少女は走る、長い髪を揺らし、泥だらけ素足で大地を蹴り抉る
その体から放たれる炎のようなエネルギーは少女の体を駆け巡りそのはち切れんばかりの活力を発散したくてウズウズしていた
坂を駆け上がり視界にこの疎開された村の中では異質とも呼べる近代的な建造物が映る
それは校舎と呼ばれるものであり、少女達からは練成所と呼ばれていた
村では電気や携帯等の機器は普及してはいなかったがその校舎だけは別だった
子供達にとっては珍しい物をみるという感じで校舎には常に人が集まっていた
今では勝手に宿泊施設として利用する者も多く、村にある民家などただあるだけの物置とかしている、あそこに住んでいるもなど相当な物好きだけである
それもそうだろう、森には多くの呪いが放たれているが故に強い呪に追われ低級呪霊が侵入してくる、この村にはそれに対して侵入を防ぐような結界は此処を除いてはない
犯罪者が闊歩する街のなか玄関の扉を常に開けている状態と同義であり、四六時中、呪霊の襲撃に気を張っていなければならないなど子供でなくとも心身共に厳しいものがある
だが此処だけは別だ呪霊の侵入を阻む結界に、周辺に認識阻害の術が施してある
教官である術師と警備員役の術師も複数人滞在しており村の中では最も安全だと言えるだろう
「どうやら集まったようだな」
顔に傷のある坊主頭の男性が周囲を見渡しながら話す
それは大人達ではなく自分達、訓練生に向けられたものだった
なんでも御三家の特殊部隊だと聞くが自分には関係のないことだ
ここで行われる訓練
午前は呪力コントロールとサバイバル、午後は体術の訓練と非常に単純なものだが、10日間に一度だけ夜に実践訓練を設けられる
実践訓練といってもこの日の夜だけは村で明かすというだけである
彼女のように普段から民家に住んでいればどうということはない
だがそれ以外の者は別だ夜には呪霊の動きは活発になり視界が効かないためいつ何時襲われるかという恐怖に見舞われる
実際初めての実践では何人かが死んだ、訓練生は全員が術式を使えるか、簡易領域を会得している
身を守る術はある、死ぬものは恐怖で固まるものか運の悪いものが殆んどである
村にいる呪霊といってもその大半が森から逃げてきた3級以下だ
普通であれば死ぬ要素など一切ないのだ
例外を除いてではあるが・・・
一人の若い男性が傷の漢「教官」に焦ったように近づき
こちらには聞こえないような声で耳打ちをする
視線が一斉に集まる中、気にしない彼に不快感を表すように顔を歪めるがそれほど切迫した状況なのだろうと教官はそれを咎めることはなかった、
耳打ちを受け、教官の眉がピクリと動く、
(面白くなってきたね)
この様子をみて少女はワクワクしていた
体が疼く、どんな状況なのかはわからないが、異常事態の発生だろう、、、そしてこの村で起きる異常事態など考えまもなく限り呪い関連だ
過去には呪詛師の集団が襲撃してはきたが、そのような事態が頻繁に起こることはない
この村には3級~1級術師が滞在しており、村と森の境界
地点に監視塔が設置されており、監視塔周辺には認識阻害、侵入妨害の結界で守られている
また二級術師以上が数人在住しているため大抵の呪では相手になることはない
仮にこれに異常があったのならそれは一級若しくは特級呪霊によるものだ
思考するなか一陣の風が吹き揺らめく陽炎のような髪を揺らす、
顔が笑顔で歪みそうになり慌てて口元を押さえる
キヒキヒと声にならない笑い、同門の師兄弟達が不審者を視るような視線を感じるが気にならない
「みつけた・・・」
ボソリと呟く少女は周囲の人間とは違い未知の呪に対し歓喜していた
身体は既に臨戦態勢である、炎のような呪力はまるで熱を持ったかのように彼女の周囲を蜃気楼とように揺らす
その言葉は彼女だけのものでありそれが他の人間に届くことはなかった