魔導士は爆煙と狂う   作:宝剣サーモンソード

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作戦:ガンガンいこうぜ


4話:破壊者の辞書に、手加減の文字は無い

 鉄の森(アイゼンヴァルト)の何気ない言葉はキャロレインの逆鱗に触れた。

 ブチ切れたキャロレインは鉄の森(アイゼンヴァルト)に啖呵を切る。

 まさしく売り言葉に買い言葉、お互い睨み合いをするまでもなく戦闘態勢に入った。

 

「クソガキ……その生意気な口、二度と開かないようにしてやる!」

 

 鉄の森(アイゼンヴァルト)の魔導士達が声高々に、一斉に押し寄せる。

 

「ガキガキうっせぇぇ! お前ら全員、まとめて吹き飛ばす!」

 

 キャロレインは両手剣を振りかぶる。彼女の持つ重々しい得物は、徐々にその刃を赤く輝かせ始めた。

 

「ッしゃア‼︎」

 

 キャロレインは吼える。一見、逞しい巨漢にしか扱えないであろう両手剣をしかし、彼女はそれを顔色一つ変えず横薙ぎに振るった。

 ブォン! と底から響くような唸りを上げたと同時に、その剣閃が巨大な刃となって、襲いかかって来る鉄の森(アイゼンヴァルト)の魔導士達を次々に巻き添えにしていく。

 魔力で形成された剣閃は、そのまま壁に衝突すると共に轟音を響かせて泡のように爆発を起こした。

 

「まだだ! もう一丁! 丸焦げ焼き上がりィ‼︎」

 

 追撃、今度は切先から筋光を散らしはじめる両手剣を床に叩きつける。

 甲高い音が鳴り響くと同時に床が炸裂すると、派生するかのように随所で爆発引き起こされ、硝煙が立ち昇る。

 

 ルーシィとハッピーは、その光景を柱の影から眺めていた。

 

「うへぇ、エゲツな……」

 

「キャロレインの魔法は《破壊者(デバステイター)》っていうんだ。細かく説明しようとするとちょっと難しいんだけど……ざっくり言えば、攻撃範囲と破壊力は他の魔法の追随を許さない程強力なんだ。その代わり、一発毎の燃費が物凄く悪いんだって」

 

「そんな魔法をガンガンぶっ放してるワケ……?」

 

「両手剣持ってるでしょ? 一応あれである程度節約できるって話を聞いたよ、その分威力も落ちるみたいだけど」

 

「アレで⁉︎」

 

 ルーシィから見て、十分以上に殲滅力を発揮している破壊者(デバステイター)だが、それでも弱体化しているらしいと知った彼女は、まるで信じられないといった表情を浮かべた。

 

「あんなモン喰らったら一発でオシマイだぞ⁉︎」

「固まるな、散らばれ! 全方向から仕掛けるんだ!」

 

 苛烈な爆破攻撃に晒された鉄の森(アイゼンヴァルト)の魔導士達は、一掃を避けるべく散開。各々別の方向から彼女を攻撃しようと囲うように陣形を展開していく。

 

「そうはさせん」

 

 そこに立ち塞がるのはエルザ。

 群勢を見据えた彼女は腕を突き出して、どこからともなく片手剣を召喚した。

 

「ハッ、魔法剣士なんざ珍しくもねぇ、こっちにはゾロゾロいるぜぇ‼︎」

「邪魔しようってんなら、その鎧、ひん剥いたらぁ‼︎」

「やってみろ、やれるものなら」

 

 エルザは斬りかかってくる魔法剣士達を躱しながら一人、また一人と素早く鮮やかに仕留めていく。

 槍、双剣、斧……目まぐるしく得物を入れ換えながら戦う様は、まさしく舞闘と呼べるだろう。力強く、されど華麗に戦うエルザにルーシィは目を奪われた。

 

「この女ッ……なんて速さで換装するんだ⁉︎」

 

「換装?」

 

「魔法剣は別空間にストックされてるんだ。それを呼び出して、入れ換えながら戦う事を換装っていうのさ。実は、キャロの持ってる両手剣もそれとほぼ同じ。さっき、いつの間にか構えてたでしょ?」

 

 そういえば……とルーシィは、先程*1鉄の森(アイゼンヴァルト)の魔導士達が爆発を受けて吹っ飛んだの光景を思い出す。

 確かにあの時、キャロレインはいつの間にか両手剣を持っていた……と。

 

「へぇー……」

 

「エルザのスゴイ所はここからさ」

 

 ルーシィとハッピーが話している間に、鉄の森(アイゼンヴァルト)の戦力は大火力で暴れ回るキャロレインと、疾風の如く敵を薙ぎ倒すエルザにより既に大部分を失っていた。

 それでも数は残っているが、戦いが始まる前と比べればその差は明らかだった。

 

「さて、仕上げだ」

 

 エルザが両腕を広げると、纏っていた鎧が捲れるように剥がれていくと同時に、その素肌が露わになっていく。

 

「鎧が⁉︎」

 

「うわエッロ!」

 

 ルーシィは頬を若干赤く染めながら手で口を覆い、鉄の森(アイゼンヴァルト)の魔導士達は鼻息を荒げてやや興奮気味。一部はエルザに視線が釘付けになっていた。

 

「普通の魔剣士は武器を換装しながら戦うんだけど、エルザの場合は自身の能力を高める魔法の鎧にも換装しながら戦えるんだ。……それがエルザの魔法、《騎士(ザ・ナイト)》」

 

 エルザは質素な鎧姿から一変、天使のような翼と背輪のように浮遊する剣が神々しい白銀の鎧に包まれた。その名は天輪の鎧。

 

「エルザ? その名前、どこかで……もしや⁉︎」

 

 鉄の森(アイゼンヴァルト)の魔導士が一人、カラッカはエルザという名に心当たりを覚えた。妖精の尻尾(フェアリーテイル)にはヤバい女魔法剣士がいる。そういう話を彼は聞いた事があった。

 

 カラッカは鉄の森(アイゼンヴァルト)の中でも幹部級の力を持つ魔導士であり、魔導士としての戦闘経験もそれなりにあった。

 だが、エルザという名を聞いた彼は次第にその表情に焦りを見せる。

 

「舞え、剣達よ。循環の剣(サークル・ソード)

 

 剣がエルザを中心に輪を描いて踊る。剣の軌道上にいた魔導士達は誰一人としてその攻撃を防ぐこと叶わず、一様に倒れ伏した。

 

「間違いねぇ、思い出したッ! アイツは妖精の尻尾(フェアリーテイル)妖精女王(ティターニア)、エルザだッ‼︎」

 

 カラッカがそう叫んだ頃には、鉄の森(アイゼンヴァルト)は壊滅していた。

 数的有利などまるで無かったかのように、たった二人の魔導士によって一方的に制圧された。

 

「すっごぉい!」

 

「あい。エルザとキャロにかかれば、これくらい大した事はありません」

 

「嘘だろ……こんな事あってたまるかよ」

 

 支柱の影から観戦していたルーシィとハッピーが歓声を送るする一方で、カラッカはあり得ないと狼狽えていた。

 

「クッソぉ、こうなったら俺がッ」

 

 半ばヤケを起こしたビアードが飛び出す。彼もカラッカと同じ鉄の森(アイゼンヴァルト)の幹部級魔導士であった。

 ビアードは、拳に魔法を纏わせてキャロレインに向かって突っ込む。

 

「危ないッ!」

 

 キャロレインに距離を詰めるビアードを見て、ルーシィが叫ぶ。

 

「遅ぇよ! 逝っちまいやがれ!」

 

 ビアードは振りかぶった拳でキャロレインの顔面を殴り付けた。

 パンチの衝撃波がキャロレインの髪を揺らし、彼女は立ったまま動きを止める。

 シンと静まり返った発着場。見守っていたルーシィは固唾を飲んだ。

 

 呆気ない、幾ら強力な魔法が使えるとて所詮は子供(ガキ)。こうして一撃加えただけで黙ってしまったではないか。

 勝ち誇ったように口角を上げるビアード。しかし、彼は次の瞬間、戦慄の表情を浮かべた。

 拳から顔を半分覗かせるキャロレインは、何事もなかったかのように平然としていた。

 

 実際の所、ただ表情筋が死んでいるだけなのだが、それでもビアードからしてみればキャロレインの浮かべる表情は不気味で仕方がなかった。

 

 ふと、彼の脳裏にとある噂話の記憶が過ぎる。

 

 

『ずっと笑ってる……?』

 

『そうさ、何かが可笑しくて笑ってる訳じゃないらしい。終始笑顔を浮かべたまま、嵐のように暴れ回られて、気付いたら全滅……って話だ。で、その存在を恐れた裏社会の連中がソイツに付けた異名は───』

 

 

笑う怪物(スマイル・モンスター)……」

 

 ビアードは小声で呟き、脂汗を流した。

 

(もしや、今俺達は何かとんでもない奴等を相手にしているのか⁉︎)

 

 得体の知れない恐怖に悪寒を走らせたビアードは、キャロレインから飛び退こうとした。だがその時、彼は自分の腕が動かない事に気が付く。

 見れば、キャロレインがビアードの腕をガッチリと掴んでいるではないか。

 

「は、離せこのッ」

 

 ビアードは必死の形相で、もう片方の拳でキャロレインの頬にパンチを打つが、咄嗟に繰り出した所為か、その拳に魔法は纏っていなかった。そしてその時、彼はまるで何か()()()()でも殴ったかのような痛みを拳に覚えた。

 

(硬い……⁉︎ 魔法でぶん殴った時は気付かなかったが、コイツ一体)

 

「二発分、一括払いだ! 喰らえ魔法(マジカル)パンチッ‼︎」

 

 魔法(マジカル)パンチ

 魔法(マジカル)などと謳っているが、実際の所は己の腕力に物言わせただけの、ただの正拳突きである。

 

「ぐほぉッ⁉︎」

 

 殴られた勢いで水平にぶっ飛んだビアードは、そのまま壁に激突して意識を失った。

 

「釣りはテメェで取っとけってなァ!」

 

 ピクリとも動かなくなったビアードに向かって、キャロレインはそう吐き捨てた。

 

「ビアードが一撃でやられちまった……」

 

 一方で一人残されたカラッカ。彼は、あんな怪物共は自分の手に負えないと察すると、そそくさと逃げ出し、通路の向こうへと消えていった。

 

「ふぅーサッパリしたぜ、っぱストレスは適度に発散しなきゃな」

 

「そうか、良かったな。それで、この有様はどうするんだ?」

 

 エルザは眉を顰めて周辺を一瞥した。

 見れば、キャロレインによる暴虐とも言える魔法を浴びた発着場は既にボロボロになっており、以前の姿は影も形も無くなっていた。評議員が聞きつければ始末書モノである。

 

「うわ、滅茶苦茶じゃん。……誰だこんな事しやがったのは‼︎」

 

「お・ま・え・だッ‼︎」

 

 ボケてるのか本気で言ってるのか分からないキャロレインに、エルザは近くにハリセンでもあれば思いっきりぶっ叩きたい気分になった。

 

 エルザとキャロレインのやり取りを、後方で顔を引き攣らせて眺めていたルーシィ。

 彼女も今日まで色々な妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士達を見てきたが、例に漏れずキャロレインも彼らと同類であったと認識する事となった。

 

「まあいい……いや、よくはないが。さっき魔導士が一人逃げて行くのを見た。ルーシィ、逃げた魔導士を追うんだ」

 

「うえ⁉︎ 私が⁉︎」

 

 不意にエルザに指名されたルーシィは戸惑う。

 魔導士となってから日の浅い彼女にとって、一人で闇ギルドの魔導士を相手に取るかもしれない、というのは不安でしかなかった。

 

「キャロもついて行ってやれ」

 

 それを知ってか知らずか、エルザはキャロレインに、ルーシィと共に行動しろと伝えた。

 

「しゃーねぇなぁ……ほれ、いくぞ新人。序でにハッピーも」

 

 キャロレインは世話が焼けると言ったように了承すると、ルーシィとハッピーの背後にひょっこり現れ、サッと素早く一人と一匹を捕まえ脇に抱えて走り出す。

 

「ひぃん、見かけによらずパワフルぅぅ」

「あいぃぃ」

 

 キャロレインになされるがままのルーシィ達の声は、通路の向こうへとフェードアウトしていった。それを見送ったエルザは換装を解いて元の姿に戻ると、押せば倒れてしまいそうな足取りで柱に手を付いた。彼女は小刻みに震える手を押さえる。

 

(……魔導四輪で魔力を使い過ぎたか。正直、キャロが来てくれてよかった)

 

 オニバスから休み無しで魔導四輪を走らせてきただけに、エルザの魔力消費は激しいものだった。もし、キャロレイン抜きで鉄の森(アイゼンヴァルト)と戦っていれば、残存魔力の関係で厳しい戦いとなっていただろう。精神的に。

 もっとも、エルザが闇ギルドの木端魔導士に遅れをとる事はないだろうが。

 

(急がなければ。エリゴールが呪歌(ララバイ)を放送する前に、できるだけ住民達を遠くへ)

 

エルザは柱を背に一息つくと、駅の入り口へと向かった。

*1
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戦闘描写クッソ難しくてキレそう
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