恋するカレンチャン   作:高崎ヒビキ

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気付いて、口にして、そうすれば変わってしまう。

だから怖くて、どことも分からない場所に隠そうとした。

でも同じ場所に、同じものを隠している人がいた。

そしたら私は、これをどこに隠しておけばいいのだろう。


第14話 エブリデイワールド Part2

『……何?』

 

 何時になく、刺々しい声音だった。

 

 つい、俺は悪くないのに、という思いが頭に浮かぶ。自分で頭を小突いて、その言葉を無理やり霧散させる。

 

「今、話しても大丈夫か?」

 

『無理、って言ったら……どうするの?』

 

 まるで、何かから逃げるように。

 

 何故そう感じたのかも分からない。でも、確かに。

 

「待つよ、カレンが話せるようになるまで」

 

『……いつまで?』

 

「時間が許してくれるなら、その間は待ってられる」

 

 許してくれんのならしょうがない。まあそうだとして、誰が許してくれているのかは分からないんだけど。

 

『……』

 

「……」

 

 しばしの沈黙。そして。

 

『誰かと話したりはしたの?』

 

「……アヤベさんとは、もう話してある」

 

 迷って、葵ちゃんの事は黙っておくことにした。敢えて言うこともない、そんな気がしたから。

 

『ふぅん……そうなんだ』

 

「そうだけど」

 

『カレンの事は、後回しなんだ』

 

 どこか、ツンとした様子で。

 

「……一応、アヤベさんのトレーナーだからな」

 

 怒るべきなのか、それとも……何を言い返すべきだったのか。分からなかったから、アヤベさんに先に電話を掛けた理由を言うしかなかった。

 

「そう言えば……満足か?」

 

『…………分かんない』

 

「……」

 

『……それで、何の話だっけ』

 

「まだ本題は話してないぞ」

 

 話す前に、関係ない……訳でもない事を話しすぎてしまった。

 

「アヤベさんとは、お昼に食堂で4人で話そう、って決めてはいる」

 

『4人……1人多くない?』

 

「里宮さんを呼ぶつもりだからな」

 

『お姉ちゃんを……、どうして?』

 

 まあそれは、俺も同じ疑問ではあるが。

 

「アヤベさんが、里宮さんがいた方がいいって言うからさ」

 

『……ふぅん』

 

 納得出来ているのか分からないような声。……納得は出来なくても、何とか受け入れようとしている事は感じられた。

 

「それで……カレンは、どうしたいんだ?」

 

『どうしたい、って……どういう事?』

 

「……怒るなり、俺との約束を無かったことにさせるなり、煮るなり焼くなり――アヤベさんに何をしたい? それとも、アヤベさんに何をして欲しいんだ?」

 

 まあ煮るも焼くも、本当にやりはしないと思いたいし、まあまさかさせないけど。

 

『お兄ちゃんは、どうすればいいと思う?』

 

「俺に聞くのかそれを……」

 

『だって……どうしたいのかどうして欲しいのか、全然分かんないんだもん。カレンがアヤベさんだったら、……カレンはもしかしたら』

 

「『もしかしたら』?」

 

『……やっぱり分かんない、アヤベさんに会ってみないと』

 

 事情が複雑だと、浮かぶものも複雑と言うかよく分からなくなってしまうのだろうか。

 

 まあとりあえず、これは4人で話すことを了承してくれたって事かな?

 

「じゃあ、お昼に食堂に来てくれるか?」

 

『うん、行ってみる……』

 

 力ない声であったが、一応返事はもらえた。これで何とか、問題解決の兆しが見えてくることを期待したい。……そう言えば、まだ里宮さんの了承は得てないな。

 

『……ねえ、』

 

「――っ、どうした?」

 

 考え事をしていたせいで返事が遅れる。誤魔化すように、少し大きな声で聞き返した。

 

『お兄ちゃんはさ、誰かの事を……』

 

「?」

 

『……何でもない』

 

「いや、……色んな人にそう言われると困るな」

 

 話を切るには都合のいい言葉だが、言われた側からしたらたまったもんじゃない。真意を理解出来ずにいるのは、正直困るのだが。

 

『色んな人って誰?』

 

「……まだアヤベさんだけなんだけどさ。そっか、まだ色んな人じゃないか」

 

『そう、だね』

 

 どこかぎこちない返事が返ってくる。はて、今の言葉の中にカレンをそうさせるようなものがあっただろうか。

 

『じゃあ今日のお昼に、食堂に行けばいいってこと?』

 

「そうだな。……来てくれるのか?」

 

 あの返事だと行きたくなさそうにも聞こえたので、念の為確認する。

 

『行きたいのか、って聞かれるとカレンは分かんない。でも、……アヤベさん喧嘩したままなのは、カレン的には嫌なの』

 

「……そっか。じゃ、頼んだぞ」

 

『うん。お兄ちゃんも、……仕事とか言わないでちゃんと来てね』

 

「ああ、もちろん」

 

 もしかして、その辺は色々信用されてないのだろうか。声音に含まれていた疑問に気づいたのか、小さな笑い声が聞こえてから、電話が切れた。

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