LOVE TAIL   作:ナツ・ドラグニル

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これまでのLOVE TAILは‼


ナツ「S級クエスト行くぞ‼ルーシィ‼マキ‼」


ハッピー「てなわけで、オイラ達はルーシィに無理矢理連れられて悪魔の島って呼ばれてる『ガルナ島』に来たんだ」


ルーシィ「アンタ達が誘ったんでしょ⁉」


リン「で、そこには犬と眉毛ともみあげと、でっかい氷漬けのモンスターが居たんだ‼」


マキ「イミワカンナイ」


第25話 月の雫(ムーンドリップ)

 

 

 

「デリオラ...」

 

「オマエ等の師匠が封じた悪魔だァ?」

 

「ああ....間違いねぇ」

 

「元々、北の大陸にあったものがここに運ばれた?」

 

 

そこでマキは、ある可能性に思い至った。

 

 

「もしかして、島の呪いってこの悪魔の影響なのかしらね」

 

「考えられなくもねぇ」

 

「そうだね、デリオラはまだ生きているからね」

 

 

話を聞いていたナツが、グリングリン回しながら氷に近づいた。

 

 

「おし、そーゆー事ならこの悪魔をぶっ倒してみっか」

 

「だったら私も力を貸すよ!!ナツ君!!」

 

「何であなた達は力でしか解決策を思いつかないのですか...」

 

「いいから見てろって」

 

 

何でも壊そうとするナツとホノカに呆れるウミだったが、急にグレイがキッっとナツを睨みだした。

 

 

「どぅおっ!!!」

 

 

次の瞬間、いきなりグレイがナツを殴りだした。

 

 

「ナツ!!?」

 

「ナツ君大丈夫!?」

 

 

殴られたナツを心配し、ウミとホノカが駆け寄る。

 

 

「グレイが殴ったにゃ!!!」

 

「いつもの事かもしれないけど!!」

 

 

グレイがナツを殴り飛ばした事に、驚くリンとマキ。

 

 

「グレイ!!!てめぇ..いきなり何しやがる!!!」

 

 

怒鳴るナツだったが、グレイがいつもと様子が可笑しい事に気づいた。

 

 

「火の魔導士がこれに近づくんじゃねぇ!!!てめぇもだホノカ!!!」

 

 

今までに見た事のないグレイの変貌ぶりに、全員が動揺する。

 

 

「氷が溶けてデリオラが動き出したら、誰にも止められやしねぇんだぞ!!!」

 

「んだと、そんなに簡単に溶けちまうものなのかよ!!!」

 

「.........いや.....」

 

 

ナツの言葉に面を喰らったグレイは、今にも消えてしまいそうな声で否定した。

 

 

「大丈夫?」

 

 

グレイの肩に手を置き、心配するコトリ。

 

 

「オイ!!!殴られ損じゃねえか!!!凶暴な奴だな」

 

「ナツが言う?」

 

 

殴られた事に怒るナツだが、ナツの放った凶暴という言葉にハッピーが呆れる。

 

 

師匠(ウル)はこの悪魔に絶対氷結(アイスドシェル)っつー魔法をかけた」

 

 

グレイに続いて、コトリも説明する。

 

 

「それは溶ける事のない氷、いかなる爆炎の魔法をもってしても溶かす事の出来ない氷なの」

 

「溶かせないと知ってて、なぜこれを持ち出した......?」

 

 

グレイの疑問に、ルーシィが仮説を立てる。

 

 

「知らないのかもね、何とかして溶かそうとしてるのかも」

 

「何の為にだよっ!!!」

 

「し..知りませんけど....」

 

 

イラついたグレイが怒鳴り、それにルーシィが委縮する。

 

 

「落ち着いて下さいグレイ、あなたらしくありませんよ」

 

「ちっ...くそっ......!!!調子でねえな」

 

 

ウミに諭された事によって、グレイは気持ちを落ち着かせようとする。

 

 

「それにしても、誰が何の為にデリオラをここに....」

 

「簡単だ、さっきの奴等を追えばいい」

 

「そうね」

 

「そうですね」

 

「いや」

 

 

ナツの提案に乗ろうとするウミ達だったが、グレイだけが乗らなかった。

 

 

「ここで待つんだ」

 

「何を?」

 

 

グレイの言葉の意図が分からず、リンが質問する。

 

 

「月が出るまで待つ」

 

「月......って!!まだ昼だよ!!!」

 

「無理無理!!!ヒマ死ぬ!!!」

 

 

グレイの提案に、今度はナツとホノカが却下する。

 

 

「グレイ、どういう事?」

 

「島の呪いもデリオラも、すべては〝月〟に関係してると思えてならねぇ」

 

「確かに、あの人達も『もうすぐ月の光が集まる』って言ってたしね」

 

 

マキの質問にグレイが答え、コトリも同意する。

 

 

「そっか....確かに何が起こるか、あいつ等が何をするか....気にはなるわね」

 

「オレは無理だ!!!」

 

「私も無理!!!追いかける!!!」

 

 

 

 

 

しばらくして......

 

 

 

 

 

ぐが――

 

ぐぅ――

 

 

いびきをかいて地面に寝る、ナツとホノカ。

 

 

「って...早っ!?」

 

「本当......こいつらって本能のままに生きてるのね」

 

「あい」

 

「それがナツ君とホノカちゃんです」

 

 

さっきまで騒いでいたにも関わらず、一瞬で眠りにつく2人に呆れるルーシィとマキ。

 

 

「しょうがないですね」

 

 

そう言って、ウミがナツの背負っていたバックから飛び出していた布団を取り出し、2人に掛ける。

 

 

「ある意味羨ましいって言うか」

 

 

マキはそう言うと、ナツ達と距離を取って座るグレイとコトリを見る。

 

 

「(ウル..)」

 

「(師匠..)」

 

 

グレイとコトリは、師匠であるウルの事を思い出していた。

 

 

『グレイ....コトリ....ついてこれるか、私の修行は厳しいぞ』

 

『もちろん!!!』

 

『何だってやってやらァ!!!』

 

 

かつての師匠との修行を思い出し、感傷に浸るグレイとコトリ。

 

 

「はァ――ナツとホノカの言う通り、何もせず待つだけってヒマねやっぱり」

 

「あい」

 

 

マキの言葉に、リンが相打ちを打つ。

 

 

「そうだ!」

 

 

すると突然、ルーシィが何かを思いついたのか、ぱんっと手を合わせる。

 

 

ルーシィは、ヘッドにハープの印が描かれた銀色の鍵を取り出した。

 

 

「開け!!!琴座の扉‼リラ!!!」

 

 

ぽふんと音を立て、大きなハープを背負った少女が現れる。

 

 

「キャ―――!!!超久しぶりィ!!ルーシィー!!!マキィー!!!」

 

「はぁいリラ」

 

「久しぶりね」

 

 

久しぶりに会えたのが嬉しいのか、リラと呼ばれた少女は大きく手を振って喜びを表す。

 

 

「もおっ!!!たまにしか呼んでくれないんだもーん!!!リラだってもっともっと活躍したいのに!!!ルーシィってばいけずぅ‼」

 

「いけずって...だってあんた呼べる日って月に三日くらいじゃない」

 

「え?ええっ!!?そうだったっけぇ!?」

 

「自分が契約した内容ぐらい、覚えときなさいよ。意味分かんない...」

 

「また変なのが来た...」

 

 

3人のやり取りを見ていたハッピーは、タウロスやキャンサーなどに続いて癖の強い星霊に戦慄する。

 

 

「でぇ?今日は何の詩歌ってほしい?」

 

「何でもいいわまかせる」

 

「オイラ魚の歌がいい!!!」

 

「じゃあてきとーに歌うわね、イェーイ」

 

 

ハッピーがリクエストしたが、無視されてしまった。

 

 

「リラはすっごく歌うまいのよ」

 

「なるほど、琴座だけはありますね」

 

「ミラだって上手だよ、魚の歌を歌ってくれるし」

 

 

リクエストを受けてくれなかったせいか、不満げにハッピーは喋る。

 

 

ポロン、ポロロン、ポローンとハープを演奏し歌い出す。

 

 

「生まれる言葉....」

 

「おおっ」

 

 

ルーシィが褒めるだけはあり、リラの演奏を聴いてハッピーは驚きの声を上げる。

 

 

ルーシィ達も目を閉じて聞いており、心なしか寝ているナツ達も気持ちよさそうな顔をしている。

 

 

「消えゆく言葉....あなたの中に~♪生き続ける言葉~」

 

 

その歌声は、離れて座っているグレイ達にも届いた。

 

 

「立ち止まりそうな時~勇気へと変わる~さあ、歩き出そう♪あの時よりあなたは強くなっているから」

 

「うぅ...」

 

「......っ」

 

 

歌詞がかつての自分達に当てはまる所があったのか、グレイとコトリはまたウルとの修行を思い出す。

 

 

「もう迷わないで♪あの時の言葉を..信じて..」

 

 

そして身体を震わせながら、グレイとコトリは静かに涙を流す。

 

 

「え?ちょ..グレイ?」

 

「ちょっとコトリどうしたのよ」

 

 

グレイ達が泣き出した事に、ルーシィ達は動揺する。

 

 

「あ?何だよ」

 

「何でもないよ...」

 

 

グレイ達はルーシィ達の方に顔を向ける事無く、そっけなく返事をする。

 

 

「泣いた....」

 

 

グレイ達が泣いた所を見た事が無かったハッピーは、驚きを隠せなかった。

 

 

「確かにリラは、人の心情を読む歌が得意だけど....」

 

「グレイ君とコトリちゃんが泣いたニャ」

 

「泣いてねえよ」

 

「見間違いじゃないかな」

 

 

ルーシィは慌てて、別の曲をリクエストする。

 

 

「もっと明るい歌にしてよリラ」

 

「え―――!?だったらそう言ってぇ」

 

「つーかよく考えたら誰か来たらどーすんだよ、黙ってろ」

 

 

そこでようやく、グレイが重要な事に気づき指摘する。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

あれから時が経ち、ナツとホノカ以外も地面に寝転がって眠っていた。

 

 

その時、ゴゴゴゴゴと地面が揺れて全員が目を覚ました。

 

 

「何の音?」

 

「夜か!!!」

 

 

洞窟内に響く地響きに、全員が目を覚ました。

 

 

次の瞬間、突如天井に紫色の魔方陣が出現し、封印されたデリオラに紫色の光が降り注ぐ。

 

 

「天井から..」

 

「光が降ってきました!!!」

 

 

出現した魔方陣に、マキとウミは声を上げて驚く。

 

 

「紫の光..もしかして月の光!!?」

 

「何だこれ!!」

 

「どうなってるにゃ―――っ!!!」

 

 

光の正体にコトリが気が付き、なぜ光が注がれているのか分からず、ハッピーとリンは驚愕する。

 

 

「月の光がデリオラに当たってる!!」

 

「偶然なんかじゃねえぞコリャ」

 

 

この現象が意図的に仕込まれている事に、気づいたグレイとナツ。

 

 

「行くぞ!!光の元を探すんだ!!!」

 

『オウ!!』

 

 

グレイを先頭に、ナツ達は上へと目指した。

 

 

階段を駆け登った先に、2つの魔方陣が張られていた。

 

 

「この遺跡の真ん中に、魔方陣が張られてたんですね」

 

 

今起きている現象を、ウミは推測する。

 

 

「もっと上だよ!!」

 

 

ホノカの言葉を合図に、ナツ達は更に上へと上がった。

 

 

階段を駆け上がり外に出たナツ達は、月から伸びる光を囲む怪しげな集団が目に入った。

 

 

ナツ達は見つからないように、近くの物陰に身を隠す。

 

 

「何だアレ」

 

「しっ」

 

 

隠れているにも拘らず、そこそこデカい声で喋るナツを注意するルーシィ。

 

 

「クーペラ~...ク~ラカ~..ジエラム..セム..デイオル~ナ.. クーペラ~...ク~ラカ~..」

 

 

何か呪文のような言葉を呟き、月から光を集める謎の集団。

 

 

「月!!?本当に月の光を集めてるのあの人達」

 

「それをデリオラに当てて....!?どうする気!!?」

 

 

ホノカとマキの疑問に、リラが答えた。

 

 

「べリア語の呪文....月の雫(ムーンドリップ)ね」

 

「アンタ..まだいたの?」

 

 

寝ている間に既に帰っていると思っていた為に、リラが居る事に目を見開いて驚くルーシィ。

 

 

「そっかそういう事なのね....」

 

「何..何なの?」

 

「こいつ等は、月の雫(ムーンドリップ)を使ってあの地下の悪魔を復活させる気なのよ!!」

 

「何!!?」

 

 

リラの説明にナツが驚き、グレイが食いつく。

 

 

「バカな....絶対氷結(アイスドシェル)は溶けない氷なんだぞ」

 

「その氷を溶かす魔法が月の雫(ムーンドリップ)なのよ。1つに集束された月の魔力はいかなる魔法をも解除する力を持ってるの」

 

「そんな....」

 

「あいつ等....デリオラの恐ろしさを知らねえんだ!!!」

 

 

リラの説明にナツ達は言葉を失い、グレイは誰よりも怒りをあらわにする。

 

 

「この島の人が呪いだと思ってる現象は、月の雫(ムーンドリップ)の影響だと思うわ。1つに集まった月の魔力は、人体をも汚染する。それほど強力な魔法なのよ」

 

「あいつ等ァ......」

 

「待って!!!」

 

「うほ」

 

 

今にも飛び出そうとするナツの顎に肘鉄を入れる事で、黙らせたルーシィ。

 

 

「誰か来たわ」

 

 

ルーシィの言う通り、謎の集団に近づく5人の姿があった。

 

 

その内3人は、ユウカ、トビー、そしてシェリーだった。

 

 

残りの2人は両側に巻き角がついた兜を被った男と、フードの付いた黒いローブを纏い、被っているフードのせいで顔が見えない人物だった。

 

 

「くそ..昼起きたせいで眠い」

 

「おおーん」

 

 

眠そうなユウカと、船を漕いで今にも眠りそうなトビー。

 

 

「結局侵入者も見つからなかったし」

 

「本当にいたのかよっ!!!」

 

 

先程まで眠りそうだったにも拘らず、くわっと豹変するトビー。

 

 

「悲しい事ですわ零帝(れいてい)様、魔王様。昼に侵入者が居たようなのですが....取り逃がしてしまいました。こんな私には愛は語れませんね」

 

「侵入者..」

 

『!』

 

 

零帝と呼ばれた男の声に、グレイとコトリが反応する。

 

 

「あいつが零帝か!?」

 

「えらそーな奴ね、変な仮面つけちゃって」

 

「そっかなぁ、かっこいいよ」

 

 

零帝について話し合う、ナツ達。

 

 

「あの男が零帝って事は、隣のフード被った奴が魔王かしらね」

 

「魔王って割には、ずいぶん華奢ですね」

 

「想像していたのと大分印象が違うにゃ」

 

「うん、もっとごつい人だと思ってた」

 

 

ウミ達は魔王と呼ばれた人物が、物語でよく出てくるようなラスボスのような人物だと予想していたが、実際は零帝よりも身長が低かった。

 

 

「デリオラの復活はまだなのかな?」

 

「この調子だと、今日か明日には.....と」

 

「どっちだよ!!!」

 

 

魔王の質問にシェリーが答え、その曖昧な答えにトビーが突っ込む。

 

 

「いよいよね......」

 

『.........』

 

 

声からして女性である事が分かるが、その声を聴いたグレイとコトリは言葉を失った。

 

 

「侵入者の件だが、ここにきて邪魔はされたくないな」

 

「ええ、この島は外れにある村にしか人はいないハズ」

 

 

魔王の言葉を聞いた零帝は、掌を村のある方へ向け、ユウカ達へと指示を出す。

 

 

「村を消してこい」

 

「はっ」

 

「了解!!!」

 

「おおーん!!」

 

「何!!?」

 

「村の人達は関係ないのにっ!!!」

 

「ど....どうしよう!!!」

 

「どうもこうもないですね」

 

 

零帝の指示に、ナツ達は度肝を抜く。

 

 

「血は好まんのだがな....」

 

「しかたのない犠牲だね....」

 

 

「この声..オイ....ウソだろ..」

 

「ウソ....だって....」

 

 

ナツ達とは違い、指示ではなくて零帝と魔王の声に、グレイとコトリは絶句する。

 

 

「もうコソコソするのはゴメンだ!!!」

 

 

耐えきれなくなったのか、ナツが大声を上げた。

 

 

ナツは口を限界までぷっくう~と膨らませると、天に向かって巨大な炎を吐き出した。

 

 

「邪魔しに来たのはオレたちだァ!!!!」

 

 

ナツの大声で、零帝達もナツ達の存在に気づいた。

 

 

「こうなったら腹を決めるしかないですね」

 

「よ~し!!」

 

 

ウミは拳を、ホノカは召喚した〈灼爛殲鬼〉を構える。

 

 

「私達も行くわよ」

 

「もう..なるようにしかならないわね」

 

 

マキは〈破軍歌姫〉を召喚し、ルーシィも鍵を構える。

 

 

「私どうすればいい?歌おうか?」

 

「あんたは戻って、マキみたいに能力強化する事は出来ないでしょうが」

 

「え~つまんない~」

 

 

リラはそう言うと、星霊界へと帰っていった。

 

 

「あの紋章!!妖精の尻尾ですわ!!」

 

「なるほど....村の奴等がギルドに助けを求めたか」

 

 

シェリーがナツの肩に入っている紋章で正体に気づき、ユウカが何故ここにいるのかを瞬時に理解する。

 

 

「何をしている、とっとと村を消してこい」

 

 

しかし、零帝はナツ達を無視して再度指示する。

 

 

「え?」

 

「何で?」

 

 

姿を現せば村を襲わないと思っていたナツ達は、尚も村を消そうとする零帝に動揺する。

 

 

「邪魔をする者、それを企てた者、全て敵だ」

 

「何でえっ!!?」

 

「てめえぇぇっ!!!!」

 

 

理解が出来ず、零帝に向かって走り出すナツだったが、そのナツをグレイが追い越した。

 

 

「その下らねぇ儀式とやらをやめやがれぇぇ!!!!」

 

 

グレイは右手に魔力を集中させ、それを地面へと叩きつけた。

 

 

次の瞬間、ズギャギャギャと音を立て零帝へ向かって地面が凍り付く。

 

 

「氷!?」

 

「フン」

 

 

驚くシェリーを他所に、零帝は左手を掲げ地面へと叩きつける。

 

 

驚く事に、零帝の手からグレイと同規模の氷が発生する。

 

 

「こいつも氷!!?」

 

 

相手がグレイと同じ造形魔法を使った事に、ハッピーは驚く。

 

 

お互いの氷がぶつかり、バキィと音を立てて木端微塵に破壊する。

 

 

「〈氷結傀儡〉...」

 

 

次に魔王が動くが、何と相手はコトリと同じ女神魔法である〈氷結傀儡〉を召喚する。

 

 

「噓でしょ!?なんであいつが〈氷結傀儡〉を!?」

 

「どうなってるにゃ!!?」

 

 

今度はコトリと同じ魔法を使う魔王に、マキとリンが驚きの声を上げる。

 

 

「消えて...」

 

 

相手の〈氷結傀儡〉の口から、冷気を纏ったビームが発射される。

 

 

「〈氷結傀儡〉!!!」

 

 

それを、コトリも同じ技で迎え撃つ。

 

 

お互いの技が命中し、霧散する。

 

 

コトリはグレイの横に並び立つが、グレイもコトリも零帝と魔王の事を物凄い形相で睨みつける。

 

 

「リオン!!アンジュ!!」

 

「貴方達、自分達が何やってるのか分かってるの⁉」

 

「え?」

 

「リオン?アンジュ?」

 

 

グレイが零帝と魔王の事を名前で呼んだ事に、ナツ達は驚く。

 

 

「ふふ、久しいなグレイ、コトリ」

 

「久しぶりだね」

 

 

アンジュと呼ばれた魔王はフードを外すと、露わになったのはウェーブがかかった茶髪のセミロングヘアが特徴の女の子だった。

 

 

「知り合いだったのですか!!?」

 

「ええっ!!?」

 

 

相手がまさかのグレイ達の知人で会った事に、ウミとマキも驚く。

 

 

「何のマネだよ!!!コレァ!!!」

 

「村人が送り込んできた魔導士がまさかグレイ君とコトリちゃんだったとはね、知ってて来たの?それとも偶然かな?」

 

「まぁ、どちらでもいいが....」

 

 

グレイの問いに、答えになっていない返答をするリオンとアンジュ。

 

 

「零帝リオンと魔王アンジュの知り合いか?」

 

「おおっ!?」

 

 

ユウカ達もグレイ達がリオン達の知り合いであった事に、驚く。

 

 

「早く行け、ここは俺達2人で十分だ」

 

「はっ」

 

「おおーん!!!」

 

「行かせるかっての!!!」

 

「逃がさないよ!!!」

 

 

リオンの指示で走り出すシェリーたちを、ナツとホノカは追いかけるように走り出した。

 

 

「よせ!!!ナツ!!!動くなっ!!!」

 

「駄目!!!ホノカちゃん!!!止まって!!!」

 

 

グレイが止めるよりも先に、リオンが動いた。

 

 

「うおっ」

 

「きゃっ」

 

 

リオンがバッと片手を掲げると、ナツとホノカに冷気が渦を巻いて集まっていく。

 

 

「何!?」

 

「ナツ!?」

 

「ホノカ!?」

 

 

次の瞬間、ナツとホノカの体が凍り付いていく。

 

 

「ハッピー!!ルーシィを頼む!!!」

 

「リンちゃんはマキちゃんを!!!」

 

『あい!!』

 

 

ハッピーとリンは(エーラ)を展開して、ルーシィとマキを掴んでこの場から離れる。

 

 

「ちょっ......」

 

「何を......」

 

 

またも片手に冷気を纏い、ハッピー達を攻撃しようとするリオン。

 

 

「うおおっ!!!」

 

「!!」

 

 

ハッピー達を逃がすために、リオンに向けて氷の散弾を放つグレイ。

 

 

しかし、リオンはシールドを展開し、グレイの攻撃を防ぐ。

 

 

「逃がさない......」

 

 

今度はアンジュが、氷結傀儡の口に冷気を凝縮させてハッピー達に狙いを定める。

 

 

「させないよ!!!」

 

 

アンジュがハッピー達に攻撃するより先に、コトリの氷結傀儡の超低温のブレスが放たれた。

 

 

「......」

 

 

アンジュは特に反応示すことなく、難なく後ろに跳ぶ事で攻撃を避ける。

 

 

「くっそォ!!!」

 

「何これ!?動けない!!」

 

 

ピキピキピキと音を立てて、ナツ達の体が凍っていき身動きを取れなくさせていた。

 

 

「ハッピー!!!ナツ達を見捨てるの!!?」

 

「そうよリン!!!このままじゃホノカ達が!!!」

 

「あいつは空間を冷気の魔法で包んでいた!!!」

 

「あのままじっとしてたら、今度はリン達が氷にされてたにゃ」

 

「でも....」

 

「このままじゃナツ達が....」

 

 

ハッピーとリンの説明を聞いても、納得できず心配そうにルーシィとマキはナツ達の方を見る。

 

 

「全員やられたら誰が村を守るんだよぉ!!!!」

 

 

そんなハッピーの叫びで、ようやくルーシィ達はハッピー達の顔を見た。

 

 

「......!!」

 

「うぅ......」

 

「ハッピー.........」

 

「リン......」

 

 

歯を食いしばり、泣くのを堪えようとするハッピー達の姿が、ルーシィ達の眼に入った。

 

 

「ごめん......ナツ達を助けたいのガマンしてたんだね....」

 

 

ハッピー達の心情を察して、謝るルーシィ。

 

 

「きっとナツ達なら大丈夫よ!!!」

 

「そうよ!!!火竜(サラマンダー)とイフリートに氷なんて効くもんですか!!!」

 

『あいっ!!!』

 

 

ルーシィとマキの励ましを受け、ハッピーとリンは元気よく答えた。

 

 

ハッピー達はそのまま、村を目指した。

 

 

「スキを作って女の子2人と猫を逃がしたのね....」

 

「まあいい....奴等ごときじゃシェリーたちは止められんだろう」

 

「妖精の尻尾の魔導士を甘く見るんじゃねえぞコラァ!!!」

 

 

アンジュとリオンの言葉に、ナツはそう宣言する。

 

 

しかし......

 

 

突如、グレイがナツを蹴っ飛ばした。

 

 

突然の出来事で、ナツは直ぐに理解できなかった。

 

 

「どぅおわぁああぁあっ!!!!何しやがる―――――!!!!グレ―――――イ!!!!」

 

 

ナツが倒れた先が坂道だったせいで、そのまま叫びながら転がっていく。

 

 

「ナツ君!!?」

 

 

身動き出来ないにも拘わらず、ナツを助けようと後を追おうとしたホノカを、コトリが背中を押した。

 

 

表現でなはく、物理的(・・・)に。

 

 

「え......?」

 

 

グレイに続いて、コトリまでそんな事をするとは思えなかったホノカは思考が追いつかなかった。

 

 

「えぇええええええっ!!!!なんで―――――!!!!」

 

 

そのままナツに続いて、ゴロゴロと転がり落ちていく。

 

 

「グレイ!!コトリ!!あなたたち一体何を......」

 

 

咄嗟の事で直ぐに動けなかったウミが、2人に詰め寄る。

 

 

「わりぃが今は説明してるヒマがねぇ」

 

「ウミちゃんは2人の事をお願い」

 

 

2人はリオンとアンジュから視線を逸らす事無く、ウミの質問に答えた。

 

 

「はぁ......分かりました。その代わり後で詳しい話を聞かせてもらいますよ」

 

 

そう言って、ウミはナツ達を追うべくこの場から離れた。

 

 

「相変わらずムチャをする、仲間じゃないのか?」

 

「アレはその気になれば、氷ごと中身を破壊できる魔法だろ」

 

 

リオンの問いに、ナツ達を凍らせた魔法の性質についてグレイが語る。

 

 

「なるほど、それでオレの魔力の届かない所へやった訳か」

 

「2人とも瞬時にそこまで判断出来るようになったんだ。成長したね」

 

 

リオンとアンジュの言葉に、怒気を帯びた声でグレイとコトリが言葉を返す。

 

 

「いい加減先輩ヅラすんのやめてくんねえかな」

 

「そうだよ、リオン君、アンジュちゃん。こんな事をするあなた達はもうウルの弟子じゃない」

 

 

グレイとコトリの言葉に、リオンは被っていた兜を脱ぎながら返答する。

 

 

「おまえ達もさ、グレイ、コトリ。ウルはもうこの世にはいないのだからな」

 

 

リオンの言葉を聞いて我慢の限界だったのか、グレイと普段は怒らないコトリが大声を上げる。

 

 

「デリオラを封じる為に命を落としたのよ!!!!」

 

「ウルの残したものをてめぇらは壊そうとしてるんだぞ!!!!」

 

「記憶をすりかえるな..ウルはお前達が殺したんだ」

 

 

右サイドに逆立った水色の髪に、切れ長の目が特徴の男の顔が露わになった。

 

 

リオンの言葉に心当たりがあるのか、その身を震わせるグレイとコトリ。

 

 

「よくおめおめと生きていられたものだな」

 

 

☆★☆★☆★

 

 

「大丈夫ですか!?ナツ!!ホノカ!!」

 

 

場所は変わり、頂上から麓まで転がったナツ達にようやく追いついたウミ。

 

 

「ぬっ、くっ、だっ」

 

「うぅぅぅ......」

 

 

転がったせいで地面に埋まってじたばたと脱出しようとするナツと、転がったせいで目を回しているホノカ。

 

 

「だはっ!!」

 

 

ナツは口から炎を吐き出し、その反動を利用し穴から無事脱出する。

 

 

ナツの怒りを表現するように、顔からゴオオオオオと炎が噴き出す。

 

 

「どうやら大丈夫そうですね」

 

 

その様子を見たウミは、心配いらないと判断した。

 

 

「何処が大丈夫なんだよ!!おい!!起きろホノカ!!」

 

 

ウミに反論しながらも、ナツは目を回すホノカを起こす。

 

 

「う~......世界が回ってる~......」

 

 

ナツより三半規管が弱かったのか、明らかにホノカの頭上にピヨピヨとヒヨコが飛んでいるようだった。

 

 

「グレイ....あのやろォ..おぼえてやがれぇ!!!!」

 

「うぅ...コトリちゃん何で....」

 

「さっきの2人と、何か因縁があるんでしょう」

 

 

ようやく視界が戻ったのか、ウミの力を借りてようやく起き上がるホノカ。

 

 

「しっかし、火で溶けねぇってのはどうなってんだ!!この氷!!!」

 

「もしかしたら、グレイ達とは氷の性質が違んじゃないでしょうか?」

 

 

ウミはナツとホノカの身体を覆っている氷を見比べながら、推測を立てる。

 

 

「良し!!ホノカ!!〈灼爛殲鬼(カマエル)〉で俺を攻撃しろ!!!」

 

「無理だよ!氷が邪魔して〈灼爛殲鬼〉を何時もみたいに振り回せないよ!」

 

 

ナツは自身の火で溶かせないなら、ホノカの火で溶かそうとする。

 

 

しかし、氷が邪魔して〈灼爛殲鬼〉を扱えなかった。

 

 

「そんな事より、今は村に向かう事を優先しましょう」

 

「そうだ!!んな事言ってる場合じゃねえ!!!」

 

「早く村に行かないとね!!!」

 

 

ウミの提案に、2人は直ぐに乗って村に向かって走り出す。

 

 

「くそっ!!!走りづれぇっ!!!」

 

「わっ!!とっとっと!?」

 

 

どたどたと何とか走ろうとするが、走りづらいのかホノカは転びかけてしまう。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

ガルナ島から少し離れた海域に、ガルナ島へ1隻の海賊船が向かっていた。

 

 

しかし、その海賊船は操縦している船長らしき人物以外は、甲板の上で寝っ転がり武器も散乱していた。

 

 

「あ....あんな島に何しに行くつもり......あっ!!ですか?」

 

「いいから舵をとれ」

 

「ひっ」

 

 

その船には何とエルザが乗っており、船員は殆どがエルザによって伸されたようだった。

 

 

「なぁ、本当に勘弁しろよ......いやいやいや!!してくださいよ!!」

 

 

余程エルザが怖かったのか、言葉を選びながらエルザにガルナ島について船長は語りだす。

 

 

「ガルナ島は呪いの島だ.........噂じゃ人間が悪魔になっちまうって.........」

 

「興味がない」

 

「あぁ...そうですかぁ~」

 

 

自身の発言をエルザに一刀両断され、自暴自棄となる。

 

 

「掟を破った者を仕置に行く、それだけだ」

 

「格好いい!!」

 

「素敵です!!」

 

「いきやしょう!!姐さん!!」

 

「どこまでも着いていくっす」

 

 

エルザの言葉とその姿が格好良かったのか、下っ端達が湧き出した。

 

 

「うむ、急いでくれ」

 

『あいさー』

 

 

本来なら突っ込み所満載な場面だが、エルザは天然が故か余り気にしていなかった。

 

 

「ワシも......ワシも混ぜてください!!お姉さまぁ!!」

 

 

仲間外れにされていた船長も、他の船員同様に湧き出した。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

場所は代わり、ガルナ島の頂上付近でグレイ達はリオン達と対峙する。

 

 

「何度でも言うぞ、ウルを殺したのはおまえたちだ」

 

「名前を口に出すのもおこがましいよ」

 

 

リオンの手から人一人分の大きさの氷がグレイに放たれ、アンジュの氷結傀儡の巨体がコトリに体当たりする。

 

 

「がっ」

 

「くっ」

 

 

何も反応する事も出来なかったグレイとコトリはズガァと音を立てて壁に激突し、瓦礫の下敷きになる。

 

 

「リ....リオン..」

 

「アンジュちゃん...」

 

 

重なった瓦礫をどかしながら、ふらふらと立ち上がる2人。

 

 

「どうした?うしろめたくて手を出せんか?ならば邪魔をしないでほしいな。オレ達はデリオラを復活させる」

 

 

リオンの言葉に、グレイ達はようやく覚悟を決める。

 

 

「させねえよ」

 

「させないよ」

 

「それでいい」

 

「久しぶりに手合わせしようか」

 

 

そう言うとリオンは持っていた兜を捨て、アンジュは纏っていたローブを脱ぎ捨てた。

 

 

フードの下には、黒を基調としたレースのような下着か水着か分からないセクシーな衣装に身を包み、手足も似たようなレースを着用しているが足先が完全に出ており素足の状態だった。

 

 

リオンが右手を掲げると、グレイと同じ水色の魔方陣が出現する。

 

 

「アイスメイク〝大鷲(イーグル)〟」

 

「アイスメイク〝(シールド)〟」

 

 

鷲の形をした氷が襲い掛かるが、グレイはそれを盾で防ごうとする。

 

 

「!!!」

 

 

しかし、ヒュンヒュンヒュンと鷲の形をした氷は意思があるかのように、盾を避ける。

 

 

「おまえは物質の造形が得意だった〝静〟のアイスメイク」

 

 

リオンの攻撃は盾をすりぬけ、グレイに直撃する。

 

 

「オレの造形は生物..〝動〟のアイスメイク。動き回る氷だと忘れたか」

 

「ぐはぁっ」

 

「グレイ君!?」

 

「何処を見てるの?」

 

「きゃあっ」

 

 

グレイを心配するコトリに、アンジュが氷結傀儡の体当たりで容赦なく攻撃する。

 

 

ゴロンと地面を転がるグレイは、転がりながらも魔法を発動する。

 

 

「アイスメイク〝大槌兵(ハンマー)〟」

 

 

リオンの上空に、巨大な氷のハンマーが現れる。

 

 

リオンは慌てる事無く、片手を上げる。

 

 

「アイスメイク〝大猿(エイプ)〟」

 

 

グレイのハンマーの攻撃を、地面から現れた氷で出来た大猿の交差された両腕で防がれる。

 

 

「氷結傀儡‼」

 

「氷結傀儡...」

 

 

グレイ達が戦っている間、コトリ達も互いに同じ技を放つ。

 

 

金属の様な体表に所々白い文様があるコトリの氷結傀儡に対して、アンジュのは黒い文様がある暗いイメージの氷結傀儡だ。

 

 

お互いのブレスが衝突し、相殺される。

 

 

「話にならん、造形魔法に両手を使うのも相変わらずだ」

 

「コトリちゃんも、氷結傀儡の力を充分に出せてないね」

 

 

一通り戦ったリオン達は、それぞれの欠点を指摘する。

 

 

「ウルの教えだろ、片手の造形は不完全でバランスもよくねぇ」

 

 

リオンの指摘に反論するグレイに対し、コトリは確かに霊装を纏えていない為に何も言い返せなかった。

 

 

「俺は特別なんだ、ウルの力もとうの昔に超えてしまった」

 

「うぬぼれるなよ....」

 

「その言葉お前に返そう、一度でも俺に攻撃を当てた事があったかな」

 

「あの頃と一緒にするんじゃねぇ!!!」

 

 

グレイは両手に、今までの比にならない程の魔力を纏う。

 

 

氷欠泉(アイスゲイザー)!!!!」

 

 

大地を抉るほどの氷の結晶が、ゴオッっと轟音を轟かせリオンに直撃する。

 

 

しかし、グレイの渾身の一撃はあっけなく粉砕される。

 

 

「一緒だ」

 

 

自身の攻撃がまったく効いていない事に、口をあんぐりとあけて驚愕する。

 

 

「オレはお前達の兄弟子であり、アンジュもお前達の姉弟子でお前達より強かった。オレは片手で造形魔法を使えたが、お前は出来なかった」

 

「くぅ...」

 

 

グレイは悔しそうに、歯を食いしばった。

 

 

「何も変わらん、互いの道は違えどオレ達の時間はあの頃のまま凍り付いている」

 

 

リオンは何かをすくうように、片手を上げる。

 

 

「ぐぁあぁあっ!!!!」

 

 

次の瞬間、足元から氷の龍が現れてグレイを襲い、上空へと舞い上げる。

 

 

「だから俺は氷を溶かす、塞がれた道を歩き出す為に」

 

「がはっ」

 

 

地面に落下したグレイは、そのまま呻き声を上げる。

 

 

グレイとの戦いに決着がついたからか、リオンは今現在もコトリと戦うアンジュに移す。

 

 

「やはり何度見ても、アンジュのあの力は凄まじいな」

 

「あの力?」

 

 

リオンの言葉に意味が解らず、グレイは疑問を抱く。

 

 

「可笑しいと思わなかったのか?以前はコトリと同じ氷結傀儡だったにも関わらず、今は黒く変色してしまっている。もう一つ言うと、今のアンジュの服装は霊装を纏っている状態だぞ」

 

 

リオンに言われ、ようやくグレイもアンジュをよく観察する。

 

 

「あれはなアンジュが反転した姿だ」

 

「反転?」

 

「なんだコトリから聞いてないのか?女神魔導士は絶大な力を手にするのに対し、あるデメリットが存在する」

 

 

「なっ⁉」

 

 

女神魔法にそんな事があるとは知らず、グレイは言葉を失う。

 

 

「女神魔導士の精神が急激に深い絶望に塗りつぶされた際、〝体の魔力が反転〟という現象が起こる事で変質した姿だ」

 

 

驚くグレイを他所に、リオンは説明を続ける。

 

 

「本来なら現世に問いする事柄が全て『虚無』となり記憶の一切を失う、または人格そのものが入れ替わり、冷酷無比かつ周りの物を破壊しつくす、あるいはその場にいる敵対する者を排除するのみの狂暴な存在へと化してしまう」

 

 

アンジュの身に何が起きたのか知らないが、それを淡々と説明するリオンにグレイは怒りが湧いた。

 

 

「だが、アンジュはどちらにもならなかった。あいつは反転して尚も意思を持ち続けている」

 

「ふざけんなよリオン!!テメェアンジュがあんなになってるのに何とも思わないのか!?」

 

 

「ウルはオレの目標だった。ウルを超える事がオレの夢だったんだ。しかし、その夢をおまえに奪われた。もう二度とウルを超える事はできないと思っていた。だが一つだけ方法があった」

 

「…………」

 

 

そこでようやく、グレイはリオンの目的に気づいた。

 

 

「ウルでさえ倒す事ができなかったあのデリオラを倒す事が出来たら....オレはウルを超えられる、夢の続きを見られるんだよ。その為だったら、アンジュが反転しようがどうでもいい」

 

 

「正気か...!!?そんな事が目的だったのか!!?デリオラの恐ろしさはお前もよく知ってるハズだ!!!」

 

 

グレイの言葉に、リオンはピクッと反応する。

 

 

「や....やめろ..無理だ..!!!」

 

 

その言葉が引き金となったのか、リオンは今までとは態度が豹変し激昂する。

 

 

「うああぁっ!!!!」

 

 

無数の蛇の形をした氷が、グレイを襲った。

 

 

「『やめろ』『無理だ』....だと?」

 

「がはっ」

 

「あの時....オレたちもお前に同じ言葉をかけた。忘れた訳ではあるまいな」

 

 

今度は地面から生えた氷の拳が、グレイを殴る。

 

 

「ぐあっ」

 

「お前がデリオラなんかに挑んだからウルが死んだんだぞ!!!!」

 

 

立て続けに、氷の龍がグレイを襲う。

 

 

「おまえにウルの名を口にする資格はない!!!消えろ!!!!消え失せろ!!!」

 

 

リオンの攻撃を受け続け、等々グレイは動かなくなった。

 

 

「グレイ君!?」

 

 

グレイが動かなくなった事に、動揺を隠せないコトリ。

 

 

「あっちは終わったみたいだね....じゃあ、こっちも終わらせようか」

 

 

殆ど無傷なアンジュに対し、既に満身創痍で腕を押さえるコトリ。

 

 

「アンジュちゃん!!正気を取り戻して!!どうしてこんな事を!!?」

 

 

リオンがグレイに反転について教えたように、アンジュからもコトリに説明をしていた。

 

 

「あなたが知る必要のない事...」

 

 

淡々とそう告げるアンジュの後ろには、氷結傀儡が口に冷気をチャージしていた。

 

 

「これで終わり...」

 

 

アンジュがそう宣告すると、氷結傀儡の口から(メギド)と同等の魔力が放たれた。

 

 

 

 

 

ゴァァァァァァッ!!!

 

 

 

 

「きゃああああああっ!!!?」

 

 

巨大な冷気の奔流に、コトリが呑み込まれる。

 

 

攻撃が止んだ後には、氷に耐性を持つ筈のコトリの体のあちこちに氷が張り付いていた。

 

 

「そっちも終わったか」

 

「うん」

 

「もうこいつらに用はない、行くぞ」

 

 

倒れるグレイとコトリに見向きもせず、リオンとアンジュはこの場を後にした。

 

 

 




ナツ「しっかし、あのデリオラって奴スゲェデカかったな」

ハッピー「魚100匹分くらいはあったもんね」

ホノカ「う~ん、何食べたらあんなに大きくなるんだろう?」

ハッピー「魚にはカルシウムが一杯含まれてるから、きっと魚だよ」

ナツ「そうかぁ?俺は魚より肉が良いな」

ホノカ「私も‼」



次回 ナツVS波動のユウカ


ハッピー「でもナツがおっきくなっちゃったら、直ぐ捕まっちゃうよ」

ナツ「あぁ?なんでだよ」

ハッピー「町一つ簡単に壊しちゃいそうだから」


どうも、ナツ・ドラグニルです!


更新が遅くなり、申し訳ございません




8月はお盆休み明けにコロナにかかってしまい、満足に動けませんでした。


最近、またコロナが流行りだしたので皆様もお気をつけ下さい


しかも、お盆休み中に腰もやってしまい、コロナと腰のダブルパンチでマジで死ぬかと思いました……


多分この話が投稿されてる頃には、鍼灸院で鍼治療してもらった後なので大分楽になるかなと思います


さて、今回ようやく霊帝リオンと一緒に魔王も登場しましたが、その正体はA-RISEのあんじゅちゃんです!


魔法はどうするか迷いましたが、闇落ちと言う事で氷結傀儡の反転体という設定にしました。


なので、本来のあんじゅとはキャラが違うのは闇落ちしてるからです。


もちろんA-RISEの他の2人もちゃんと出てきます。


フェアリーテイルではなく、他のギルドにですが


それでは次回、第26話もしくはベストマッチな加速能力者第21話でお会いしましょう


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