奈とそれを取り囲む3人の男達。その内の一人が春奈に近付こうとているが見え、一夏は一気に走り出し春奈に近付こうとした男の側頭部に向かって思いっ切り飛び蹴りをかます。

蹴りを入れられた男はそのまま吹き飛び、土煙を立てながら転がって行った。

突如現れた一夏に男達は茫然と言った表情を浮かべていた。

 

時刻はほんの少し戻って一夏が生徒会室から出て探しに向かったくらいの事だ。春奈は手紙を出した人物が待っている校舎裏へと向かうと一人の男子生徒が居た。

 

「この手紙書いたの久瀬君?」

 

「おう、そうだ」

 

そう言い笑みを浮かべる久瀬。その笑みに春奈は

 

(うわぁ~、気持ち悪い笑みぃ。本当にどいつもこいつも外面だけしか見て来ないわね)

 

そう気持悪と思いながら返事を返す。

 

「悪いんだけど、私今恋愛とかそういうのはするつもりはないの。ごめんね」

 

そう言いその場を離れようとする。すると自分来た方から男子2人そして久瀬の背後からも2人の男子がやって来た。

そして2人を囲む男達はニヤニヤと汚い笑みを浮かべていた。

 

「これは一体何の真似?」

 

「いや~、素直に応じてくれるなら別に変な事するつもりは無かったんだが、断られたからこうするしかなくてね」

 

と言い首で合図を出す久瀬。春奈の背後に居た2人は春奈を捕まえようとするが、護身術を習っていた春奈はそれを華麗に躱して倒す。そしてもう1人も掴もうとしてくるも、直ぐに投げ飛ばした。

 

「チッ、何してんだよ。おい行け」

 

そう言い残りの2人も加勢させる。加勢してきた2人も何とか護身術で倒していくも、直ぐに腕を掴まれ2人に取り押さえれてしまった。

 

「放しなさいよ!」

 

「はいはい、ちょっと静かにしていてくださいよ。すぐに気持ち良くなって俺達無しじゃいられなくなりますから」

 

そう下劣めいた顔を浮かべながら近付く久瀬。

 

(いや! 助けて一夏君!)

 

近付く久瀬に涙を浮かべ一夏に助けてと懇願する春奈。そして怖くなって目を閉じた時、突然

 

「ぐげぇっ!!???!」

 

と久瀬の情けない声とズザザザ!と転がっていく音が鳴り響き、春奈は一体何がと思いながらそっと目を開けると其処には頬に傷を持った男子が立っていた。

 

「い、一夏、君?」

 

自身の家族である一夏が立っていた事に驚きながらもそう声を掛ける春奈。

 

久瀬を蹴り飛ばした一夏に春奈を掴んでいた男の一人が襲い掛かる。

 

「カッコつけが。無様に「うるせぇ」……は? ぐべぇっ!!???」

 

一夏に殴り掛かった男。だが一夏は背後からきた攻撃が見えているのか、さっと攻撃を避けると、男の後頭部を鷲掴みし、そして足払いをしてそのまま地面に向かって叩き潰した。

顔面を地面に叩きつけられた男はピクピクと痙攣し、男の顔付近の地面には血が流れ出てきた。

 

「て、てめぇ何しやが「おせぇよ」ごはぁ??!!!!」

 

春奈を掴んでいたもう1人も一夏に殴り掛かって来たが、一夏は殴って来た腕を掴み男を引き寄せそのままアッパーを喰らわせる。男の口から歯が2,3本折れたのか飛び出てきて、男はそのまま伸びてしまった。

すると一際体格の大きな男が一夏に襲い掛かって来た。

 

「てめぇなんざこの洞島隆吾様が叩き潰してやるよ」

 

そう名乗る洞島。

 

「こいつは柔道黒帯所持者だ。てめぇなんざ直ぐに殺されちまうぜ!」

 

もう一人いた男が息巻いてそう言って来た。一夏は襲い掛かってくる隆吾の攻撃を紙一重で避けながら後退する。

 

「はっははは! どうした? 手も出せないか? もう逃げられないぜ!」

 

洞島は壁まで追い詰められた一夏にそう告げ、一夏を殺せそうなほどの勢いある拳を繰り出してきた。だが一夏はそれに対して焦ることなく掌底の構えを取り、そして一気に洞島との間合いを詰める。そして洞島の丁度みぞおち付近に向かって勢いよく掌底を叩き込んだ。

 

「……かはっ」

 

掌底を喰らった洞島はグラッと体の力が一気に抜け倒れる。そして口から吐しゃ物を吐き出す。辺りに胃酸の独特な匂いが立ち込める中、もう一人の男は洞島が倒された事に心底驚き、そして次は自分の番だとさとり顔を真っ青に染める。

 

「た、頼む見逃してくれ! 俺は、そいつらに手伝うよう、脅されて…」

 

「さっきまでゲスイ笑み浮かべながら、其処で倒れている男の事説明してただろうが」

 

そうドスの利いた声で返し、一歩一歩男に近付く一夏。

近付く一夏に怖気ずいた男は後ずさるも小石に躓き、尻もちをついてしまう。

 

「お、お願いだぁ! 許してくれぇ! もう、彼女に近付いたりこんな事しないから、た、頼む!」

 

そう懇願するも近付く一夏。凄まじい殺気を放ちつつ近付く一夏に男は完全にビビってしまったのか、男の股間辺りから液体が漏れでてびちょびちょに濡らしてしまう。

すると其処に

 

「おい、其処までだ!」

 

そう叫ぶ男の声。春奈は声がした方に顔を向けると、真島と望月。そして数人の教師達がやって来た。

 

「一夏、其処まででいい! それ以上やればお前の立場が悪くなるぞ!」

 

真島がそう言い一夏を説得する。男を睨みつけていた一夏ははぁー。と息を吐き

 

「分かりました」

 

そう言い殺気を引っ込めた。

 

(かなり凄いプレッシャーを感じてきたが、まさかこいつが出していたとはな。それにしても…)

 

真島は一夏が倒した男達の中に倒れていた洞島に顔を向ける。

 

(まさか黒帯所持者の洞島を倒すとは、一体どうやったんだ?)

 

洞島とは圧倒的に体格差がある一夏がどのようにして洞島を倒したんだと気にする真島。すると

 

「てめぇ、ふざけんじゃねぇぞ!」

 

そう叫ぶ声が聞こえその場にいた全員が声がした方に顔を向ける。其処には一夏に側頭部を蹴られ飛ばされていた久瀬が居た。

 

「俺の大事な顔に蹴り入れやがって。絶対にぶっ殺す!」

 

さう叫びながら久瀬はポケットからナイフを取り出してきた。

 

「おい久瀬! そいつを棄てろ!」

 

「うるせぇ! お前らみんなぶっ殺してやる!」

 

そう叫びながらナイフを持って走って来た久瀬。

 

「まずはてめぇだぁ!」

 

そう叫びながら一夏に向かってナイフを突き出す久瀬。

 

「止めてぇ!」

 

春奈が一夏が刺されると思ったのか、大声で叫ぶ。

そんな中一夏は焦ることなく突き出されたナイフを避けて突き出されたナイフ側の手首を掴む。そして右手で拳をつくり久瀬の顔面を殴る。

 

「グフッ!?」

 

殴られた事で動きが鈍る久瀬に一夏はそのまま掴んでいた腕を外側に向かって勢いよく引っ張った。引っ張られた久瀬はまともに動く事が出来ずに引き摺り倒された。

そして一夏は掴んでいた腕側の手からナイフを奪い取り、腕を捻じ曲げ拘束した。

 

「いだだだだぁあ!!!」

 

一夏が取り押さえる光景に唖然となる真島達。だがハッと我に返った真島が動く。

 

「先生達、早く久瀬を!」

 

そう叫ぶと我に返った教師達が急いで一夏に加勢しに向かう。それから暫くして教師が呼んだ警察がやって来て久瀬達はパトカーに乗せられて連れて行かれた。

そして一夏も何があったのか事情を聞くべく警察官が別のパトカーに乗せて警察署に向かった。

 

それから暫くして

 

「―――では、お姉さんが襲われそうになっていた為彼等に手を挙げたんだね?」

 

「はい、そうです」

 

一夏は警察官の質問に対し嘘偽りなく全て話した。

 

「そうか。分かった、悪いけどもうしばらく此処で待ってもらっててもいいかい?」

 

「はい」

 

話を聞き終えた警官は席から立ち上がり部屋から出てきた。すると彼の上司の人物がやって来た。

 

「彼から聞いた話は?」

 

「姉が襲われそうになってて、人を呼んでいる暇など無いくらい緊急だった為やむなく手を挙げました。だそうです」

 

「そうか。「失礼、ちょっとよろしいでしょうか?」はい、何か?」

 

警官達が話しているところに一人の人物が話しかけてきた。その人物は黒髪のキリッとした目つきのスーツ姿の女性だった。

 

「私、こう言う者です」

 

そう言って差し出された名刺には『桜木コーポレーション顧問弁護士 綾里瑠璃』と書かれていた。

 

「此方に桜木一夏さんが連れて来られたと聞いて参りましたのですが、何方でしょうか?」

 

「あぁ、此方に居られます」

 

そう言い警官の一人が会議室へと案内する。部屋に入ると一夏が椅子に座っていて、入って来た綾里に気付くと申し訳なさそうな表情を浮かべ頭を下げる。

 

「綾里さん、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません」

 

「いえいえ、迷惑など感じておりませんよ」

 

そう言い綾里は次に警官の方に顔を向ける。

 

「桜木一夏さんはこのまま連れ帰っても宜しいのですか?」

 

「そうですね。聞かないといけない事は全て聞けましたので、お帰り頂いても構いません」

 

「そうですか。では一夏さん、帰りましょう」

 

「はい」

 

そう言い席から立ち上がると一夏は警官に一礼して部屋から出て行った。

そして外に止められていた綾里の車に乗り込む。

車が発進し暫し無言が流れる車内。そして最初に口火を切ったのは一夏だった。

 

「綾里さん、本当に今日は「いえいえ、顧問弁護士としては当たり前の事をしに来ただけにですよ」そうですか。……相手に怪我させているから、お父さん達に迷惑かけちゃったな」

 

そう言い落ち込む一夏。すると綾里がある事を口にする。

 

「そのことですが、相手は訴えないそうです」

 

「え? どういう事ですか?」

 

綾里の口から出た内容に驚きの表情を浮かべる一夏。

 

「どうも彼等がこの周辺で起きてる女性暴行事件の犯人グループだという情報がマスコミなどに流れたらしいんです。おまけに彼等がやったっていう証拠付きでです。その結果マスコミは直ぐにこのことを速報ニュースで流したんです」

 

「えぇ!? 一体誰が、そんな情報を?」

 

「分かりません。それで話を戻しますが、その速報で捕まったグループの親御さん達が、桜木家に来ましてね。自分達の息子達が襲ったのが桜木家のご令嬢だと知るや否やその場で土下座して謝罪を行ったんです。それで自分達の息子が怪我したのは当然の報いなので被害届などは出すつもりはありません。とのことです」

 

「……」

 

一夏は何とも言えない表情を浮かべる中、車は桜木家に到着し一夏と綾里は車から降り家の中へと入る。そしてリビングへと入ると

 

「あ、一夏!」

 

「一夏君!」

 

ソファーに雪奈と春奈が居り、その奥には

 

「帰ってきましたね、一夏」

 

「……」

 

真剣な表情を浮かべた冬真と秋江が居た。一夏は4人の近くまで来ると、突然床に正座してそして

 

「本当にすいませんでした!」

 

と土下座をしたのだ。その姿に雪奈と春奈そして綾里が驚き、慌てて止めさせようとするも秋江が手でそれを制した。

 

「相手を怪我せずに制圧出来たにも関わらず、姉が襲われそうになっている光景を見て、我を忘れ相手に怪我を負わせてしまい、そしてそのことでお父さんやお母さんにご迷惑をお掛けして本当にすいませんでした!」

 

一夏は大声でそう言い土下座を続ける。しばしの沈黙が流れた後、

 

「一夏、顔を上げろ」

 

冬真の声が静まる部屋の中で響き、一夏はそっと顔を上げ冬真を見つめる。

 

「相手に怪我をさせた。それは確かに悪い事だ。だが一夏、お前は何のために手を挙げたんだ?」

 

「春奈姉さんを守る為です」

 

「……その言葉、嘘偽りないか?」

 

先程まで以上の眼光で一夏に問う。そのプレッシャーは傍に居る雪奈と春奈でも感じる程で若干怯えた様な様子を見せる。

それに対して一夏は真っ直ぐに冬真を見つめ

 

「はい」

 

と真剣な表情で深々と頷いた。互いに見つめ合う2人。どれ程の時間が経ったのか分からない程静寂が包まる中、フッと冬真が笑みを浮かべる。

 

「そうか、なら良い」

 

「…でも俺は相手を「相手は相当な悪者らしいじゃないか。それにナイフを隠し持っていたらしいじゃないか。そんな奴らから大事な家族を守ったんだ。誇っていい」…お父さん」

 

「そうですよ。一夏は大切な家族を守る為にやったんです。やり過ぎだと感じる方も居るかもしれませんが、自分の大切な家族を守る為なら非情にもならなければなりません。下らない事をほざいてくる奴がいたとしても無視しなさい。貴方は間違った事なんて何一つして無いんですから」

 

「お母さん。……ありがとう、ございます」

 

そう言い一夏はまた涙を流しながら深々と頭を下げた。

 

「さ、夕飯にしましょう。綾里さんもご一緒にいかが?」

 

「お邪魔しても大丈夫なんでしょうか?」

 

「えぇ。その為に沢木に頼んで夕飯を一人多めに作ってもらっているもの」

 

「そうですか。ではお邪魔致します」

 

それから時刻は進み夜。一夏は部屋で勉強をしていた。すると扉をノックする音が鳴り響く。

 

「はい、どうぞ」

 

そう声を掛けると、扉を開けて入って来たのは春奈だった。

 

「ごめんね勉強中に」

 

「いや、いいよ。春奈お姉ちゃんの方こそ大丈夫なの?」

 

「うん、手首に少しかすり傷が出来たくらいで、大丈夫」

 

「そっか」

 

それから沈黙が流れる部屋。すると春奈が口を開く。

 

「あのね、一夏君」

 

「なに?」

 

「少しお願いがるんだけど、いい?」

 

「いいけど何?」

 

そう聞くと春奈は一夏の傍にやって来てギュッと抱き着いてきた。抱き着いてきた春奈に一夏は驚きの表情を浮かべていると、ある事に気付く。それは春奈の体が震えていたのだ。

 

「あの時ね、本当に怖かったの。あのまま一夏君が来なかったらと思うと怖くて……」

 

震える口で告げる春奈。震える春奈に、一夏は左手を春奈の頭の上に乗せてポンポンと弱く叩き、右手を背中に回してギュッと抱きしめる。

その行動に春奈は一瞬驚くも、落ち着かせようする一夏の行為に心の中で感謝しながらそっと涙を流す。

 

 




次回予告
久瀬達がやった事が学校中に知れ回っている中、春奈はあの日の事、そしてある感情を芽生え始めている事に気付く。

次回
春奈の思い

次回投稿してほしい小説(詳細は活動報告の「次回作一覧」を見てください)

  • ①IS×ウォーシップガンナー2
  • ②IS×メタルギア
  • ③IS×オリジナルストーリー①
  • ④IS×オリジナルストーリー②
  • ⑤IS×クロスアンジュ
  • ⑥IS×タイムクライシス
  • ⑦IS×オリジナルストーリー③
  • ⑧IS×人狼 JIN-ROH
  • ⑨IS×東方project
  • ⑩IS×オリストーリー④
  • ⑪IS×R-type
  • ⑫俺ガイル×IS
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