都に鬼が解き放たれるまでは、後六日
「これは・・・非道いな。」
「猪かなんかじゃないんですかね?」
「いや・・・?・・・熊?・・・いや・・・。」
「はぁ・・・あぁなんか斬られてるっぽいのがありやすね。」
「あぁ・・・つまり熊と猪が同時に襲ってきた?・・・何か違うな・・・。」
「熊に追われた猪が逃げてきてってんならどうすかい?」
「いや・・・これは人だな。」
「は?・・・。」
「踏み込みんだ時の足跡があるおそらく・・・だが。」
「じゃあこれ全部人に殺られたってんですかい?」
「・・・毒かもな・・・苦しんだところをばっさり。」
「こんな場所で毒・・・」
「むしろその辺にいくらでも生えてるのかもなぁ。」
はぁはぁはぁはぁ
なんだったんだあれは・・・
あれは・・・もうだめだ
隣町まで行けばなんとでもなるはずだ!
「活きがイイ活きがイイ活きがイイ。」
はぁはぁ・・・
追いつかれるのはわかっていたけれども
なんなんだこいつは・・・
「これは知能が低いな。むしろ逃げたこちらの方が良さそうじゃないか。」
いつのまにか誰かが居た。
助けが来た等とはとても思えなかった。
こいつが犯人・・・
「実験と行こうか。君にも飲ませてあげよう。私自らね。」
何かが口に入ったが吐き出さねば拙い事だけはわかった
「・・・。」クイッ
おかしな連中に掴まれ飲み込む事を強要される。
目の前では男が化け物と戦っている。
「鬼になったらまずはこの出来損ないの鬼を食らうといい。それなりに食っているならば問題なかろう。」
ビチャッ・・・
両手両足が吹き飛ばされた肉塊が目の前にあった。
「アアッ?アーッ?アーンッ・・・。」
大きく口だけを開けてこちらににじり寄ってくる化け物
そのゆっくりとした動きは恐怖ではあった
しかしどうする事もできはしない
「・・・。」グサッ
誰かが何かを投げたようだ
肉塊の動きが少しだけ阻害される
状況は既に詰んでいる
鬼になるとはどういうことか
目の前のそれになるという事だ
これを作るために村に毒をばら撒いた?
こいつを殺さなければいけない
・・・どうやって?・・・
「俺たちの命をなんだと思っている!?」
「・・・?命だろう?」
呆けたように男に返される。何かが噛み合わない・・・
「私の配った薬は人には少々強いらしくてね。今回発生した疫病を広めないようにするには仕方がなかったんだよ。」
「疫病!?何を言ってるんだ・・・」
「はて?この病人のような症状がそこかしこで発生していてね。私も心苦しいんだよ。」
「グ・・・グアアアアアアアアアアアア」
「鬼は感情を起点としてその能力を示す。少々手間取ったがようやく馴染んだかな?」
「お前は生きていてはいけないんだ!」
「面倒だな・・・人格が残りすぎるのも良し悪し・・・か。次はもう少しわかりやすい者にしようか。」
「・・・。」
「あぁそうだなこの間のアレを試そうか。鬼同士の戦いだ。実験としては有りだろう。」
生まれては消える。なんとなく感じるだけでも数百か・・・
しかし・・・人の意思は鬼となっても残るのか?・・・
鬼とは不変・・・ならば人の意思を残した鬼とは人なのではないか?・・・
人を食らって生きる者を鬼と呼ぶならば。例え血肉を口にせずとも人はたやすく鬼と成り得る。
私は・・・
私は人を食べてはいけないのだ。