「ハァッ!」
ベルは素早い動きでミノタウロスの攻撃を躱すと、柔道の要領で投げ飛ばす。ミノタウロスはすぐさま立ち上がり、なおも攻撃を仕掛けるが…
「甘い!」
攻撃を躱し、顎に一撃喰らわせる。頭が揺らぎ、一瞬だけ意識が曖昧になった瞬間にミノタウロスの身体に拳と蹴りを入れる。
「成る程、あの程度なら問題ない…だが、武器がないと決定打がないな…なら」
ベルはそう言って、ミノタウロスが持つ石の斧を上空に蹴り上げると、ミノタウロスを足場にして石の斧を掴みミノタウロスを真っ二つに切り裂いた。その瞬間、石の斧は砕け散る。
「ふぅ…武器も考えなければな」(RXの名はここにも流れていると見て間違い無いだろう…だからこそ、必要な場面でしか使う気はないからな)
「…すごい」
ベルはその声を聞きその方向を見ると、金髪の少女がこちらを見ていた。
「…あなたは」
「…ミノタウロスが逃げてきたから…」
「成る程、通りでミノタウロスの様子がおかしかったわけだ…」
「それより、あの…」
「俺はベル、ベル・クラネル…成り立てほやほやの冒険者だ」
「私はアイズ・ヴァレンシュタイン、【ロキ・ファミリア】の冒険者」
「アイズ…あぁ、あの【剣姫】か…すまないが、このミノタウロスは君が倒したことにしてくれないか?Lv.1の新人が倒したとなれば、よくない目立ち方をしてしまうからな」
「…分かった…」
「すまない」
「ううん、また会おうね。ベル」
「あぁ…?」
アイズに何か違和感を覚えながらも、ベルはその場を離れた。
ー
凄かった。
それだけは言える。私たちが仕留め損ねたミノタウロスを追いかけて、五階層まで来た私が見たのは、白髪の人…ベルが素手でミノタウロスを圧倒していたところ。
あれは、相当な数の戦いを潜り抜けてないと出来ない動きだった。そして、相手の武器で仕留めた所もすごかった。
でも、ベルの顔を見た瞬間…何故か心臓が高鳴り出して、顔が赤くなってしまった。今までそんなことなかったのに…もしかして、これはお母さんが言ってた…
「おい、アイズ!」
「…どうしたの、ベート」
「あのミノタウロスはどうした?」
「…私が倒した」
「そうかよ…つーか、さっき変なやつがいたが…まさかあのヒョロガリを助けたのかよ」
「…まぁ、そうなるかな」
「はっ、そりゃ傑作だな」
「…ベート、あんまりそんなこと言うと怒るよ」
「…わかったよ、言わねーよ…珍しいな、お前がそんなことを言うなんてよ」
「…そうかな?」
…やっぱり、そうなのかな…?