困った。
今、私は拘束されていた。術式を封印する呪符でぐるぐる巻きである。これはもしやガチなやつ。
「私、マジカル仙界伝のファンなんです! 最近は迷走してますけど」
「ありがとう。サインあげるから放してくれない? トンボは捕まえると死んじゃうんだよ、知ってた?」
「残念だなぁ。殺さないといけないなんて」
「一般での学生ですがそれは」
「卑下しないで! せんせーの死体、一億で買い取ってくれるそうですよ。せんせーは術式もご立派です」
「あああああああ」
どうやら夏油さんの前に私でワンクッション置くらしい。死ねメロンパン!!
「でもでも、殺す前に最終回までの展開だけ教えてください♡」
「わかった。でも、せめて最期に友達に一言だけメール送っていい?」
「駄目に決まってますけど。ちなみになんて?」
「お前のメロンパンオヤツに勝手に盗ってごめんって」
それに、呪詛師はぷっと笑った。
「それが遺言? ええ、それくらいなら良いですよ」
メールを送り、頑張って上層部への愚痴まじりに本来の展開と改変された展開を伝えていく。
出来るだけ時間稼ぎ頑張ったけど、もう駄目だ。
俺はグシュグシュ泣きながら言った。
「や、優しくしてくださ……」
轟音。
「雷覇!!」
助かったー!!!
呪詛師を倒した傑は私に駆け寄った。
「雷覇、メロンパン食べた!?」
「メロンパンまだ食べてない、食べてないよ!」
「良かったぁ……」
傑は私を抱きしめた。
ぎゅー。
「灰原と七海が大怪我した」
ぎゅー。
「今のタイミングしかない」
ぎゅー。
「ごめん。約束、守ってくれるよね」
私は、以前話していた事を思い出した。
「あーうん、バッサリ行ってください……残穢は残さないようにね」
それから、私は足を失った。
私が目覚めると、目の前に最強術師のご尊顔があった。
「目、覚めた?」
「うー。私、呪詛師に捕まって……」
「そー。頭おかしいお前のファン。マジカル仙界伝の作者なんだって?」
私はシーツを捲った。うん、足がない。それから腕を確認する。無事。
「腕は無事、腕は無事。参ったな、思ったよりショックだ」
覚悟なんてしたつもりで全然出来てなかった。
最悪よりの最悪である。初期に建てた計画通りなんだけどさ。計画はクソだった。
「傑がすげー取り乱してる。灰原と七海が大怪我してさ。それは治ったんだけど。あ、雷神役だったって」
「あー」
演技もあるけど、半分は素だろうな。これで上手くいけば、傑を仕事で追い詰めてミミナナ事件が訪れる。
問題は、私の自衛だ。私の体は多分すぐに手に入れようとしてくると思う。
本命の傑と違って、あくまでも仮の体だし。
「義足を使うって手もあるけど。お前、呪専にいろよ。今回、お前が有用な呪具作れんのもわかったし、元々漫画家志望なんだろ。それは呪具作りながらでも出来るし。何より傑が安心する」
「完全に呪術界から引退するって選択肢はないんですかね」
「人手不足だしな。それに、お前狙われてるみたいだから、却って呪専の方が安全だし」
「はぁ。わかってます。言ってみただけです」
「それと、続きの展開が2パターン、ネットにアップされてる」
あばばばばばばばば。
「なんで!? どうしてそんなひどい事ができるんですか!? 鬼畜の所業すぎる!!」
「なんで足失った時より取り乱してんだよ。とにかく、傑を安心させてやれよ。……俺の言葉じゃ、届かなかったみたいだし」
ボソリと付け足された言葉が凄く寂しげで。寝とってごめん。
しかも本格的な寝取りはこれからである。
結局、誘拐事件は無かった事になり、至急三パターン目を描く事になった。
ふざけんな、創作って結構繊細なんだぞ。あんな目に遭って置いてハピエンが書けると思うな作風変わるわ!!
直哉がお見舞いに駆けつけてくれた時はちょっと浮上した。
たまには良いところみせるじゃん。
さて、傑と作戦会議しないとね。