LOVE TAIL   作:ナツ・ドラグニル

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LOVE TAIL前回までは!!


ルーシィ「DAY BREAKにこんな秘密があったなんて」


ナツ「食ったら力が湧いてきた!!」


バニッシュブラザーズ『ひぃぃぃぃぃぃっ!!!』


双竜『水炎爆砕迅!!!』


第9話 DEAR KABY~親愛なるカービィへ~

「この本はね....エバルー侯爵がケム・ザレオンに無理矢理書かせた、自分が主人公の冒険小説なのね」

 

 

依頼主であるカービィの屋敷に向かう途中、ルーシィはDAY BREAKについて説明する。

 

 

「本当....構成も文体もひどくてとてもじゃないけど、ケム・ザレオンほどの文豪が書いたとは思えなかった。だから秘密があると思ったのこの本にはね」

 

 

説明をするルーシィだったが、ナツ達はその秘密が解らず首を傾げるしかなかった。

 

 

屋敷に戻ってきた一同は、盗んできた本をカービィに渡した。

 

 

「!!」

 

 

渡されたカービィは、手に取った本がまだ破棄されていない事に驚く。

 

 

「こ..これは一体....どういう事ですかな?私は確か破棄してほしいと依頼したハズです」

 

「破棄するのは簡単です、カービィさんにだってできる」

 

「だ..だったら私が破棄します、こんな本..見たくもない!!!」

 

 

その言葉を聞いて、ルーシィは確信した。

 

 

「あなたがなぜ、この本の存在が許せないのか分かりました。父の誇りを守る為です、あなたはケム・ザレオンの息子ですね」

 

「うおっ!!!」

 

「ヴェッ!!?」

 

「嘘!!?」

 

『パパ――――――!!?』

 

 

思わぬ事実に、その場にいたルーシィ以外の全員が驚きの声を上げる。

 

 

「な....なぜ....それを...」

 

 

自身の正体が明かされた事に、カービィは動揺する。

 

 

「この本を読んだ事は?」

 

「いえ..父から聞いただけで読んだ事は..しかし読むまでもありません。駄作だ、父が言っていた」

 

 

話を聞いていたナツは、カービィに質問する。

 

 

「だから燃やすって?」

 

「そうです」

 

 

カービィの返答に、ナツは怒りの形相で詰め寄った。

 

 

「つまんねぇから燃やすってそりゃああんまりじゃねーのか!!?お?」

 

「そうだよ!!お父さんが書いた本でしょ!!!」

 

 

我慢できなかったのか、ホノカもナツと一緒に詰め寄る。

 

 

「ナツ...言ったでしょ!!誇りを守るためだって!!」

 

「ホノカも落ち着いて下さい!!」

 

 

ルーシィがナツを羽交い絞めにし、ウミがホノカの前に立ち止める。

 

 

「ええ..父は〝日の出(デイ・ブレイク)〟を書いた事を恥じていました」

 

 

そしてカービィは、当時の事を思い出しながら父親が帰ってきた時の事を語り始める。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

31年前...

 

 

『遅く....なった..』

 

 

3年ぶりに帰ってきたケム・ザレオンは、ふらっと家に入ってきた。

 

 

『!!父..さん..え..あ..』

 

 

今まで音沙汰も無かった父が急に帰ってきた事に、カービィは驚く。

 

 

『さっ....3年もずっと連絡くれないで.....一体..どこで執筆してたんだよ』

 

 

カービィの質問に答える事無く、ケム・ザレオンは物置の中をガサゴソと漁る。

 

 

ケム・ザレオンはロープを見つけると、右腕の根元をぎゅうときつく結ぶ。

 

 

『私はもう終わりだ、作家をやめる』

 

『ちょ..何を..』

 

 

カービィが止める間もなく、ケム・ザレオンは薪割り用に使っていた斧を手に持つ。

 

 

『2度と本は書かん!!!!』

 

 

そしてケム・ザレオンは、斧を振り上げた。

 

 

『うおおおおっ!!!!』

 

『父さん!!!!』

 

 

カービィの止める声も虚しく、ケム・ザレオンは思い切り斧を振り下ろし、自身の右腕を切り落とした。

 

 

 

 

その後搬送されたケム・ザレオンは、病院に入院した。

 

 

『カービィ....か..』

 

 

お見舞いに来たカービィに気付き、声をかける。

 

 

『ふふ..少し背が伸びたな..』

 

 

久しぶりに見た息子の姿を見て、ケム・ザレオンは笑みを浮かべる。

 

 

『アンタはバカだ...』

 

 

そんなケム・ザレオンとは逆に、カービィは病院にも関わらず大声で責め立てる。

 

 

『3年前....オレは言ったハズだぞっ!!!そんなくだらない本の仕事をしたら絶対後悔するって!!!!』

 

『そうだな..』

 

『なんであんな変態貴族を主人公に本なんか書いたんだ!!!』

 

 

怒鳴るカービィに対し、ケム・ザレオンは淡々と答えた。

 

 

『.........金がよかった......』

 

『最低だよアンタ!!!』

 

『ああ、最低の駄作に仕上がった..』

 

『そんな駄作の為に....3年も家族をほったらかしにしたんだぞ..何考えてんだ』

 

 

カービィの質問に、ケム・ザレオンは慈愛の笑みを浮かべ答える。

 

 

『いつもおまえの事を想っていたよ』

 

 

その言葉が信じられなかったカービィは、さらにまくし立てる。

 

 

『だったら適当に書いて早く帰ってこれただろ!!?アンタは作家の誇りと一緒に家族を捨てたんだ!!!』

 

 

それ以上何も言わず、ただ見つめてくるケム・ザレオンに耐えられず、カービィは踵を返す。

 

 

『作家やめて正解だよ、誇りのない奴にはつとまらない。父親もね』

 

 

そう言い残し、カービィは病室から出て行った。

 

 

ケム・ザレオンが自殺したのは、そのすぐ後だった。

 

 

そんな弱いトコも含めて、死んだ後も彼はケム・ザレオンを憎んでいた。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

「しかし、年月が経つにつれ、憎しみは後悔へと変わっていった....私があんな事を言わなければ父は死ななかったかもしれない....と」

 

 

かつての事を悔いるように長々と説明したカービィは、ズボンのポッケからマッチを取り出した。

 

 

「だからね.....せめてもの償いに、父の遺作となったこの駄作を..父の名誉の為、この世から消し去りたいと思ったんです」

 

 

マッチに火を灯したカービィは、その火を本に近づける。

 

 

「これできっと父も.....」

 

「違うんです」

 

 

ルーシィの言葉に、全員が首を傾げる。

 

 

そして、突如としてマッチの火が消えてしまった。

 

 

「始まった!!」

 

 

ルーシィの言葉を合図に、本にカッと魔法陣の光る。

 

 

「え?」

 

『!!』

 

「一体何が..」

 

「な..何だこれは..!!!」

 

 

ルーシィ以外のその場にいる全員が、驚愕する。

 

 

題名のDAY BREAKという文字が浮き上がった。

 

 

「文字が浮かんだ――っ!!!」

 

「まさか魔法っ!!?」

 

 

文字が浮かんだ事にハッピーが驚き、マキが気付いた。

 

 

「そう、ケム・ザレオン..いいえ..本名はゼクア・メロン。彼はこの本に魔法をかけました」

 

「ま....魔法?」

 

 

浮かび上がった文字が、並び替えられ本当のタイトルが現れた。

 

 

「DEAR..KABY!!?」

 

「そう..親愛なるカービィへ。彼のかけた魔法は文字が入れ替わる魔法です。中身も..全てです」

 

 

本が勝手に開き、ペラペラとページがめくられていく。

 

 

そしてその本から、全ての文字が浮かび上がってきた。

 

 

「おおっ!!!」

 

「きれー」

 

 

皆が圧倒される中、ルーシィが説明を続ける。

 

 

「彼が作家をやめた理由は、最低な本を書いてしまった事の他に.....最高の本を書いてしまった事かもしれません..カービィさんへの手紙という最高の本を」

 

「すげぇ!!!」

 

「文字が踊ってるにゃ!!!」

 

 

ナツ達が文字が渦を巻いて本に戻っていく様子に感激する中、カービィは父の言葉を思い出す。

 

 

『いつもおまえの事を想っていたよ』

 

 

あの言葉が本当だった事を、今...痛感する。

 

 

全ての文字が戻っていき、カービィに贈られた本は完成する。

 

 

「それがケム・ザレオンが、本当に残したかった本です」

 

 

カービィは中身も全て変わった本を手に取り、中身を確認する。

 

 

その内容を見たカービィは、涙を流す。

 

 

「私は....父を....理解できて無かったようだ....」

 

「当然です、作家の頭の中が理解出来たら、本を読む楽しみがなくなっちゃう」

 

「父さん...ありがとう、この本は燃やせませんね...」

 

 

カービィは涙を拭いながら、お礼を告げる。

 

 

「じゃあ、俺達も報酬いらねーな」

 

「だね」

 

「え?」

 

「はい?」

 

 

ナツの言葉に、耳を疑うカービィとルーシィ。

 

 

「依頼は『本の破棄』です」

 

「でも、達成してないしね」

 

 

ナツと同じように、報酬はいらないと言うウミとホノカ。

 

 

「い....いや....しかし..そういう訳には....」

 

「ええ..」

 

 

ナツ達の申し出に、戸惑うカービィ夫妻。

 

 

「そ..そうよ..せっかくの好意なんだし..いただいておきましょ」

 

「あ―――!!!ルーシィがめつー!!!」

 

「さっきまでいい事言ってたのに全部チャラにゃ」

 

「それはそれ!!」

 

 

ハッピーとリンの指摘に、くわっと目つきを鋭くし突っ込む。

 

 

「いらねぇモンはいらねぇよ」

 

 

かっかっかっと笑う横で、いる~私欲しい..と涙を流すルーシィ。

 

 

「諦めなさい...ルーシィ」

 

 

今回ばかりはしょうがないと、マキはルーシィの肩に手を置き慰める。

 

 

「かーえろっ、メロンも早く帰れよじぶん家

 

『え!!!』

 

「え?」

 

 

 

☆★☆★☆★

 

月が照らす夜道、依頼を達成し満足げに歩くナツ達とは別に、ただ働きとなってしまいズーン...と落ち込みとぼとぼと歩くルーシィ。

 

 

「信じらんな――い...普通200万チャラにするかしら...」

 

「まぁまぁルーシィちゃん、依頼達成してないのにお金をもらったら妖精の尻尾の名折れだからね」

 

『あい』

 

「ホノカの言うとおりだ」

 

「全部うまくいったんだからいいじゃないのよぉ...てゆうか帰りは歩き?」

 

 

ルーシィはグチグチ文句を言いながら、ナツとウミに教えてもらった事にため息をつく。

 

 

「はぁー...あの人たちお金持ちじゃなかったのかぁ...作家の息子のくせに何でよぉ~」

 

「まぁ、あの家も見栄を張るために友人に借りたって言ってたし...元々200万なんて払えなかったわよ」

 

 

マキの話を聞いて、ルーシィはぶくぅと頬を膨らませる。

 

 

「そんな事しなくても、依頼引き受けたのにね」

 

「どうかな?」

 

 

ハッピーが、ルーシィを疑う目で見る。

 

 

「引き受けたわよっ!!!」

 

「たぶんね」

 

 

休憩の為、ナツが灯した焚火を囲いそこらへんで捕まえたトカゲを焼いて食べるナツ達。

 

 

「てゆーか、アンタら何で家の事気付いたの?」

 

「んぐ、ん?あいつ等のにおいと家の匂いが違った」

 

「だから、あの屋敷があの人達の家ではないと気づきました」

 

「相変わらず凄い嗅覚だね!!二人とも!!」

 

 

ナツ達の嗅覚の鋭さに、ホノカは2人を褒める。

 

 

「あの小説家...実はスゲェ魔導士だよな」

 

「そうですね、30年も昔の魔法が消えてないなんて相当な魔力ですよ」

 

 

ケム・ザレオンを称賛するナツとウミにルーシィが説明する。

 

 

「若い頃は魔導士ギルドにいたみたいだからね、そしてそこでの冒険の数々を小説にしたの」

 

 

今頃、本当の家に帰って本を読んでいるであろうカービィ夫妻の事を思い、説明する。

 

 

「憧れちゃうなぁ~」

 

 

ルーシィのその言葉を聞いたナツは、ニターと笑う。

 

 

「ん?」

 

 

その笑みの意味が解らず、首を傾げるルーシィ。

 

 

「前....ルーシィが隠したアレ..」

 

「うっ!!!」

 

「あ~あ...」

 

 

そこでようやく、ルーシィは笑みの意味を理解した。

 

 

「自分で書いた小説だろ」

 

「やたら本の事詳しい訳だぁ~~~!!」

 

 

ナツ達に自分が小説を書いている事がバレ、ルーシィはかぁ――っと顔が熱くなる。

 

 

「ぜ..絶対他の人には言わないでよ!!」

 

「何で?」

 

「ま..まだヘタクソなの!!読まれたら恥ずかしいでしょ!!!」

 

 

ルーシィは顔を手で覆い、ぶんぶんと顔を横に振る。

 

 

「い...いや...誰も読まねーから」

 

「それはそれでちょっぴり悲しいわ...」

 

 

ナツの戸惑いながらの返答に、ルーシィは再度落ち込んだ。

 

 

「そんな事はないですよルーシィ、私は読んでみたいです。ルーシィが書いた小説」

 

「本当!!?」

 

 

ウミの慰めの言葉に、ルーシィはがばっと顔を上げる。

 

 

「えぇ、本当です」

 

「じゃあ!!完成したら一番に見せてあげる!!」

 

「楽しみにしてますね」

 

 

☆★☆★☆★

 

 

翌朝、ナツ達の腰辺りまでの深さがある沼地を歩いていた。

 

 

「ちょっとちょっと!!本当にこの道でいいの?と申しております」

 

「ハッピーがこっちって言うんだから、こっちなんだろ?と申しております」

 

 

ホロロギウムの真似をしながら、安全なホロロギウムの中に避難しているルーシィに言う。

 

 

「失礼しちゃうなぁ、オイラはこう見えても猫だよ。猫は鼻が利くんだ」

 

 

同じく、ナツの頭の上に避難しているハッピーが自信満々に言う。

 

 

「それって犬の話じゃないの」

 

「てか、匂いと道って何の関係が?と申しております」

 

 

ハッピーの言葉に、マキとルーシィが突っ込みを入れる。

 

 

「それよりルーシィ、あなたは自分で歩かないんですか?」

 

「あたし疲れた...と申しております」

 

「たくよぉ...」

 

 

ルーシィの言葉に、ナツは呆れる。

 

 

その時だった、近くの茂みがガサガサと音がして何かの気配がする。

 

 

その気配に気づいた全員の目つきが、鋭く変わる。

 

 

「誰だコラッ!!!」

 

 

ナツが背負っていた荷物を放り投げ、茂みに飛び込んだ。

 

 

「喧嘩ぱやっすぎ!!と申しております」

 

「頑張れナツー!!」

 

 

ホロロギウムの中でナツの行動力にルーシィは驚き、ハッピーはナツの応援をする。

 

 

「ん?この匂いは...」

 

「どうしたの?ウミちゃん」

 

 

放り出したナツの荷物を持っているウミは、茂みの中にいる者の匂いが誰の者か気づいた。

 

 

茂みの中からナツと一緒に出てきたのは、パンツ一丁のグレイだった。

 

 

「グレイだにゃ!!」

 

「なんでパンツ!?と申しております」

 

「トイレ探してんだよ!!」

 

「見つける前に何でもう脱いでんだテメェは!!」

 

 

そこで、ナツとグレイの程度の低い争いが始まる。

 

 

「そもそもこんな森にトイレがあるわけねぇ!!」

 

「てめぇこそ人のトイレの邪魔してんじゃねぇぞコラ!!」

 

「レベル低...」

 

「と、申しております」

 

 

二人の争いに呆れるルーシィと、ホロロギウムの真似をするハッピー。

 

 

「あれ?みんなこんな所でなにしてるの?」

 

 

そこに、後ろから聞き覚えのある声が聞こえる。

 

 

ルーシィ達が振り向くと、そこにはコトリの姿があった。

 

 

「コトリちゃん!!!」

 

 

コトリの姿を見つけたホノカは、がばっと抱き着いた。

 

 

「きゃあっ!!もう..危ないよホノカちゃん」

 

「えへへ、ごめんねぇ」

 

 

急に抱き着かれたことに驚いたコトリは、ホノカを注意する。

 

 

 

 

その後、争いを辞めたナツ達はグレイ達からなぜここにいるのかを聞く。

 

 

「そっか、仕事の帰りなんだ」

 

「マグノリアに戻るには、この森突っ切るのが近道だからな」

 

「ほうらぁ!!ほうらぁ!!ほうらぁ!!」

 

 

自分が正しかったんだと、ハッピーが主張する。

 

 

「鼻が良いって自慢してたのに、グレイの匂い分かんなかったでしょ?アンタ」

 

「コトリならともかく、嗅ぎたくない匂いもあるんだよ」

 

「んだコラぁ!!!」

 

 

ハッピーの発言に、グレイは青筋を浮かべる。

 

 

「うっせぇな、テメェはさっさと1人で帰れ」

 

「当たり前だ、早く帰らないとやばいからな」

 

「何がヤバいの?」

 

 

ルーシィの質問に、グレイはゴクンと唾を飲み込む。

 

 

「もうすぐエルザが帰ってくる」

 

『え゛ぇ!!』

 

「エルザってあの?」

 

「妖精の尻尾最強って言われてる魔導士?」

 

 

グレイの言葉にナツとホノカが変な声を上げ、エルザという聞き覚えのある名前に食いつくルーシィとマキ。

 

 

「凄ーい!!会いたーい!!」

 

 

エルザに会えると知って、ルーシィは興奮する。

 

 

「でも、エルザって雑誌とかに全然写真とかでないけど...どんな人なの?」

 

『怖い』

 

 

マキの質問に、ウミとコトリ以外が即答する。

 

 

『は?』

 

 

思いもよらない回答に、ルーシィとマキは変な声が出る。

 

 

「野獣?」

 

「ケダモノ?」

 

「もはや魔物だね!!」

 

 

ナツ達の言葉でルーシィ達が連想させたのは、火を吐いて町で暴れる巨人だった。

 

 

「そんなに大きくないにゃ」

 

「いや、意外に大きいよ」

 

「怖さという点では、ルーシィ達の想像は外れてねぇ。つか、もっとでけぇかも」

 

 

ルーシィ達は、さらに巨大な山を蹴り飛ばすエルザを想像する。

 

 

「まぁ、こんぐらいはでけぇだろ」

 

「いやぁ...山だったら一蹴りで3個くらいは一辺に吹っ飛ぶんじゃねぇか?」

 

「3個は大げさだよ、2個くらいでどう?」

 

 

ナツとグレイ、そしてホノカの3人はエルザについて説明する。

 

 

「あなた達、エルザに怒られても知りませんよ」

 

「大丈夫だよルーシィちゃん、マキちゃん、怒らせるような事をしなければそんなに恐くないよ」

 

 

好き勝手言うナツ達にウミは呆れ、変な先入観を持ち始めたルーシィ達の誤解を解くコトリ。

 

 

「とにかく、早く帰んないと」

 

「やべぇ!!行こうぜ!!」

 

 

急ごうとする一同だったが、そこに邪魔をする者達が現れる。

 

 

ナツ達に、砂塵が襲う。

 

 

「ぺっぺっ」

 

「魔導士か!?」

 

「ハッピー!!」

 

 

砂まみれになったナツ達だったが、ナツがいち早くハッピーがいない事に気付いた。

 

 

「あい...」

 

 

ハッピーは、今襲ってきた魔導士達に捕まっていた。

 

 

「久々のタンパク質だぜ」

 

「木の実にはもう飽き飽き」

 

 

ハッピーは、魔導士達に食べられそうになっていた。

 

 

「おにく!!」

 

「うまそうだすな」

 

 

自分を食べようとする魔導士達を見て、ハッピーはぷるぷると体を震わせる。

 

 

「あ~らら」

 

「震えてやがるぜ、コイツ」

 

「悪ぃな、怖ぇだろうが俺達の胃袋に入ってもらうぜ」

 

 

しかし、それをハッピーが否定する。

 

 

「違うよ、怖くて震えてるんじゃないよ。おトイレ行きたくなっちゃった」

 

 

ハッピーの言葉に、魔導士達は言葉を失う。

 

 

「漏れちゃうかもしれないよ、そしたらきっと変な味になっちゃうよ」

 

「うるせぇ、やれ」

 

 

リーダー格の奴が、鶏みたいな見た目の魔導士に命令する。

 

 

「おにく!!」

 

 

杖に炎を灯し、ハッピーに近づける。

 

 

「ミディアムで宜しくだす」

 

「ああ...もう駄目かもきっと変な味になっちゃうけどいい?」

 

 

諦めるハッピーだったが、それを止める声が聞こえる。

 

 

「待ちやがれ!!」

 

 

崖の上に、ハッピーを助けに来たナツ達が姿を現す。

 

 

「ハッピー!!大丈夫!!?」

 

 

ハッピーを心配し、リンが声を掛ける。

 

 

「良かっだぁ~!!変な味にならずに済んだぁ~!!」

 

「まだ言うか!!」

 

 

ハッピーの言い訳に、リーダー格の男が突っ込む。

 

 

「そいつは俺らの仲間でなぁ、腹減ってるからって食わせる訳にはいかないんだよ」

 

「お前ら魔導士だな?何処のギルドだ」

 

「関係ねぇ!!やれ!!」

 

 

グレイの質問に答える事無く、魔導士達はナツ達を襲う。

 

 

ナツ達も迎え撃とうと、構える。

 

 

「ハッピー君は返してもらうよ!!」

 

 

コトリがバッと右手を上げたかと思うと、それを真下に振り下ろした。

 

 

「凍てつかせ..<氷結傀儡(ザドキエル)>!!」

 

 

瞬間――コトリの足元に青い魔法陣が出現し、中から巨大な人形が現れる。

 

 

全長3メートルはあろうかという、ずんぐりとしたぬいぐるみのようなフォルムの人形である。

 

 

体表は金属のように滑らかで、所々に白い文様が刻まれていた。

 

 

そしてその頭部と思しき箇所には、長いウサギのような耳が見受けられる。

 

 

「な.....!?」

 

「まさかあれって!?」

 

 

その魔法の正体に気付いたルーシィとマキは、同時に声を発する。

 

 

「そう...コトリもあなた達と同じ女神魔導士なんです」

 

「氷の女神魔導士、『ハーミット』のコトリ。それがコトリちゃんの通り名だよ」

 

 

驚く2人に、ウミとホノカが説明する。

 

 

コトリは、自分の足元から出現した人形の背にぴたりと張り付くと、その背にあいていた2つの穴に両手を差し入れた。

 

 

次の瞬間――人形の目が赤く輝き、その鈍重そうな体躯を震わせながら、グゥォォオオオオオオオオォォォォ――と、低い咆哮を上げる。

 

 

それに合わせて、人形の全身から白い煙のようなものが吐き出された。

 

 

「冷た......ッ!?」

 

 

ルーシィは、思わず足を引っ込めてしまう。

 

 

その煙は、まるで液体窒素から発せられているもののように、非常に低温であったのだ。

 

 

「行くぞグレイ」

 

「俺に指図すんな」

 

 

恐らく双子であろう魔導士達の攻撃を避けるナツと、鶏男の攻撃を華麗に避けるグレイ。

 

 

「食らえサンドボム!!」

 

 

リーダー格の男が地面に拳を叩きつけると、回避したナツの目の前に球状の巨大な砂嵐が現れる。

 

 

「ぐあっ!!?」

 

 

ナツはそのまま、砂嵐の中へと入ってしまった。

 

 

『ナツ!!?』

 

 

捕らわれたナツを心配する、ルーシィとマキ。

 

 

「構うな、それよりもハッピーを頼む」

 

「うん」

 

「分かったわ」

 

 

グレイの指示で、ルーシィ達はハッピーを助ける事を優先する。

 

 

『はぁぁぁぁぁ!!』

 

 

武器を持った双子の攻撃を、グレイは魔法も使わずに倒した。

 

 

「わぁ~ルーシィとマキに食べられるぅ~」

 

『うるさいネコ』

 

 

棒読み過ぎるハッピーの言葉に、ルーシィとマキは突っ込みを入れる。

 

 

しかし、その二人に近づく影があった。

 

 

「きゃあああっ」

 

「ちっ」

 

 

杖に炎を灯した鶏男が立っている事に気付いたルーシィは悲鳴を上げ、マキは破軍歌姫の召喚に間に合わない事に舌打ちを打つ。

 

 

「はぁっ!!」

 

 

しかし、それを氷結傀儡を使って体当りしたコトリによって、2人は助けられた。

 

 

「ジャストミート...」

 

 

鶏男はそのまま地面に倒れ、動かなくなった。

 

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 

魔力が込められた水晶を持った魔導士が、グレイに向かって雄叫びを上げる。

 

 

直ぐに自分に向けた攻撃だと気づいたグレイは、いつ攻撃が来てもいいように構える。

 

 

 

 

 

しかし...

 

 

 

 

「待ち人来るだす、水難の相と女難の相が出てるだす」

 

「占いかよ!!?」

 

 

只の占いに、グレイは額に血管が浮き上がる。

 

 

「うぜぇ!!!」

 

 

グレイの肘鉄が、魔導士の顎に命中した。

 

 

「魔法も使わずに...凄い...」

 

 

魔法を一切使わず、相手の魔導士達を倒すグレイを感心するルーシィ。

 

 

「つか、服!!」

 

「うおっ!!?」

 

 

いつのまにかパンツ一丁になってるグレイに、指摘するマキ。

 

 

「何者だこいつら?」

 

 

グレイ達の強さに、驚くリーダー格の男。

 

 

しかし、次の瞬間ナツを閉じ込めていた砂嵐が爆発した。

 

 

砂嵐から脱出したナツは、リーダー格の男の前に着地した。

 

 

「ゲロヤバッ!!」

 

「てめぇ...人の口の中じゃりじゃりさせてんじゃねぇよ!!」

 

 

そう言って、ナツは口の中の砂をプッと吐き出した。

 

 

「行くぜ!!」

 

 

ナツは拳を打ち付けると、赤い魔法陣が出現する。

 

 

「火竜の鉄拳!!」

 

 

炎を灯したナツの拳が、リーダー格の男に繰り出される。

 

 

「ぷぎゃあ!!?」

 

 

☆★☆★☆★

 

 

ナツがリーダー格の男を倒した事により、魔導士達は全員捕まえる事が出来た。

 

 

逃げられないように、全員をロープで木に縛り付ける。

 

 

「雑魚相手にマジになってんじゃねぇよ」

 

「てめぇその口燃やしてやろうか?」

 

 

一件落着した事により、またナツ達のレベルの低い言い争いが始まる。

 

 

「燃えねぇよ、テメェのぬるい火じゃな!!」

 

「あぁ!!?デカパン!!」

 

「ツンツン頭!!」

 

 

そんなナツ達を放置する事にしたルーシィ達は、魔導士達に話を聞こうとする。

 

 

「らら..」

 

「え?」

 

 

その時、リーダー格の男が何かを呟いたのをマキは聞いた。

 

 

「らら...ばい..が..」

 

「あ?」

 

「ららばい?」

 

 

言い争いをしていたナツ達も、その呟きが聞こえたのか一緒に首を傾げる。

 

 

『危ない!!』

 

 

その時だった、何かの気配に気づいたハッピーとリンが、みんなを突き飛ばす。

 

 

「ヒィ!!?」

 

 

手の形をした影が、魔導士達の下に現れた。

 

 

次の瞬間――魔導士達は木の根元ごと地面に飲み込まれてしまった。

 

 

影も一瞬にしていなくなってしまった。

 

 

「何あれ!?」

 

「誰だ?」

 

 

突然の襲撃に、驚くナツ達。

 

 

「もう気配が消えています...」

 

「めちゃくちゃ逃げ足の速い奴だ」

 

 

既に襲撃者の気配が消えている事に、いち早く気付いたウミとグレイ。

 

 

「何なのよ...意味わかんない...」

 

「ららばい...」

 

 

動揺するマキと、ららばいという言葉に聞き覚えがあるが思い出せないルーシィ。

 

 

 

 

 

 

ナツ達が襲撃者を取り逃した同時刻。

 

 

マグノリアの街中を、巨大な角を片手で持っている女性が歩いていた。

 

 

その特徴は、鎧を身に纏い緋色の髪をした女性だった。

 




ルーシィ「うぅぅぅぅ...せっかく頑張ったのにただ働きなんて...」


マキ「いつまでもウジウジしてんじゃないわよ」


ミラ「でも、すごく感謝されてたみたいだし、報酬は次の仕事で頑張ればいいじゃない」


ルーシィ「そうですよね」


ミラ「うふ、で?次はどんな格好で働くの?」


『なんか誤解されてるっ!!?』



次回、『鎧の魔導士』


ルーシィ「だから私は趣味で着てるんじゃなくて...」


ミラ「メイドってきたら、バニーか水着がセオリーよね」


マキ「だから、人の話を聞いて~」


如何だったでしょうか?


最後のグレイ達と合流し、魔導士達と戦うのは漫画にはないアニメオリジナルの話だったのですが、グレイの占いで出た《水難の相》と《女難の相》って間違いなくジュビアの事ですよね...


この時から伏線があった事に驚きです。


ここでようやくプロローグが終わり、次回から鉄の森編に入ります。


言うて、既に5話分のストック出来てるんですけどね...


もう少し、ストックが増えたら月一ではなく、月二回の投稿に変えようと思います。


まぁ、来月には試しに10日と20日に投稿してみようと思いますが...


投稿が間に合わなくなってきたら、また月一に戻るかもしれません。


また、この作品に限らず、私の書いている他の作品にも言える事なんですが、小説を書くのに集中しすぎて、感想を送っていただいたにも関わらず、返せていない読者の方々、本当にすみません。


返したつもりだったんですが、全く返していない事に気づきました。


これからは気を付けます。


それでは次回、第10話、もしくはベストマッチな加速能力者第9話でお会いしましょう!!
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