やられたくないから、今まで誰にも同じ事はしなかった。
でも今は、これしか手段が分からない。
どうか許してほしい、私は悪くないのだから。
それなりに相手のことを知ったつもりでも、改めて対面した時に、それは勘違いだったのだと気が付かされる。
「……」
そして、それは正しく今のような事態のことを言うのだろう――自分のベッドの上で涙を浮かべながら膝を抱えるアドマイヤベガを見て、ビワハヤヒデは思った。
「アヤベさんともあろう人が、どうして喧嘩別れし」
「うるさい」
「……そ、そうかい? だがね、君のような輝く星に涙はにあ」
「だから、うるさいっ……!」
自分なりに気遣おうとしているテイエムオペラオーの言葉を、普段よりも強い調子で遮るアドマイヤベガ。普段とは違うその様子に、さしものテイエムオペラオーも戸惑い気味だ。
「……オペラオーくん、アヤベくんに何があったのか知っているかな?」
「いや、ボクは何も知らないが?」
「そうだろうとは思ったが……はぁ」
別にオペラオーが悪いと言う訳では無いが、思わずため息が漏れる。
数分ほど前にビワハヤヒデとオペラオーの部屋に突然来たアドマイヤベガは、二人の言葉に耳を傾けることなく、たまたま空いていたビワハヤヒデのベッドの上に座り込んだ。
そして、先程からこの調子で取り付く島もない。
「仕方がないかな……。オペラオーくん、私は寮長に報告してくるよ。寮長が来るまでの間、アヤベさんの話し相手にでもなってほしい」
「任されたよ。さあ、僕の事は気にせず行ってくれたまえ」
「カレンチャン……? 寮長に怒られちゃうから、部屋に戻らない?」
「……やだ」
「えっとね、ボクはカレンチャンを困らせたいんじゃなくて……」
「……だから、やだ」
カレンチャンの取り付く島もない様子に、トウカイテイオーの声がしぼむ。
まあ寮長に怒られるという以外にも、テイオーのベッドが占拠されていて寝ようがない、というのも原因ではあるが。
「マヤちゃん……分かっちゃったけど……、」
「『分かっちゃったけど』……?」
「……う~ん」
マヤノトップガンの目線が、テイオーのベッド上で膝を抱えているカレンチャンに向けられる。その目線には、優しさの一言では言い表せない感情が揺らいでいた。
「今は……言わない方がいいかも」
「……そっか」
普段なら問い詰めたくなるテイオーだが、トップガンの顔を見て小さく頷くにとどめた。
「じゃあ、カレンチャンがどう思うかは分からないけど、ボク寮長に報告してくるからね?」
そう言うと、テイオーは部屋を出ていく。当然ながら、その先でビワハヤヒデとばったり出くわすことなど、知る由もないのだが。
「……どんな顔して、カレンさんと話せばいいのよ」
「……あんなこと言っちゃったのに、アヤベさんに何て言えばいいんだろ」