【完結】魔人族の王   作:羽織の夢

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 フリード・ウラノス&ティオVS人体合成竜(キメラ)
 原作では敵同士だった二人と一体の共闘です。


第四十一話 【竜を象った異形】

 異形の竜の全身から何発もの魔弾がティオとウラノス目掛けて殺到する。

 二体の竜は視界を覆うほどの弾幕を一切減速すること無く隙間を縫うようにすり抜けていく。

 

「周りの雑魚は任せろ! 貴様は奴を叩け!!」

 

『了解じゃ!!』

 

 竜の大群までの距離が500m程まで迫った辺りで、ウラノスは急加速し、大群のそばを横切る。すると、それにつられるように、異形の竜の周りを固めていた小竜がウラノスに狙いを定めてその後を追走し、その背目掛けてブレスを吐き出していく。

 しかし、ウラノスは縦横無尽な空中機動でそれらを危なげなく躱していく。

 

「脆弱なブレスだな。ウラノス、本物の”竜”のブレスというものを見せてやれ」

 

「ルァアアアン!!」

 

 急旋回によって態勢を変えたウラノスは、その顎門から極光のブレスを放った。

 それは小竜のブレスをあっさりと呑み込み、そのまま小竜の大群を薙ぎ払っていく。

 

「奴ら如きに時間を割くわけにはいかん。速攻で終わらせるぞ、ウラノス!!」

 

「クルァアアアアアア!!」

 

 

 ◇

 

 

(むぅ、近づけん)

 

 異形の竜の周囲を旋回しながら、ティオは独りごちる。その間にも絶えまない弾幕の嵐がティオに殺到する。

 近づけば近づくほどその大きさがよく分かる。全長は100mを超えているだろう。ティオがどの位置にいようとも体中に付いている目玉がその姿をじっと捉えてくる異様な姿は、ハッキリとした嫌悪感と僅かな恐怖心を煽る。

 本体の動きは鈍いのだが、その巨体から絶えず撃ち出される魔弾が接近すら難しい状況を作り出している。

 

(それに本体も僅かに動いてはおるが、あまり生き物らしさを感じられん)

 

 巨体の周囲を飛びながら、牽制にブレスを背部に撃ち込んだティオだったが、撃ち込んだ箇所が激しく痙攣したかと思えば、頭部はピクリともせず、顔面に撃ち込めば、弱々しく声を洩らすが、反対に他の部位は一切動かなかった。

 もし奴がアンデットなどの類ならば、そもそも痛みに対してのリアクションは無い。つまり……

 

(最初は人の身体を組み合わせた合成竜(キメラ)の類かと思っておったが、あれはただの集合体じゃな)

 

 合成竜(キメラ)とは本来一つの生物に様々な生物の遺伝子組み込むことで作り出されるものだが、あれはそれとは別物だ。

 当初、ティオは一体の竜の肉体を核として、人の遺伝子を無理矢理組み合わせているものかと思っていたが、そうではなかった。

 アレに竜の遺伝子は使われていない。あくまで使徒の肉体と遺伝子を組み合わせ、それを竜の形に形成しているだけだ。言ってしまえば、竜の形をした肉塊だ。

 だからこそ、ダメージを受けてもそれが他に伝達することは無い。何故ならば、集合しているだけでそれそれの部位が別々の独立した生き物なのだから。

 

(シュパースとやらは本当にいい性格をしておる。こんなにも竜人族(妾達)の神経を逆撫でしてくるとは……!)

 

 ティオは竜化した表情をハッキリと顰める。自他ともに認める程のドMだが、これは流石に許容範囲を超えている。

 

『ならば、端から削り取ってくれるわ!!』

 

 首を大きく振り上げたティオの口内に黒い炎が溢れ出す。

 今にも零れ落ちそうな程の炎が溜め込まれるが、ティオは更に熱量を上げていく。

 

(この図体に生半可な攻撃は無意味。ただ吐き出すだけじゃ駄目じゃ。絞れ。細く、長く、斬り裂くイメージを……!)

 

「ガァアアッ」

 

 そうして繰り出されるは、漆黒の刃。直径50mm程度の極小のレーザーが天に突き刺さった。一瞬外したと勘違いする光景だが、それは違う。何故ならば、刃とは敵を切り裂くために振り上げるものなのだから。

 そのまま漆黒の刃を頭部からまっすぐに振り下ろす。異形の竜の肉体の頭部から尾までを、何の抵抗も無く真っ二つに焼き斬った。

 そのまま返す刃で二撃目を繰り出そうとしたティオだったが、突然喉を斬り裂かれたような痛みを感じてブレスが途切れる。

 

『ぐうぅ、ぶっつけ本番でやってみたはいいが、喉の負担がでかいのぉ』

 

 王都での戦いでアルディアス相手に一切通用しなかった自慢のブレス。威力も範囲も桁違いの竜人族のお家芸だが、敵の防御が崩せられなければ大きな隙を見せるだけだ。その経験から編み出した技術。放射状に撃つのではなく、炎を一点に集中させることで、対象を切断する。原理で言えばガスバーナーに近い。

 

『しかし、これで……なッ!?』

 

 身体を真っ二つに切断された異形の竜はそのまま墜落するだろう。あの巨体だ。地面に落ちてしまえば禄に動けないはず……

 そう考えていたティオの予想を大きく裏切る光景が飛び込んできた。

 飛んでいる。肉体を二つに分けられようとも、そんなこと知るかといわんばかりに。更に切断面からボコボコと肉が盛り上がり、不格好な新たな半身が()()()()()()()()()()

 

『増えた!?』

 

 二つに分けられた異形の竜は、切断された傷を修復するのではなく、それぞれが新たな肉体を形成することで二つの個体として生まれ変わった。

 

「自己再生……いや、この場合、自己増殖と言った方が正しいか」

 

『ッ! フリード殿か。そちらは終わったかの?』

 

「ああ、雑魚ばかりだ。我らの敵じゃない。それよりも厄介な奴だな。生半可な攻撃じゃ意味をなさず、斬り落とそうにもああして増えられるのがオチだ」

 

『ううむ、何か良い手は……いかん!?』

 

 頭を悩ませるティオとフリードの元に再び魔弾の弾幕が襲いかかった。その攻撃密度は先程までの倍はある。

 

「二体に増えた分、弾幕も二倍か!!」

 

『どうするのじゃ!? これじゃブレスを届かせることすら難しいぞ!? 何か全部まとめて吹き飛ばす魔法とか無いのかの!?』

 

「無茶言うな!? あんな巨体を吹き飛ばす魔法など私は使えん! 恐らく、完全に消し飛ばさねばまた繰り返しになるぞ!? アルディアス様ならば可能だが、あの御方は今手が離せん!!」

 

『それはそうじゃが……!!』

 

 アルディアスは今この瞬間もシュパースと戦いを繰り広げている。その力の一端はティオもその目で確認している。それを考えれば、他を手助けする暇などないだろう。

 

『ぐうう!?』

 

「クルア!?」

 

「ティオ・クラルス! ウラノス! 無事か!?」

 

 そうしている間にもどんどん弾幕の勢いは増していく。ティオとウラノスの身体にも少なくない傷をつけていき、後退せざるを得ない状態に追い込まれていく。

 

『マズイぞ! あんなものに戦場のど真ん中に行かれたら一大事じゃ!』

 

「…………」

 

『フリード殿、何を黙っておるのじゃ! 他の者も手一杯なのは承知しているが、こうなったら増援を……!』

 

「……仕方あるまい、か」

 

『フリード殿?』

 

 ウラノスの背で二体の異形の竜を睨みつけていたフリードが、深く息を吐いたあと、決心したかのようにティオに視線を向ける。

 

「一つだけこの状況を打破する方法がある」

 

『本当か!!』

 

「ああ、”変成魔法”というものを知っているか?」

 

『”変成魔法”? いや、聞いたことがないが……』

 

「解放者、ヴァンドゥル・シュネーが残した神代魔法の一つだ。お前達は大迷宮の攻略を進めていたようだが、”変成魔法”が手に入るのは魔国ガーランドの近郊にあるシュネー雪原。知らなくとも無理はない」

 

 ”変成魔法”──その力の本質は”有機的な物質に干渉する魔法”。その力で魔物の従属化や支配下に置いた魔物の強化を行うことが出来る。

 

「この魔法でウラノスを限界まで強化させる。その一撃ならば、奴を細胞一つ残さず消し飛ばすことも可能だろう」

 

『おおっ! 何じゃ、勿体振りおって! そんな魔法があれば最初から使えば良いものを!』

 

「反動が大きいんだ。一撃を撃ち込むだけならともかく、常にその状態でいるのは魔力効率が悪い」

 

『なるほど。なら、早くそれを使えばよかろう』

 

「……」

 

 戦争は目の前の敵を倒せば終わりではない。長時間続く戦闘でスタミナの管理は重要だ。特にフリードやウラノスといった軍の主柱といった存在は下手に前線を引くことも好ましくない。彼らは前線に立っているというだけで部下に精神的な余裕を生み出すからだ。

 しかし、それを加味しても目の前の敵を放っておくことの方が被害が大きくなることは間違いない。ならば、その奥の手を使うことに躊躇はいらないはずだが、何故か険しい表情をするフリードを見て、ティオは首を傾げる。

 もしや、魔力消費以上に何かデメリットがあるのか? とティオが考えていると、フリードがようやく口を開いた。

 

「一体ならばウラノスだけで何とかなったが、あの巨体を二体も消し飛ばすのは不可能だ。だから力を貸せ、ティオ・クラルス」

 

『……へ?』

 

「ウラノスと同様、お前にも”変成魔法”を使う」

 

『…………』

 

 思い出すはフリードから簡単に説明された”変成魔法”の用法。その一文。

 

──魔物の従属化や()()()()()()()()()の強化を行うことが出来る。

 

『ちょ、ちょっと待つのじゃ!? つまりそれは、妾がフリード殿の眷属になるということかの!?』

 

「支配下に置かなくとも強化は出来るのかもしれんが……何分試したことがない。確実性を求めるのなら、その方が良いだろうな」

 

 何体もの魔物に強化を施してきたフリードだが、その力を使うのは当たり前だが従属化した魔物だけだ。支配下に置いていない魔物()に使った試しなどない。こんな状況でなければ検証のしようもあったのだが、下手に弱体化など起こられては堪ったものではない。

 その事実にワナワナと震えていたティオが口を開く。

 

『お、お主!? 妾を眷属にして何をするつもりじゃ!? あんなことやそんなことをするつもりか!?』

 

「貴様の能力を強化するために決まっているだろうが!? こんな状況でなければ誰が貴様のような変態を眷属にしようと思うものか!?」

 

『くっ、仕方がない奴を倒すためだ! だが、覚えておれ! 妾の全ては既にご主人様に捧げた! 例え、この身を好きに出来ようとも、心までは奪えないと思え!!』

 

「貴様から殺されたいのか!?」

 

 少し鼻息が荒くなってきたティオに、割と本気の殺気をぶつけるフリード。そもそもフリードは従属化させた魔物を奴隷のような扱うことなどしていないし、これからもするつもりはない。

 何よりも魔物と従属化を行えば、大なり小なり対象との繋がりを感じることが出来る。つまり、フリードが言葉に渋っていたのは、例え短時間だろうとも、ティオを自身の眷属にするなどまっぴらごめんだったからである。

 

「ええい、早くこちらに近付け! さっさと終わらせてすぐに従属化も解除するぞ! 詠唱の間に撃ち落とされるなんて無様は晒すなよ!!」

 

 それでも全身から溢れ出す嫌悪感を押し殺し、フリードは自らのやるべきことを成すために覚悟を決める。ここで敵を討てなければ、それは地上で戦っている他の兵士達にも危害が及ぶ。それはフリードの望むところではない。

 

「これもアルディアス様のためこれもアルディアス様のためこれもアルディアス様のためこれもアルディアス様のためこれもアルディアス様のためこれもアルディアス様のためこれもアルディアス様のためこれもアルディアス様のため……」

 

『そこまで嫌がられると流石に傷つくんじゃが……』

 

 自分で自分に言い聞かせるように、ぶつぶつと言葉を口にするフリードに流石のティオも僅かにたじろぐ。

 これでも一応竜人族の姫なのだが……という言葉を無視し、フリードは今度、南雲ハジメを一発殴ろうと決意した。完全に八つ当たり……と言えないのが悲しいところである。

 そして、そっと目を閉じ、詠唱を開始する。

 

【我、支える籠手也──】

 

 長文詠唱中は術者が無防備な状態になるが、ウラノスがフリードには指一本触れさせず、フリードもウラノスを信頼しているのか、一切外の様子を気にする素振りがない。

 ティオもいつ魔法が発動しても良いようにウラノスのそばを離れないように飛翔する。

 

【──定められし我が宿命、真理にて祝福を授けること也】

 

【希望はなく、救いはなく、絶望は迫る】

 

【開け界廊。砕け犀角。晒せ白魔】

 

【代価はここに。捧げし宝玉が天を衝く】

 

 そして、詠唱が完成する。

 

灰征魔國(かいしょうまこく)

 

 フリードを中心に黒い煙が発生し、ウラノスとティオの巨体を余すこと無く包み込む。

 その瞬間、只々宙を泳ぐように飛んでいた異形の竜がハッキリと反応を示した。肉体を構成する生物の感情が一つに纏め上げられ、頭上の存在に警戒が集中する。

 

「ようやくこちらを認識したか?」

 

 二条の閃光が瞬き、黒煙に包まれていたソレが姿を現す。

 純白の鱗が白銀に煌めき、心臓部から伸びる光り輝く蒼い炎が四肢に纏うように伸びる──ウラノス。

 漆黒の鱗が紫電を生み出し、同じく心臓部から伸びる紫の炎が四肢に纏うように伸びる──ティオ。

 名付けるのなら、白銀竜と黒紫竜と言ったところだろう。異形の竜と比べれば小柄ではあるものの、全長30m程にも巨大化し、その威圧感は見るもの全てを震え上がらせる。

 

「ッゴアァアアアアアアアアア」

 

 その姿を視界に捉えた異形の竜は、威嚇するかのように全身から初めて咆哮を上げる。しかし、その叫びは聞く者が聞けば恐れを紛らわすための遠吠えにも聞こえるような弱者のそれだった。

 更に勢いを増した魔弾の弾幕が二体の竜に命中するが、その鱗に傷一つつけることは叶わない。ウラノスに至っては、翼でフリードの姿を覆う余裕すら見せる。

 

 ウラノスとティオがガバッと顎門を開く。口内に形成されるのは一粒の小さな宝石。その巨体からはつり合わない、人の拳大程度の大きさだ。それがまるで軒先から雫が垂れるかのように重力に従い、異形の竜に落ちていく。

 

 その雫が触れた瞬間……異形の竜が消し飛んだ。

 

 爆炎は生まない。衝撃は撒き散らさない。音すら消し飛ばす。超圧縮されたブレスの一撃は、世界に何一つ痕跡を残すこと無く、対象を世界から完全に消滅させた。

 

 敵の殲滅……いや、消滅を確認したフリードはウラノスとティオに掛けた魔法を解く。

 二体の竜鱗の隙間から空気が抜けるように黒煙が吹き出し、それが晴れると、元の姿に戻ったウラノスとティオの姿が現れる。

 

『ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……し、しんどいのじゃ……』

 

「話す余裕があるだけ大したものだ。ウラノス以外に使うと数時間は満足に動くことすら出来ん」

 

『ウ、ウラノスはまだ余裕そうじゃな……』

 

「ウラノスをお前のような変態と同じにするな」

 

「クルァ!」

 

 フリードの言葉に「まだまだ行けるぜ!」と言わんばかりに咆えるウラノスだったが、実際ウラノスとティオの肉体スペックにそこまでの差は無く、フリードの魔法を受けたことがあるかないかの経験値による違いだろう。それを証明するように、ウラノスも荒く呼吸を繰り返している。

 

『ふう……流石にこのまま単独行動は危険じゃな。妾はお祖父様の元に合流するとしよう』

 

「俺もそちらに向かおう。確か、騎竜部隊が竜人族の部隊に合流していたはずだ」

 

 体力や魔力の回復手段はあるが、疲弊した精神までは簡単に取り戻すことは出来ない。ティオもフリードもその程度のことが分からないような若造ではない。

 万全を期すために、一度、本陣に向けて二体の竜が飛び立った。




人体合成竜(キメラ)

 斬るたびにめちゃくちゃ分裂する。実は無限ではなく、肉体に使われている神の使徒の数以上には分裂出来ない(それでもめちゃくちゃ多い)。肉体の部位それぞれが意志を持っているため、無理矢理くっつけたのが分かれているだけ。

>The・ドM

 真面目回にするつもりが、気付いたらドMってた。王都の戦いといい、そういう運命なのかもしれない。フリードの真面目キャラと相性が良いのも原因。

>白銀竜ウラノス 黒紫竜ティオ

 ウラノスに関しては完全にリオ○ウス希少種。流石に金ピカはちょっとティオっぽさが無くなりそうだったので止めました。
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