都に鬼が解き放たれるまでは、後五日
「おらはわるくねぇ・・・なんもわるくねぇだ・・・。」
初老の男が赤子を持って移動していた。
向かった先は竹藪の中。
いくつかの竹が不自然に伐られている。
分割された赤子の血を一滴も零さぬように竹に埋めていく。
誰にも気付かれぬ内に移動している自信があってもどこかで誰かに見られていないか気が気ではない。
「・・・はぁ・・・。」
「ばぁさんや。」
初老の男は美しい少女の事をそう呼んだ。
「・・・はぁ・・・。」
何度言っても直さない男に文句を言うのも疲れたのか少女はため息ばかりをつく。
「今日はたんととってこれただ。だども・・・もう周りの子は皆・・・。」
「・・・そう・・・。」
初老の男が運び込んだ竹はこの少女の食事・・・いや赤子こそが食事であった。
「・・・美しくなければ生きている価値なんてないのよ・・・。」
「おらはもうどうすればいいだか・・・。」
「・・・はぁ・・・。」
ガラッ
「!?誰かきただか!?・・・おらをつけて!?あぁ・・・。」
「ごきげんよう。」
「ど・・・どなたでございましたでございましょうですげすか。」
「・・・はぁ・・・おばか・・・。」
「フフフ・・・素晴らしいじゃあないか。鬼に対して率先して食事を用意するとは。」
「お・・・・お・・・おらはばぁさんをあいしてるだ。」
「名前を聞いてもいいかな?新たな鬼よ。」
「・・・はぁ・・・かぐやよ。」
「・・・?そんな名前だっただか?もううんと聞いた事がなかったからなぁ。」
「君に頼みがあるんだ。都で帝を篭絡して欲しい。」
「・・・はぁ・・・。」
「ば」ズシュア
嘗ての夫が死んだ事で老婆を記憶する者は誰も居ない。
居るのはただ美しい少女の姿をした鬼のみだった。
「まだ弐匹だ。しかし面白いな。都にどれほどの混乱をもたらしてくれるのか。」
「・・・。」
「今回のような喜劇ばかりであればいいのだがな。お前たちの中からも鬼は出せそうか?」
「・・・。」
「駄目だな。お前たちは鬼にならずとも私のために在ればよい。」
「・・・。」
「帝を鬼にしてみるのもいいかもしれないなぁ。」
「・・・。」
「私の言った言葉は常に真実となる。ならばお前たちのやるべき事はわかるな?」
産屋敷耀哉。
その名に深い感傷はない。
鬼舞辻無惨。
この名に思い入れ等ない。
しかし私の名でもある。
私の名が広く知られるという事に何の意味があるのか。
私のかわいい子供たち・・・。
願い絶たれて鬼と成ったならば心まで鬼であるべきだ。
ただただ鬼と成り果てて人として苦しむのであれば・・・。
・・・いや私には関係のない事だ。