今回の第3話、個人的にはめちゃくちゃこだわりました。ここまで書き直したり修正したのは初めてじゃないかな。
ありふれの魔人族オリ主増えろ!(自分が読みたい)
前話の最後のフリードのセリフを少々修正しました。ご了承下さい。
「アルディアス?」
「うん、知ってる?」
時は少し遡る。
ここはトータスに存在する七大迷宮の一つ、ライセン大迷宮。
そこの最奥にて、神の使徒として、このトータスに召喚された南雲ハジメと、この迷宮に住まう解放者のミレディ・ライセンが居た。
元の世界に帰還する為に、この迷宮に挑んだハジメ達はミレディの狡猾な罠を潜り抜け、神代魔法の一つ、“重力魔法“を手に入れた。残念ながら、ハジメに適性は無かったようだが……。
その後、ミレディへの鬱憤を晴らすように宝物庫を漁っていたハジメだったが、唐突にミレディからある人物の名前を尋ねられた。
「そいつがどうかしたのか?」
「8年くらい前だったかな? その子、ここに来て君と同じように試練を乗り越えたんだよ」
「ッ!?──俺達の他にもいたのか……」
自分の他に迷宮を攻略した者がいると聞き、驚きをあらわにするハジメ。だが、それも仕方がないだろう。
王国にいる間にハジメは、自分のクラスメイトやメルドを始めとする騎士達のステータスを見る機会があったのだが、昔はともかく、今の自分の足元にも及ばず、そもそもオルクス大迷宮が100層で終わりだと思われている時点で存在すら認知されていないものだと思っていた。
自分が最強などと言うつもりは無いが、自身の脅威になる可能性のある存在にハジメの眉間にシワが寄る。
「まあ、知らなくてもしょうがないか。あの子、魔人族だし」
「何? 相手が魔人族でも神代魔法を与えるのか?」
「うん、資格があればね。私からすればあのクソ野郎を殺してさえくれれば誰でもいいし、そもそも解放者の一人は魔人族だよ」
「……なるほど、言われてみれば確かに」
魔人族と聞くと人間族の敵と考えてしまうが、そもそも戦いの原因は
「ん? 魔人族のアルディアス?……あっ」
ミレディの言葉に納得していたハジメだったが、魔人族のアルディアスと聞くと、何か引っかかりを覚え、記憶を探っていると一つ思い出したことがあった。
「思い出した。魔人族のアルディアスっつったら偽王のことじゃねえか?」
「偽王?」
その、あまり良い意味には捉えられない二つ名に首を傾げるミレディにハジメは王宮の図書館で得た情報を話す。
偽王アルディアスは3年ほど前に魔人族の国ガーランドの王──魔王の座に着いた魔人族なのだが、王になる前に戦いの前線に出てくることがあった。
しかし、彼が出てくるのは魔人族が自国に撤退する為の撤退戦が主で、魔人族全軍が撤退するまで、人間族の軍の妨害をし、撤退が完了すると同時に自らも撤退するらしい。
後に王と呼ばれる人物が敵に背を向けてノコノコと逃げ帰る姿に軽蔑の意味を込めて偽物の王──偽王と呼ばれるようになった、という訳だ。
だが、ハジメはかの王を情けないとは思わなかった。
本棚の端、埃の被った別の書物で知ったことなのだが、アルディアスが撤退戦に現れてからの魔人族の損害は文字通り0だったらしい。軍隊規模の人数をたった一人で守りきり、自らも無事撤退するなど余程の力がなければ成し遂げられない偉業だろう。
「──つー訳で、偽王と呼ばれてんのは単純に自分達の思い通りにいかなかったことへの当てつけもあるんだろうよ」
「なるほどね〜。まあ、あの子ならそのくらい簡単にやってのけるだろうね」
「てか、そいつは神殺しは考えてねえのか?」
「聞いてみたんだけど、はぐらかされちゃったんだよね。まあ、神代魔法を手に入れたとはいえ、別に強制するつもりはないしね。聖母のように優しいミレディさんは未来ある子供を危険な戦いに無理やり巻き込むことはしないのさ!」
突然キリッとしてポーズを決めたミレディにイラッとするハジメだったが、ミレディの話の中で気になる言葉があったのでそのことを尋ねる。
「お前、さっきからあの子とかその子とか、まるで子供みてえな言い方だが……?」
「だって子供だもん」
「はあ? 相手は仮にも一国の王だぞ? それを子供扱いって……ああ、お前、ババアなんだったな」
「あー!? 言ってはならないことを言ったな!! 女性に年齢の話はダメなんだよ! そんなんじゃ、あのシアって子に嫌われちゃうぞ!! そもそもホントに子供だったし!!」
「何意味分かんねぇこと言っ……て……」
長く生きすぎて頭の中も腐ったか。と、かなり酷いことを考えていたハジメだったが、アルディアスについての情報で、もう一つ重要な事実があることを思い出した。
魔王アルディアスは魔人族の歴史の中で最年少の魔王と呼ばれているらしく、正確な年齢までは分かっていないが、戦場に出てきた時は、少なくとも10代前半から半ばの容姿をしていたらしい。
先程、ミレディはアルディアスが何年前にここに来たと言っていた?
「おい! そのアルディアスって奴がここに来たとき、ソイツの年はいくつだ!? それと、ここ以外の七大迷宮には行ってんのか!?」
「え? えーと、確か10歳って言ってたような……それに偶然なのか、君と同じでここに来る前にオルクス大迷宮を攻略したらしいよ」
ミレディから明かされた事実に思わず絶句するハジメ。七大迷宮がどれだけ困難なものなのかは経験した自分がよく知っている。
それをたった10歳の子供が? しかも8年もあるならば、他の大迷宮もすでに攻略している可能性もある。
それにフェアベルゲンの亜人族は、自分が大迷宮の攻略者と知るやいなや、畏怖の視線をこちらに向けてきた。
純粋に力の差を感じ取り、恐怖しているものかと思っていたが、もし、過去に同じ攻略者に危害を加えようとし、手痛いしっぺ返しを喰らっていたのなら、あの様子にも納得できる。
一気にハジメの中でアルディアスに対する警戒レベルが上昇する。しかし、そんなハジメの様子に気付いているのか、いないのか、ミレディは懐かしむように過去を語る。
「いやー、まだ子供だけど凄い整った顔立ちをしててさ〜。最初は女の子かなって思っちゃったよ! ありゃ、今頃きっととんでもないイケメンになってるんじゃないのかな! 一緒に居た女の子もお人形さんみたいに可愛くってね〜」
「ん? 他にも誰か居たのか?」
「居たよ? 綺麗な金髪の女の子でね、私に迫る可愛いさだったね! 二人並ぶともう抱きしめたくなる破壊力だったよ!」
「……ソイツの名前は?」
「……おや? おやおやおや? 可愛いと知っていきなり名前を聞くとは、何だかんだ言って君も男の子ですな〜。え? 何? 兎人族の子だけじゃ物足りないって? プークスクス! 仕方ないな〜ハーレムを所望なそんな君にこのミレディさんが一肌脱いで──イタタタタッ!? 痛い痛い!! ジョーダンだって、ジョーダン! ミレディさんの完璧ボディが壊れちゃう!?──プギャ!?」
ハジメの様子に何を思ったのか、ゴーレムの表情が、にやあーと下品な笑みに変わり、ハジメをからかい始めるが、ハジメの左の義手が即座にミレディを捕獲し、そのまま締め上げ始める。
マジでこのままだと握り潰されると思ったのか慌てて謝罪をするミレディをそのまま離すことはせず、壁に投げつける。
奇妙な声を上げ、そのまま壁をズリズリと落ちていき、パタンと床に仰向けに倒れる。
「全く、ホントに潰れるところだったよ」
「ふざけてないで、さっさと教えろ。次はマジで粉々にすんぞ」
「はいはい、分かりましたよーだ。えーと、何だっけ?君が乱暴に扱うから記憶が混乱しちゃってるよ。うーんと……あっ、そうだ!」
──確か、アレーティアって言ってたよ?
◇ ◇ ◇
オルクス大迷宮90層。
この場所で初めて神エヒトが召喚した勇者一行と魔人族の戦いが繰り広げられて
……そう過去形だ。両者、未だに死者は出ていないが、最早決着は着いただろう。
魔人族──カトレアの敗北によって。
(クソっ! こんな奴がいるなんて聞いてないよ!)
すでにカトレアは満身創痍だ。連れてきていた魔物は全滅し、自身も両足をやられ、退路も完全に断たれた。
仕組みは分からないが、目の前の眼帯の男の持つ武器は、簡単に自分の命を奪う威力を備えている。自らの命は完全にこの男に握られているだろう。
殺したと思っていた騎士共も兎人族の少女が何かしたのか、ふらふらとしながらも起き上がりつつある。
「さて、特に聞きたいこともないし、お前を生かしておく理由もないな」
眼帯の男──ハジメはそう言うと手に持つ拳銃──ドンナーの銃口をカトレアに向ける。
それを見て、自分の最後を悟りながらも、カトレアはハジメを睨みつける。
「あんたは確かに強いが、あの御方には到底及ばない。いつか、あたし達の王があんたを殺すよ」
カトレアの負け惜しみとも取れる言葉にハジメは眉をピクリと動かす。
彼女の言う“王“とやらに心当たりがあったハジメだったが、すぐに口元を歪めて不敵な笑みを浮かべる。
「敵だと言うなら神だって殺す。その神に踊らされてる程度じゃあ、俺には届かない」
そう言い返すハジメだったが、その言葉を受けて、仕返しとばかりに今度はカトレアが不敵な笑みを浮かべる。
「……何だ」
「
その言葉を最後にもう何も話すことはないとばかりに口を閉じるカトレアに眉を潜めるハジメだが、やるべきことは変わらないとカトレアの頭部に銃口を突きつける。
しかし、それに待ったを掛ける男が居た。
「待て! 待つんだ、南雲! 彼女はもう戦えないんだぞ! 殺す必要は無いだろ!」
そう言ってハジメを止めようとする青年の名は天之河光輝。天職・勇者を持つ、この世界に召喚されたクラスメイトのリーダーを務める存在だ。
しかし、そんな光輝の言葉にハジメは淡々と言い返す。
「何言ってんだ? お前、コイツに手も足も出なかったんだろ?」
「そ、それは……」
ハジメの言葉に光輝は思わず言い淀む。
多数の魔物の強襲に後手後手に回っていた光輝だったが、仲間の危機に奥の手の“限界突破“終の派生技能[+覇潰]を発動。通常の限界突破が基本ステータスの3倍の力を発揮するものに対し、“覇潰“は5倍まで引き上げることが出来る。
光の弾丸と化した光輝が魔物を薙ぎ払いながら一気にカトレアに迫ったが、カトレアは少し目を見開いたものの、あっさりと光輝の一撃を躱し、逆にガラ空きの腹部に強烈な回し蹴りをお見舞いした。
単純なステータスならばカトレアを越えた光輝だったが、ついこの前まで戦いとは無縁だった光輝では技術が不足しており、単純に力任せに突っ込んでくる相手にカウンターを決めるくらい、カトレアには朝飯前だった。
だが、自分を殺し得る力を持つ光輝を生かして連れ帰るなどという危険な行為をカトレアはしない。
もし、ハジメが来るのが少しでも遅れていれば、間違いなく最悪の結果になっていただろう。
「……捕虜に、そうだ、捕虜にすれば良い! 無抵抗の人を殺すなんて、絶対ダメだ。俺は勇者だ。南雲も仲間なんだからここは俺に免じて引いてくれ」
そんなツッコミどころ満載な光輝の言い分に反応したのはハジメではなく、銃を突きつけられているカトレアだった。
「何のつもりだい? 敵に情報を漏らすくらいなら私は死を選ぶよ。そもそも、あんただってあたしを殺しに来てたじゃないか」
「そ、それは……」
カトレアの言葉に先程同様言い淀む光輝。その瞳には死に対する恐怖と戸惑いがこれでもかと現れていた。
その光輝の瞳を見たカトレアは何故そこまで自分を庇うのかを正確に悟り、侮蔑の眼差しを向ける。
「呆れたね…まさか、今になってようやく気が付いたのかい? 自分たちが“人“を殺そうとしていることに。まさか、あたし達を“人“とも思ってなかったとはね」
「ち、違う!? ただ、知らなくて……」
「知ろうとしなかったの間違いだろう? さあ、もう良いだろ?」
「……ああ」
何となく気付いてはいたが、ここまで酷いとは思ってもいなかったハジメは呆れた表情を光輝に向けつつも、ドンナーの引き金に指を掛ける。
「待っ──」
慌てて光輝が止めようとするが、とても間に合う距離ではない。
(申し訳ありません、アルディアス様。先に逝くあたしをお許しください)
今度こそ、自らの最後を悟ったカトレアが、心の中で、敬愛する主に謝罪の言葉を述べながら目を閉じる。
──絶対に死ぬな。必ず生きて戻れ。
「ッ!?──ガアアッ!!」
「なっ!?──グッ!?」
ハジメが引き金を引くと同時に、カトレアが恥も外見も捨てて、地面に転がるように回避行動を取る。
ここまで来て避けるとは思ってもいなかったハジメが驚愕に硬直していると、突然腹部に痛みを感じ、後ろに数歩よろめく。
どうやらカトレアがハジメの隙を突いて、蹴りを入れたようだが、脚を撃ち抜かれた状態で繰り出された蹴り故にダメージは少なく、逆にカトレアが脚を押さえて苦しんでいる。
「てめぇ、何のつもりだ」
「クソッタレ! あたしは大馬鹿か!」
「……何の話だ」
「ああ!? こっちの話さ! 任務とか魔人族のプライドに
突然意味の分からないことを言い始めるカトレアにハジメが眉を顰めていると、動くことさえ苦痛だろうに、カトレアがその2本の足でゆっくりと立ち上がり始めた。その瞳には確かな生への執着が見て取れる。
「さっきまで、死を受け入れてた奴が何のつもりだ? 死の間際になって怖くなったか?」
「ハッ! 戦場に出てから死なんて恐れたことは無いね。こちとらすでに何人も殺してんだ。そんなこと、とうの昔に覚悟できてるさ」
「なら何故──」
「覚悟出来てるからって、それで諦めるかどうかは別だろう?」
そう言ってカトレアは不敵に笑った。
状況は何も変わらない。魔物は全滅し、まともに立つことすら儘ならない。反面、敵は誰一人として死んでいない。
最早詰みと言っても良い状況だが、カトレアはそれでも生きることを諦めない。いや、諦めてはダメだと思い出したのだ。
任務に出る前に、いや、戦いに出る魔人族全員が直接掛けられるあの方の言葉を。
一人でも戦死者が出たことを知ると、淡々としながらも、血が滴るほど拳を握りしめている誰よりも優しい王を……。
(何てザマだ。バケモノみたいな奴が現れたからって早々に死を受け入れようとするなんて……アルディアス様が知ったら間違いなく激怒されてるね。……必ず帰るんだ。腕を千切られようとも、脚をぶった斬られようとも、這いずってでも生きて帰るんだ!!)
カトレアの決意に満ちた瞳がハジメを、その後ろのクラスメイトを捉える。
満身創痍とは思えないほどの覇気に全員が怖気付く。
「あたしは死ねない! こんなところで死ぬ訳にはいかないんだ!! 生きて、あの方の元へ帰るって……約束したんだ!!」
カトレアの魂の叫びが木霊する。
その姿にクラスメイトが困惑し、戦慄し、恐怖した。
自分たちは神の使徒だ。人間族の勝利の為に邪悪な魔人族を倒して世界を救う。そういう話だった筈だ。
なのに、何だ目の前の存在は……。例え、どんなに醜くても、見苦しくとも、泥水を啜ってでも、誰かの為に生きたいと願うその姿は……自分たちが魔物の上位種だと思っていた存在は……どこまでも自分たちと同じ──“人“だった。
クラスメイト達が動揺で言葉を失う。そしてそれは、ハジメも例外ではなかった。
彼はすでに人殺しを経験している。敵が同じ“人“であることも理解していた。
ならば、何が彼をそこまで動揺させているのか。
ハジメが見つめる先、それはカトレアの瞳だった。
生きることを一切諦めていない力強い瞳。ハジメはそれに見覚えがあった。
クラスメイトに裏切られ、奈落の底に落とされながらも、必死に生にしがみついていた自分と同じ瞳。
なぜ、たったそれだけで自分がここまで動揺しているのか分からない。
だが、奈落の底から帰還して初めて、ハジメは心の底から恐怖した。
「ッ!?」
ハジメはカトレアに向けてドンナーを構える。目の前の
対するカトレアは、じっとハジメを睨みつけたまま動かない。すでにその場から動く力も無いのだろう。それでもその瞳からは未だに一切の諦めの色を感じられない。
「ッ!?──その眼をやめろォーーー!!」
そのまま、激情に駆られるように引き金を引こうとした瞬間──
ドゴオオオォン!!
突然、迷宮内にとてつもない轟音が鳴り響くと同時に天井が崩落した。
クラスメイト達が、突然の心臓が震えるほどの轟音と立ってられないほどの衝撃にその場に蹲る。
そんな中でもハジメとカトレアだけは反応が違った。
二人が注目する先、崩落した天井の瓦礫が積み重なっている場所。砂煙が巻き上がっており、うまく確認することが出来ない。
(何か……いる)
だが、視界が塞がれようとも、ハジメは“気配感知“と“熱源感知“でそこに何かがいることを察知し、警戒する。
そんなハジメと違い、カトレアは胸が高鳴るのを止めることが出来なかった。
(ああ、やはり、貴方はこんなところまで来てくださるのですね)
カトレアは先程までの決意に満ちた表情から一転、頬が高揚し、目も少し潤んでいる。まるで恋する乙女のような表情だ。
ようやく轟音から回復したクラスメイト達が辺りを見回し、音の発生源であろう崩れた天井に視線を向ける。
まるでデジャブのような状況に誰もが呆然としていると、不意に風が吹き、舞い上がった砂煙が一気に晴れていく。そして──
「良く耐えた、あとは任せろ」
「ああっ……!」
彼女の心の底からの魂の叫び。それは一人の“王“に、確かに届いていた。
「さて、俺の大切な臣下を傷つけたのは……誰だ?」
今ここに、
アルディアスはハジメよりも先にオルクス大迷宮を攻略しています。つまり……?
あと、ハジメとミレディの掛け合いを考えるの地味に楽しいかも。
原作はもちろんのこと、数々の二次創作でもハジメやオリ主の無双展開の犠牲になってきたカトレアさん。今回めちゃくちゃ主人公してました。ここまで主人公してるカトレアさんは中々いないのでは?