魔導士は爆煙と狂う   作:宝剣サーモンソード

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1話:基本的に敵の話は聞かない

 ドカンダ山、その麓にある街"ボンバイエ"の住人達は、危険な樽(デンジャー・バレル)と名乗る闇ギルドの日々続く強盗紛いな行為に心底辟易していた。

 住人達は危険な樽(デンジャー・バレル)に感づかれないよう、密かに残り少ない資金を募り、藁をも掴む思いで正規の魔導士を頼ることに決めた。

 

 そして今日、その魔導士がやってくる───

 

 

 

 

「すいませーん、依頼(クエスト)引き受けてやって来た魔導士ですけど」

 

 魔導士の少女は屋敷に立て付けられたアンティークな扉を叩いた。

 少女の名はキャロレイン・ロロキルト

 暁のようなグラデーションに染まったショートヘアーが一際目立つ、小柄な魔導士だ。

 

 ノックを聞きつけて扉を開けたのは依頼主と思しき老人。

 彼は目の前にいる魔導士を見て、目を見開いた。

 

「ま、魔導士……? こんな子供が……」

「あ? なんか言ったか?」

 

 顔合わせも早々に、いきなり子供呼ばわりされた事にキャロレインは笑顔のまま怒筋(どすじ)を浮かべる。

 いや、実際年齢で言えばまだまだ思春期あたりの子供なのだが、キャロレインにとってそう言われるのはあまり快くないモノらしい。

 

「ああ、いや……失礼。折角来て頂いたのにとんだ無礼を……さ、どうぞ上がってください」

「お邪魔します」

 

 老人は謝罪を述べ、キャロレインを建物の中に招き入れる。

 

「どうぞ、座って」

 

 落ち着いた雰囲気の応接間に着くと、老人はキャロレインに腰掛けるよう促した。

 

「お言葉に甘えて」

 

 キャロレインが腰掛ける。

 ソファはふかふかで柔らかい感触だった。

 

「いやはやお茶も出せずに申し訳ない。お名前は予めお聞きしておりました。……ロロキルトさん、で宜しいですかな?」

 

 キャロレインは頷いた。

 

「では、早速本題に入りましょう。ロロキルトさんは危険な樽(デンジャー・バレル)という者達を知っていますでしょうか」

 

「ああ、と言ってもそのキッカケは依頼書に記載されていた内容からだがな。気になって調べてみたら、どうやら過去に無差別爆破事件を起こして闇ギルドに堕ちたみたいだな。で、そいつらが今はここら一帯で好き勝手やってる……と」

 

「はい……奴等は一年前、突如街を襲撃してきたんです。当時この街には小規模な軍隊こそ駐留していましたが、魔導士ギルドはありませんでした。そして、軍隊といえど魔導士の群勢には敵いません。つまり、対抗手段が無かったのです……奴等は我々が無力であるのを良い事に好き放題暴れ……しまいには『金を出さなければ、この街がどうなっても知らないぞ』と脅してきました」

 

 傍若無人とはまさにこの事。

 危険な樽(デンジャー・バレル)の所業を聞いたキャロレインは腕を組み、指で腕を叩く。

 

「私達はこの街を守る為、それに応じました。ですが、奴等の要求は次第にエスカレートしていって……。今、我々にはもう奴等に払える程のお金はありません。このままでは街と人々が……」

 

 ボンバイエの市長であり依頼人でもある老人、ポピーハットは項垂(うなだ)れながら説明を続ける。

 その表情には陰りが差していた。

 静かになった応接間は重い空気に包まれた。

 

「魔導士は我々一般人の手に負えません。目には目を、魔導士には魔導士を……あなた様の腕を見込んで、どうか、どうか奴らを追い払って下さい!」

 

 ポピーハットは奥歯を噛み締めたような声を出す。

 怒り、悔しさ、恨み。そう言った感情がポピーハットを支配していた。

 

「任せろ、朝飯前だ」

「頼もしい限りです。……では、この地図を持って行って下され。少々古いですが、今も使える物です。奴等の居場所に印を付けてあります故」

 

 ポピーハットは古ぼけた地図をキャロレインに渡す。

 それを受け取ったキャロレインは、地図を広げて危険な樽(デンジャー・バレル)の居場所と思しき箇所にあるバツ印を確認すると「お邪魔しました」と一言告げ、立ち上がって屋敷の出口へと向かった。

 

「も、もう出発するのですかな⁉︎」

「こういうのはサッサと済ませた方がいいだろ、アンタもオレも」

 

 

 

 

 

 

 ───ドカンダ山、岩肌が目立つこの山は急勾配が多い。

 危険な樽(デンジャー・バレル)、その根城は炭鉱に続く道の中継地に構えていた。

 かつて採掘に精を出す炭鉱夫達の憩いの場であったそこは、今では荒くれ魔導士達のバカ騒ぎで充満していた。

 

 一方、外で見張りを行う世紀末な服装の二人組。

 一人は退屈な役割に愚痴を溢し、もう一人は石像のようにジッと道なりを見つめていた。

 

「はーつまんね、早く交代の時間になってくんねーかな」

 

 モヒカンの門番は暇を訴える。

 イガイガの門番はそれを聞いて我関せずと言った様子だった。

 

「なあおい、街の人間共からお恵みでも貰いに行こうぜ」

 

 そう言ったモヒカンは、人相の悪い微笑みを浮かべると邪悪な声で笑った。

 お恵みと言うが、やる事は押しかけ強盗そのもの。

 

「ダメだ、見張りを俺一人にするな」

 

 イガイガはモヒカンを適当にあしらう。

 

「……んだぁ? まさか『魔導士が来たらどうしよ〜』なんて思ってんのかぁ? ギャハハ‼︎ こんな場所になんてこねーよ!」

「ちげーっつの、お前がサボったら連帯責任で俺もどやされるからだ」

「そんなこと言って、本当は〜?」

 

 暇を持て余したモヒカンはイガイガをおちょくり始める。

 

「もうマジ黙ってろお前、こっちまでイライラするだ……ろ……」

 

 モヒカンに苛つくイガイガは、ふと視界に何かを捉え、顔を顰めた。

 

「ア? どうした」

 

 モヒカンはイガイガを横から覗き込む。

 

「なあ、ありゃ誰だ?」

 

 イガイガが指差した先をモヒカンが見つめる。

 モヒカンは目を凝らすと、物凄い速度で迫り来る少女(キャロレイン)の姿を捉えた。

 

「人だな、それも小娘」

「……人間にあんな速度出せるか?」

「知らん」

 

 それは、体格に見合わない両手剣を構えつつ

 

「……なんか笑顔でぶっ放そうとしてない? 魔法」

「そうだな」

「「って事は……」」

 

 一瞬で門番二人の目の前まで迫り、片足を踏み込むと、両手剣を大きく振りかぶって

 

「邪魔だ退けお前らァァァァァッ‼︎」

「「魔導士だァァァッ‼︎」」

 

 巨大な刀身を大地を叩きつけた。

 

 

 ───爆轟

 

 

 立ち登る噴煙と共に、門番二人は天高く空を舞った。

 

 

 

 同時刻、屋内

 

 床に敷かれた敷物は乱れ、テーブルと椅子が乱雑に散らかっていた。

 乱痴気騒ぎをしていた危険な樽(デンジャー・バレル)の魔導士達は、突如外から響いた鼓膜を貫くような破裂音に静まり返った。

 

 そして、静寂も束の間、蹴破られた扉が数人の魔導士を巻き込みながら一直線に吹き飛び、壁に激突した。

 突然の出来事に何事かと動揺する危険な樽(デンジャー・バレル)の魔導士達。

 入り口の番をしていたはずの仲間は何をしているのかと思えば、小柄な少女(キャロレイン)の足元で目を回しながらくたばっているではないか。

 

「ちわっす!!! お前ら全員ブチのめしに来ました!!!」

 

 注目と逆光を浴びるキャロレインは開口一番、意気揚々と宣戦布告。

 いきなり現れてとんでもない事を言い出した少女に危険な樽(デンジャー・バレル)の魔導士達は思考が追いつかず、凍ったように固まった。

 

 ───今、この小娘なんと言った? 

 

 ───ぶちのめす、だと? 

 

 ───たった一人で? この大人数を? 

 

 思考を整理しながら我に帰った魔導士達は頭に血を登らせ、武器や体に魔法を纏わせながら一斉にキャロレインに向かって押し寄せる。

 

生意気(ナマ)言ってんじゃねぇぞ……やってやろうじゃねーかこの野郎ォォォォォォ‼︎」

「ヘラヘラしやがって……一瞬で泣きっ面にしてやらァァァァ‼︎」

 

 炎、雷、閃光、エトセトラ……

 ありとあらゆる属性の魔法が波のように押し寄せる。

 

「むさっ苦しいわ駄肉共がァァァァァァッ‼︎ あとオレは女だァァァ! 野郎じゃねェェェェ!」

 

 しかし、キャロレインは怯む事なく笑顔に幾つもの怒筋を浮かべながら両手剣を振り翳し、筋光を散らす切先を刀身ごと床に叩きつけた。

 

「だりゃあァァァァァァッ‼︎」

 

 叩きつけられた床に淡い光の粒が収束したかと思えば、次の瞬間、石の床が高熱を纏って炸裂した。

 

「ギャアァァァッ!」

「斬った所が爆発したァ⁉︎」

 

 翳して、振り下ろす。キャロレインが一連の行動をする度に高熱と爆裂が発生し、その衝撃波が魔導士達を吹き飛ばす。

 

 爆発、爆発、また爆発───

 

 阿鼻叫喚、瓦礫と共に舞う魔導士達。

 四方八方で乱れ咲く大爆発と嵐のような勢いで暴れるキャロレインに、危険な樽(デンジャー・バレル)の魔導士達は気圧される。

 

「あ、あいつクッソ強ぇ……」

「俺達の城が滅茶苦茶だ!」

「あかんこのままじゃ爆発に巻き込まれて死ぬぅ」

「こんな無茶苦茶な魔導士、俺は知らないぞ……あんなの俺らのボスだって───」

 

 ───俺が、なんだって? 

 

 後退りする魔導士の背が壁にぶつかる。

 いや、壁ではない。巨人だ。

 

「ボ、ボス⁉︎ 今のは……その……」

「ったく、虫一匹位でギャアギャア叫ぶんじゃねーよ」

 

 いっそ魔法なんて使わずに肉体で戦った方が良いんじゃないかと思うほどの、筋骨隆々な巨人が腕を組みながら悠々と仁王立つ。

 巨人は、暴走機関車の如く並いる魔導士達を薙ぎ払うキャロレインを、その巨大な拳を覆い尽くすほどの魔力を纏わせながら待ち構えていた。

 

「おうおうおう小娘ェ! たった一人で俺たち《危険な樽(デンジャー・バレル)》の城に乗り込んで来るたぁ、いい度胸してんじゃねーの‼︎ だが手前の蛮勇もここまでだ‼︎ 俺の名は───」

「うるせェェェェェェ‼︎」

「ゴハァァァァッ⁉︎」

 

 哀れ、雄叫びの如き声を出し宣誓した巨人はしかし、その名を名乗ることすらさせて貰えずに両手剣で横凪にされ、撥ね飛ばされた。

 壁に大の字にめり込んだ巨人は、たったの一撃で意識を手放した。

 華奢な体の一体どこにそんなパワーがあるんだと疑いたくなるような威力。

 

「「「ドルディ──ーッ⁉︎」」」

 

 真打登場……だったはずが、あまりにも呆気なさすぎる一部始終に魔導士達はただ叫ぶことしかできなかった。

 

「テメー‼︎ 今ドルディさんが名乗ろうとしてただろうが! 空気読めや!」

「知るかそんなもん。先手必勝‼︎ 問答無用ォ‼︎ 一人残らずぶっ潰す‼︎」

 

 キャロレインは剣を振り翳す。

 切先から発せられる筋光がより一層強く、眩しく光り輝き始めた。

 

「次から次へとワラワラ沸きやがって……もう面倒くせぇ‼︎ 纏めて消しとばす‼︎ 最大出力(フルスロットル)‼︎ 喰らえやァァァ‼︎」

「ひぃぃ⁉︎ く、来るぞ‼︎」

「アレでまだ全開じゃ無いのかよ‼︎」

 

 あんなモノ、掠っただけでもひとたまりもないだろう。

 そう考えた魔導士達は大きな隙を捉えて攻撃するより、各々で防御体制を取ることを優先した。

 

 キャロレインは、影すら塗りつぶすほどに閃光を放つ両手剣を、力一杯振りかぶってハンマーのように床に叩きつけた。

 

 しかし、両手剣は何事もなかったかのように、うんともすんとも言わない。

 叩きつけられた刀身は、爆裂を起こさない代わりにプシュウと音を立てて白い煙を立ち昇らせた。

 

「……ッチ、排熱(クールダウン)か」

「ギャハァ! バカめ! ボカスカ放つからそうなるのだ!」

 

 呆気に取られる魔導士の中から一人飛び出した遮光ゴーグルの魔導士がいきり立って、ガラ空きの背後からキャロレインに襲いかかる。

 

「喰らえ俺の全力! 終わりだァッ‼︎」

 

 爆発の魔法を纏わせた(ストレート)の一撃はキャロレインの頭部にクリーンヒット、追撃で炸裂した爆風が彼女を覆った。

 

「ギャハハハハ! やってやったぜぇ! ドルディが倒せなかった魔導士を俺が倒したんだ! 今日から俺が危険な樽(デンジャー・バレル)のトップだァァァ!」

 

 ボロボロになったギルドに拳を浴びせたゴーグルの甲高い高笑いが響く。

 

「くっだらね……全力でこれかよ」

 

 しかし、それは重たく響く透き通った声によって、一瞬にして掻き消された。

 

「ギャハハハハ……は?」

 

 それは煙の中から聞こえてきた。

 

(そんな、いや、ありえない。ただの拳ならまだしも、爆発の魔法を纏った一撃だぞ。()()()人間なら即ノックアウトする程のパンチだぞ⁉︎ どうして平然と立っていられる⁉︎ なんだコイツは……何なんだコイツは⁉︎)

 

 ゴーグルはキャロレインに言い知れぬ恐怖を覚え、全身を粟立たせながら額から嫌な汗を流した。

 

「あーあ、冷めたわ」

 

 煙が晴れ、ゴーグルにぎゅるりと振り向いたキャロレインは笑顔だった。

 が、しかし、それには虚無が宿っていた。

 

「ひっ」

 

 無傷。危険な樽(デンジャー・バレル)の魔導士が全力を持って攻撃しても、彼女には血の一滴流させるどころか擦り傷一つ負わせることすら出来なかった。

 

「へっぽこヘボヘボ魔導士のお前らに特別にレクチャーしてやる。いいか? 魔法を纏って打つストレートってのはなぁ……」

 

 キャロレインはグローブを外して指を鳴らす。

 その時、彼女の手の甲に描かれた紋章を見たゴーグルは青ざめた。

 

「そ、その紋章───」

「こうやるんだよ」

 

 キャロレインの握りしめた拳に光が収束していき、魔力の粒が火花のようにバチバチと弾け出す。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)───」

「ぶっ飛べェェェ‼︎」

 

 顎を穿たれる程の勢いでかち上げられた魔導士は、建物の天井を貫いて空の彼方へと消えていった。

 

「雑魚が、ケツ洗って出直してこい」

(アッパーじゃん……)

(ケツでなく顔では……?)

(そもそも言葉の意味違くね?)

 

 床に倒れ伏した魔導士達はそれぞれ心の中でキャロレインに突っ込んだ。

 

「さてと……後は残飯処理だな。正直もう帰りたい気分だが、こればっかりは仕事だから仕方がねぇ。丁度、排熱(クールダウン)も終わったみたいだしな」

 

 キャロレインはそう言って魔導士達に振り返った。

 両手剣の切先を輝かせながら。

 

「ギャアアァァァその剣翳してこっちに来んなァァァ‼︎」

 

 蜘蛛の子を散らしたように叫びながら逃げ惑う魔導士達。

 

「一匹たりとも逃がさんぞボケェェェェェェ‼︎」

 

 再び無慈悲に咲き乱れる爆発。

 それは、危険な樽(デンジャー・バレル)の魔導士達にとって地獄そのものであった。

 

「チキショー! どっちが闇ギルドだよ⁉︎」

「……あ、ああ」

「ど、どうした⁉︎」

 

 魔導士達が逃げ惑う最中、二人組の内の一人が何かに気付き、固唾を飲んだ。

 

「し、知ってる……俺、知ってるぞ! あいつ、アイツは……笑う怪物(スマイル・モンスター)……!」

笑う怪物(スマイル・モンスター)? なんだその異名は……」

 

「いつ何時もニコニコしながら犯罪者や俺たち闇ギルドの魔導士達をボッコボコにしばき回すから裏の社会で付けられた異名なんだ。奴はそういった存在を絶対許さない……話によっちゃあ、この星の真反対まで行っても逃げきれないって噂だ」

 

「どうしてそこまで……?」

「解らない。ただ一つ言える事は奴に目をつけられていた時点で、俺たちは終わりだったって事だ……」

「なるほど」

 

 直後、二人組は白い光に飲み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 かくして、ボンバイエの住人達を苦しめていた危険な樽(デンジャー・バレル)は壊滅し、悪の魔導士達はアッパーを喰らった若干一名を除いて、一人残らずお縄となった。

 

「いやはや、ありがとうございます! 貴女様の活躍のお陰で、この街は救われました!」

「それは何より」

 

 ポピーハットは感極まりつつ、一方的に両手でキャロレインと握手を交わす。

 

「そういえば市長に一つ、聞きたいことがあるんだけど」

 

 キャロレインは内ポケットから一枚の写真を取り出して、ポピーハットに見せる。

 

「この写真の人に見覚えある?」

 

 白黒写真の中で微笑むドレスを着た少女は見た目麗しく、どことなく優しそうな雰囲気を漂わせていたが、同時に写真の色合いも相まって退廃的にも見て取れた。

 もし一目見ていれば、絶対に忘れる事はないだろう。

 

「……いや、ありませんな」

 

 しかし、こんな少女はポピーハットの記憶には存在していなかった。

 

「お力添えできず、申し訳ない」

「そうか……いや、いい。じゃあ、報酬も受け取ったし、オレはこれで───」

「ええ、ええ……本当によかった。これで危険な樽(デンジャー・バレル)に占拠されていた休憩所も使えるようになり、炭鉱夫達も食いっぱぐれずに済むでしょう。貴女の報告を聞いた後、彼らは真っ先に飛び出して行きましたよ」

 

「えっ……」

 

 それを聞いたキャロレインは滝のように冷や汗を流した。

 なんせ、あの建物はもう使われていない廃墟なのだろうと思った為に大暴れしまくったからだ。

 その結果、建物としての機能を果たせないほどにボロボロになってしまった。

 

「ど、どうかなさいましたのかな⁉︎」

「あ、いや、何でもない……うん」

 

 そういえば結構グラついていたような……下手すれば今頃倒壊でもしてるのでは⁉︎

 

 そう考えたキャロレインの心に不安が渦巻いた。

 そしてその不安は、すぐに的中した。

 

「し、市長ぉ! 休憩所が……休憩所だった場所が更地になってまぁぁす!」

「えっ」

 

 固まる市長、無慈悲な凶報、理不尽な減俸。

 その後、評議員の審査により無事に罰金が発生。

 報酬金から支払う形で実質七割の減額を食らった。

 

 ジーザス、神は死んだ。

 キャロレインは心の中で、ニコニコ顔に怒筋を浮かべながら天に向かって中指を突き立てた。




ふざけすぎだろ
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